第422話 お忍びで来た女神様?
港へと続く坂道を降りていくと、右手に見えるカムラス畑でセルキーたちと出会う。
つるかごに採集していたそれを持って、近寄ってきたところでミオンに気づき、
「「キュ〜!」」
やっぱりビックリしてるのは、翡翠の女神にそっくりだからだよなあ。
「あ、えっと、島に住むことになったミオンね」
「ょ、よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げるミオンに驚くセルキーたち。が、すぐに、
「「キュ〜♪」」
とカムラスがいっぱいのつるかごをミオンに渡す。
「ぇ? ぇ?」
「プレゼントだって。受け取ってあげて」
「は、はぃ。ありがとう」
受け取ってニッコリなミオンを見て、セルキーたちもすごく嬉しそう。
そのままセルキーたちを従えて、旧酒場のあたりまで下りてくると、
「キュ〜!」
「トゥルー、久しぶり!」
駆けてきたトゥルーをキャッチ。
相変わらずふわふわのもふもふな服(?)の手触りが心地良い。
「「キュキュ!」」
「キュ?」
ついてきたセルキーたちがトゥルーに「こっちこっち!」みたいに誘導する先は当然、
「トゥルー君。はじめまして」
「キュ〜!?」
目を大きく見開いて、まあ、うん、驚くよな。翡翠の女神様まんまなミオンが現れたら。
どういうのことなの? っていう目で見られたので、
「翡翠の女神様が人の姿で遊びに来た感じかな?」
「キュ!」
そう答えると「すごい!」って感じでテンションマックスになるトゥルー。
キラキラした目でミオンを見て、
「よろしくお願いしますね」
「キュキュ!」
差し出された手を両手で握ってぶんぶんと。
あまり心配はしてなかったけど、すぐに仲良くなれたみたいで良かった。
仲良くっていうか、ちょっと崇拝っぽい感じが入ってるけど、翡翠の女神様だからしょうがないか。
「じゃ、ご飯にしようか」
「はぃ」
「キュ〜!」「「キュ〜!」」
………
……
…
今日のご飯はオランジャック(アジ)フライ。
コハク(小麦)にヤコッコの卵、オリーブオイルを使ってカラッと揚げたやつ。
「美味しい?」
「美味しいです!」
「キュ〜!」
スウィーたちとラズには、カムラスとライコスのヨーグルトあえを。
かなり甘めに作ったからか、スウィーたちも大喜びだし、セルキーの女の子たちも気になってる様子。
「ミオン、あっちも気になる?」
「は、はぃ。作り方を教えてください。ショウ君、あっという間に作っちゃうので……」
「あー、ごめん」
スウィーに急かされたのもあって、パパッと作っちゃったんだよな。
それだけ作るのが簡単でもあるんだけど。
「キュ〜。キュキュ?」
「あー、あの崖の洞窟の先? しっかり準備が整ってからかな?」
「キュ!」
グッと拳を握るポーズでやる気満々なトゥルーだけど、俺としてはあんまり危ないことはさせたくないんだよなあ。
「武器や防具を新しくします?」
「うん。少なくとも剣鉈は新しく作り直してから行きたいところだけど。そういえば、重銀鋼ってどうやれば作れるんだろ……」
「重銀鋼ですか?」
「うん。名前からして重そうだし、硬そうだしね」
魔導艇を修理するための金属なんだし、かなり良さそうな気がしてる。
今回はとりあえず鉄で作って……、いや、基礎錬金術の本をもらったのに、ちゃんと読めてなかった気がする。
あれを最後までちゃんと読んでからにしよう。
………
……
…
忙しい感じだけど、今日はドラブウルフやセルキーたちにミオンを紹介することが目的なので、ご飯が終わったところで山小屋へと戻ることに。
「じゃ、また来ますね」
「「「キュ〜♪」」」
ミオンがセルキーたちとすっかり仲良くなってて微笑ましい。
ルモネラ(ヤマモモ)だったり、オリーブだったりをかごいっぱいにもらって、ちょっと運ぶのが大変なレベル。とはいえ、帰りは神樹経由だけど。
「今度はゆっくりするから、その時はよろしくな」
「キュ〜♪」
トゥルーとハグしてから神樹へと。
スウィーが樹洞へとふよふよと飛んでいって手をかざし、山小屋がある盆地の神樹へと繋がる道を開いてくれる。
「〜〜〜♪」
「さんきゅ。じゃ、ラズからどうぞ」
「クルル〜♪」
ラズ、フェアリーズ、ルピたちが行って、俺の番。
その後にミオンが通って、最後はスウィーの順番で。
「ミオン」
「はぃ」
樹洞から出たところで、ミオンに手を貸すと、後ろにいたスウィーがすかさずミオンの左肩へと。
「今何時ぐらい?」
「ぁ、えっと……10時40分をまわったところですね」
ミオンがメニューを開いて確認してくれる。
ついついいつもの癖で聞いちゃったけど、自分で確認すれば良かったじゃん。
「あー、ごめん」
「いえ。でも、ゲームしてると時間がわからなくなりますね。いつもはスタジオで見ていたので、時計も見えるところにあったんですが」
「まあ、ライブは今まで通りスタジオからだから」
「はぃ」
ミオンが島に来れたことは当面の間は内緒で。
オープンにするメリットも無いし、公式の翡翠の女神になった直後っていうのもあるし、当面は秘密にすることをベル部長やセスにも言ってある。
「クルル〜♪」「〜〜〜♪」「「「〜〜〜♪」」」
「ん、じゃ、またね」
「また遊びましょうね」
ラズやスウィーたちとはここでお別れ。
「俺は戻って錬金術の本読むけど、ミオンはどうする?」
「あ、私も神聖魔法の教典を読みます」
「りょ。じゃ、時間まで読んで終わりにしようか」
あ、しまった。
ミオンには精霊魔法って話だった。
「ミオン、明日は精霊魔法も覚えよう」
「はぃ」
鍛治やってる間に光の精霊石を用意するのがちょうどいいかな?
展望台ルート通ったんだし、水の精霊石も作ってくれば良かった……
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8/26 第419話 翡翠の女神への第一歩? 〜 本話まで









