第389話 建築スキルに必要なもの
『屋根の修理は終わったんですね』
「うん。思ったよりダメージは少なかったし、昼のうちに終われて良かったよ」
夜のIROは昼の続きだけど、屋根の修繕はどっちも終わったので、壁の修繕を残すのみ。
寝室の裏庭側、膝丈ぐらいのところに大きな穴が空いていて、ボリゼラットはおそらくここから入ったんだろうなと。穴を開けたのもおそらく奴らなんだろうけど。
「お、見えてきた。こっちからだと寝室の屋根だね」
『あの屋根の色が違う場所ですね。すごいです!』
とりあえずということで、今までの瓦とは違う石壁で作ってあって、周りと色が違うのでわかりやすい。
どっちも修繕が終わった後に水を撒いてみたんだけど、雨漏りはなかったので大丈夫のはず。
「そうそう大工のスキルが7になったよ」
『上限突破も見えてきましたね!』
「他のプレイヤーってもう突破している人いるよね?」
『はい。上位スキルは建築だそうです』
「やっぱりか。俺も建築は取りたいなあ」
土木スキルで古代遺跡とか洞窟の壁の強度は見れるようになったんだけど、そっちだと建物の強度は見えないんだよなあ。
建築スキルで見れるようになれば、ちょっと凝った建物とかも作りやすくなりそうだし、水車小屋を建てる前には取りたいところ……
『ショウ君がまた先駆者かもですよ?』
「え? なんで? もう取ってる人が……いないの?」
『はい。前提に何か必要らしくて、取れない状態だそうです』
マジか……
でも、建築に必要な前提ってなんだろう? 土木スキルがMAXじゃないとダメとか?
うーん……
「〜〜〜?」
「ああ、ごめん。俺とパーンで作業するから、スウィーたちは遊んできていいよ」
「〜〜〜♪」「クルル〜♪」「ニャ!」
屋敷の裏庭へと周り、マローネの樹の方へ行くスウィーたちを見送る。
レダとロイがついてくれるみたいだけど、ルピは俺が見える場所にごろんと横に。
さて、作業開始……の前に木材を取ってこないと。
「リュ」
「「リュ〜」」
「ああ、助かるよ。ありがとう!」
パーンの指示を受けたウリシュクたちが、俺の代わりに木材を取りに行ってくれたっぽい。
じゃ、さくっとダメになってる部分の壁を綺麗にするかな。
『その白い壁は土ですか?』
「漆喰なのかなあ。西洋風だし珪藻土?」
『わからないです……』
ごめんなさい。
IRO的には白粘土に砂と藁を混ぜたものでいいらしい。これはナットに聞いたので間違いない。
砂は壊れた瓦を粒化で再利用し、藁もコハクのものを乾燥させてざく切りしたものを。
「まあ、どっちも壁に塗って固まるのを待つ粘土って感じかな。乾けば元あった白い壁になるよ」
その前に崩れた部分を全部取っ払わないとな。
採掘用のツルハシを使って、崩れた壁の周りをガツンガツンやって行く。
見えてきた壁板も剥がして新しいのに替えてしまう予定。そのための木材なんだけど。
「「リュ〜」」
「さんきゅ。パーンたちで替えの壁板にしてくれる?」
「リュ!」
ノコギリを持って「まかせろ」と言ってくれるパーン。
じゃ、俺もさくっと壁を剥がしちゃわないとな。
………
……
…
【大工スキルのレベルが上がりました!】
「お、やった!」
『おめでとうございます!』
壁板を張り直し、その上から漆喰? 珪藻土? を塗って完成。
塗るための左官コテも用意しておいて良かった。無かったらもっと苦労してた気がする。
「それにしても……ここだけ綺麗だと違和感あるな」
『他の壁も直しますか?』
当然、屋内からも塗り直したので、今いるのは寝室だった部屋。
左隣の今まである壁の色はやっぱりくすんでるんだよな。これって表面を洗えば綺麗になるのかな?
「先に床かなあ。木のフローリングになってる場所は、洗うよりも張り替えた方が早い気がしてて」
『そうですね。洗っても何か残ってそうです……』
「だよね」
調理場とお風呂(?)がタイルのフローリングなんだけど、こっちはゴシゴシやって見るか。ダメそうならやっぱり張り替えで。
『あ、コンロはどうしますか?』
「忘れてた! ルピ、見に行こう!」
「ワフン」
隣にいてくれたルピの頭を撫でる。
パーンたちは、俺のために壁板を用意してくれたあとは、スウィーのお願いで花壇の整備を手伝いに行った。
「ここはタイル張りなんだよな。まあ、汚れるからなんだろうけど」
タイルは多分、陶工で作れるはずだし、それはまあ手間なだけでできるはず。
量がある分にはパーンたちに手伝ってもらえるのが、ホント助かってる……
「前はコンロを確認した後にネズミが出たんだっけ」
『はい。ショウ君が魔晶石がどこにあるか調べようとしてたところで』
入って右側にコンロ、作業台、シンクと並んでいる。
このコンロが持ち運びできるやつだって話だったんだよな。
「引っ越すまでは山小屋の土間の方に置いてもいいかな」
料理を振る舞う人数も増えてきたし、同時にいくつか作れるようになるのはありがたい。実際、港の倉庫に作った調理場はやりやすいし。
『動かせるんでしょうか?』
「多分? この屋敷はニーナの範囲じゃないはず……。ニーナ?」
そう呼びかけてみたけど返事はなし。なんか、虚空に話しかけてるみたいで……ミオンと話してるのも一緒か。
『引っ越したら線を引きますか?』
「そうだね。誰かっていうか、アージェンタさんとかが来たら知らせて欲しいし」
作業自体は簡単だから、パーンとかシャルたちに手伝って貰えばいいけど、魔導線を増やしておかないとだよなあ。
そんなことを考えつつ、魔導コンロを再度鑑定。
【古代魔導焜炉】
『加熱調理用コンロ。付属の魔晶石のマナを使うことで利用可能。
料理:加熱に利用可能』
「で、付属の魔晶石がどこだっけって話だった」
『はい』
そうそう、で、この下の収納を開ければ何かあるんじゃって思ったんだった。
ここはさすがにネズミたちも開けてないみたいだけど……虫とか出てきたら怖いな。
「加護を」
「ワフ?」
ルピが「なんで?」って顔してるけど、黒いアレとか出てきたら悲鳴を上げる自信があるし……
「ミオン。虫とか出るかもだから、無理して見てなくてもいいよ?」
『だ、大丈夫です!』
うーん、無理はさせたくないけど……アーカイブで見ちゃうかもだから一緒か。
気にしすぎてもしょうがないし、さっさと開けよう。
「よっと。暗いな……あかりを」
光の精霊のあかりに収納の中を照らしてもらうと、なんだか家でも見たことのあるような調理器具が。
『ショウ君、それって』
「あー、うん。フードプロセッサーだと思う」
一応、鑑定しとこう。
【魔導食材加工器】
『マナの力を借りて食材を加工する器。主に料理に用いられる。
基礎魔法学:魔晶石(小)を設置することで、利用可能になる』
回転の魔法で刃を回すやつ作ったけど、あれと比べたら段違いに性能いいんだろうなあ。ちょっと凹む……










