第382話 楽しい予定が盛りだくさん?
金曜日(テスト最終日)
最後の数学のテストが終わって、期末テスト終了。
答案を回収したヤタ先生が、そのままホームルームというか、連絡事項だけ告げてあっさりと終わり。
来週の月曜は祝日で休み。で、次の火曜は終業式があって、そのまま夏休み突入なんだけど、テストの返却と同時に通知表も来るんだよな。
「やっと終わったな。どうだった?」
「まあ、結構できたんじゃないかな」
テスト期間中、バーチャル部室で勉強して、1時間ほどIROで息抜きしてっていうのが良かった気がする。
俺もミオンもわからないところは、ヤタ先生かベル部長に聞けば良かったし。
「下手な結果だとIROする時間も減るしな」
「だな」
特にうちの場合、赤点なんか取っちゃうと部活にもライブにも影響が出るし。
ちなみに赤点があった場合は、部活禁止で夏休み頭からみっちり1週間の補習に出ないといけなくなるらしい……
「ショウは昼飯どうするんだ? 予定あんのか?」
テスト最終日だし、テスト期間は終わってるんだけど、部活はテストが戻ってくる週明けまで禁止。
電脳部はライブはダメだけどゲーム自体はしていいということになっている。
「いや、特に。帰ったらIROやるつもりだけど、その前にスーパー寄らないとだな」
「じゃ、みんなでファミレス行こうぜ。で、ちょっと相談が……」
「ああ、わかった」
ナットの目がミオンに話しかけてるいいんちょの方を向いてるし、そういうことなら協力してやるか。
………
……
…
「月曜ってみんな空いてるか?」
「ああ、俺は大丈夫」
隣のミオンもこくこくと頷いてるんだけど、ナットが一番気になるいいんちょは、
「どういうつもり?」
「あ、いや、ここ最近はIROしかしてねえし、ショウとは遊べてないし、みんなで遊びに行くのもいいんじゃないかって」
とナット。
そこはいいんちょだけ誘えよと言いたいところだけど、うまい理由が思いつかないんだろうな。
「遊びにって……具体的には?」
「いや、ショッピング……とか?」
おいおい、そこは考えとけよ!
しょうがない。手助けしてやるか……
「そういうことなら、いいんちょにちょっとお願いしたいことがあるんだけど……」
ショッピングってことは、当然、服を見に行くことになるはず。俺も真白姉と美姫に付き合わされたことが何度もあるし。
「8月頭に合宿があるんだけど、ミオンはあんまり服とか選んだことがないっていうし、いいんちょがフォローしてくれると……助かるよね?」
そうミオンに聞くとうんうんと頷いてくれる。
普段の服、俺が見立てたのもあるけど、旅行にってなるとまた別だろう。
「そういうことなら良いわよ。出雲さん、普段どういう感じの服装なのかも気になるし」
雫さんがミオンにって買った服、どう見ても御令嬢っていうワンピばっかりなんだよなあ。
それはそれで似合ってるし、可愛いからいいんだけど、もうちょっと『普通』の服も揃えてあげて欲しい。
「陸上部は長野だって聞いたし、俺も準備しねえとだった。いいんちょは?」
「弓道部も長野よ。美杜大の施設を使うのだから、運動部は近くになるでしょ」
とのこと。まあ、仲良くやってくれ。
「電脳部はどこなんだ?」
「沖縄」
「「え?」」
驚いた二人が俺でなくミオンの方を向くんだけど、
「ぉきなわ」
うん、驚くよな。
電脳部が沖縄に行って何するんだよって思うけど……
***
スーパーに寄って帰宅。
買って来たものを冷蔵庫に詰め、午後2時を回ったあたりで、
「兄上、ただいま!」
「おかえり。って微妙な時間だな」
美姫も今日が期末テスト最終日。
テスト後に普通に給食があって、終わりだったはずだけど。
「奈緒の部活を冷やかしにいったのでな」
「ああ、そっちはテスト終わったら部活していいもんな」
さくっと着替え終わった美姫がおやつを要求して席に着く。
ちょうど特売だった8個400円のカップケーキと紅茶を。
「テストはどうだったんだ?」
「むぐ、余裕よの」
カップケーキをはぐはぐしつつ答える美姫。
テスト中もずっとIROやってたみたいだけど、美姫なら問題ないか。
「IROの方は?」
「ベル殿がおらんので、攻略はお預けよの。その代わりと言ってはなんだが、前に港町をという話をしたであろう? そのための道を作る仕事がいろいろあっての」
港町作る話、もう動いてるのか……
なんか、魔王国アップデートがあるって話なのに、全然逆方向に進んでる気がする。
「魔王国アプデは気にならないのか?」
「まだ概要もわからん状態で気にしすぎてものう」
ベル部長が今日戻って来るし、アプデまではドワーフのダンジョンの方を進めていくらしい。次は第七階層なんだとか。
「あと、本土にいるケット・シーたちって元気にしてる?」
「うむ。つい先日も王都で見かけたぞ。どうやら、ラムネ殿の島から新たなケット・シーたちが訪れておるようでの」
「へー……、なんていうか、取り合いみたいなことになってない?」
俺一人で9人も島民にしちゃってるんだよなあ。
まあ、その9人を本土に返したところで、プレイヤーの総数からしたら微々たるものだと思うけど。
「そういう動きもあったようだが、どうやら彼らの方が一枚上手らしいのう」
美姫の話だと、後をつけるような真似をしても、気がつくと見失ってるんだとか。
人が通れないような道にスルッと入っていったりするそうで……
「猫だな」
「猫よの」
そういう話なら心配しなくてもいいのかな?
ただ、気になるのが、
「悪魔ってあれから見たか?」
「少なくとも、ワールドクエストが終わった後に出たという話は聞かぬの」
ワークエ専用の敵とかなのかな?
IROはイベント限定みたいなのはないかと思ってたけど……俺が気にしてもしょうがないか。
***
さて、IRO……の前に、バーチャル部室で合流できた部長に質問を。
「合宿って8月の頭からですよね?」
「ええ、合宿は8月の1日から5日までね。向こうにPCはあるけど、VRHMDは自分のを持ってきてちょうだいね」
『はい!』
「うむ!」
乗り気なミオンと美姫。
それはいいんだけど、VRHMD持っていくんだ。いや、部活の合宿だから正しいのか?
「素朴な質問なんですけど、合宿って何やるんです?」
「昼は観光、夜はゲームよ。まあ、観光もお天気次第かしらね」
……ただ遊びに行くだけな気がするんだけど、突っ込まないでおこう。
「今のうちにどこに行くか計画を立てておかねばの!」
『そうですね!』
「ああ、沖縄の海は綺麗だから、水着を持って来るのを忘れないようにね?」
やっぱり、ただ遊びに行くだけじゃないかな!










