第381話 今日も大漁
『ショウ君。そろそろ時間です』
「あ、もうか。早いなあ」
船の話をして、ご飯作って食べて、いろいろだべってただけなんだけど。
で、今日は余裕もあるし、やっぱり……
【シェケナ】「楽しい時間はあっという間……」
【ベアメン】「歌って〜♪」
【ニレノ】「ケット・シーちゃんたちも?」
【リンレイ】「歌締めでお願いします!」
etcetc...
「ミオン、大丈夫?」
『はい!』
女神様は乗り気のようなので、俺も頑張ることにしよう。
インベントリから魔導神楽笛を出すと、それに気づいたスウィーがさっそく発声練習を。
フェアリーズもコーラスの練習? 歌うの好きっぽいよな。
「ワフ〜」「クルル〜♪」
「ルピたちはこっちね。ラズはこれ使って。終わったら食べていいよ」
ルピ、レダ、ロイには俺の右隣に。
リズムパート担当のラズにオーカーナッツ(未開封)を渡すと、テーブルをコツコツと叩いて音量チェック中?
あとは……
「キュ〜♪」
「ニャ〜……」
トゥルーに連れてこられたシャルだけど、どうも歌うのは苦手っぽい感じ?
他のケット・シーたちは、若いからかワクワクしてる雰囲気があるんだけど。
「シャル。うまいとか下手とか気にしなくていいから」
「ニャフ」
【マグナ】「シャルの気持ちわかる」
【リーパ】「楽しかったらええんやで」
【ブルーシャ】「今日はなんの歌かな〜♪」
【イザヨイ】「まだ選曲できるレベルじゃないんですよね」
etcetc...
演奏スキルはまだ4。
3で自動演奏のアーツは取得したから<波のまにまに>が選ばれたら、自動演奏でもいいのかもだけど……
みんなが準備できたところで笛を構えると、
【古代民謡<今日も大漁>が選曲されました】
新曲はいいんだけど、これって船が手に入ったからとかじゃないよな……
テンポはゆっくりかな? 南国っぽい雰囲気のイントロに、ラズの小気味よいナッツのリズムが響く。
『今日も〜たくさん〜お魚とれた〜♪』
「〜〜〜♪」「キュ〜♪」「ニャ〜♪」
なるほど。今日は妖精たちはコーラスかな?
そういえば、ミオンは公式でも歌うことになりそうだけど、スウィーたちと一緒にってわけにはいかないのかな……
………
……
…
<はいー、終わりましたよー>
「お疲れ様でした」
『お疲れ様でした!』
スウィーたちは演奏が終わっても、続きなのか別の歌なのか楽しそうに歌ってる。
ま、しばらくライブはおやすみだし、テスト期間中はそんなに歌うこともなさそうだし、今日は好きなだけ歌ってもらおう。
「ワフ」
「ルピたちもお疲れ様」
ルピ、レダ、ロイと順番に撫でつつ……、あと1時間はあるわけだけど。
『ショウ君?』
「あ、ごめん。残りの時間どうしようかなって」
そんな話をしていると、トゥルーとシャルがやってきて、
「キュキュ〜」
「ニャー」
ああ、トゥルーは船が気になってるのか。いや、もっと遊んでみたいって感じかな。
シャルは魚が取れるなら手伝いますよっと。美味しいし、おみやげに持って帰りたいんだろうな。
『トゥルー君たちは何を?』
「船で魚捕りの続きがしたいんだって。シャルたちも干物がもっと食べたいから、協力してくれるって」
『なるほどです。あ、スウィーちゃんたちはどうします?』
「あー……スウィー?」
ふわふわーっとフェアリーズを引き連れて飛んできたスウィーに話をすると、
「〜〜〜♪」
「え? いや、いいけど」
『どうしました?』
「なんか魔導醸造器を使いたいって……」
自分たちでお酒を作るつもりなのかな?
そういうのってNPCが勝手に……、いや、別に酒造してるNPCだっているからおかしくはないのかな?
『あの……スウィーちゃんたちのMPで足りるんでしょうか?』
「ああ、そうだった。というか、樽とか重くて持てないと思うけどどうするの?」
スウィーが振り向いて手を振る先には、いつも料理をメインにしてくれているセルキーたち。シャルやケット・シーたちも手伝うのかな。
まあ、みんなが使いたいって言うならいいか。
「じゃ、好きに使っていいけど……飲みすぎて酔っ払ったりしないでね?」
「〜〜〜♪」
「ニャ〜!」
スウィーのサムズアップ、シャルは敬礼を。
そこはかとなく不安なんだけど、まあいいか……
………
……
…
「おお! これってカツオ?」
『え?』
サイズ的には30cmちょっとぐらいだけど、見た目的にはソウダガツオだったはず。
【ソーダウシス】
『沖合から沿岸部に生息する30cm前後の魚。食用可。
料理:焼く料理が一般的。素材加工:干物に加工可能』
「よし! これで鰹節が作れるはず!」
『ソーダ……鰹節ですよね?』
「うん。本物のカツオじゃなくて、ソウダガツオっていう魚だけど、この魚でも鰹節は作れるはず」
燻製にして、さらに乾燥させればいいだけのはず。
カチカチになったのをカンナみたいなので削れば鰹節。この場合は宗田節? まあ、だいたい同じのはず。
「水をお願い。で、<冷却>っと」
即席で氷を作って木箱へと。その上にソーダウシスを並べていく。
あ、血抜きした方がいいんだっけ? さくっと解体して切り身にしちゃうか。
『ショウ君、もうすぐ10時半です』
「りょ。トゥルー、そろそろ戻ろう」
「キュ〜!」
………
……
…
「ニャ〜」
「キュ〜」
氷と切り身が詰まった木箱が、セルキーからケット・シーへと渡される。その木箱は、そのまま燻製窯がある倉庫へと。
全ての木箱が陸に上がったところで、船を古代遺跡の港、船着場へ置いて戻ってくると、
「〜〜〜♪」
顔を真っ赤にして鼻歌を歌ってるスウィーが。
『スウィーちゃん……』
「……スウィー、酔ってるよね?」
ふるふると首を振って、そのせいでバランスを崩して、フェアリーズに支えられる。
やっぱりお酒を作って飲んだっぽい……
「ニャ……」
「シャルも少し飲んだ?」
「ニャウ」
「素直でよろしい。で、どんなお酒作って飲んだの?」
シャルの手から小さい瓶が渡されたので、その中身を鑑定。
【妖精の花蜜酒】
『フェアリーの蜜を醸造した蜜酒。飲みやすいが度数が高いので注意。
料理・製菓・薬膳:調味料として利用可能。
調薬:MP回復薬の材料として利用可能』
うん。これは没収!