第38話 本番前の下準備
14日目(土)
土曜夜のライブ本番までに下準備に奔走する羽目になった。
概ね想定してた忙しさだったんだけど、ちょくちょく新たな発見があったりして、それをできるだけ取り込んでいったせいでもある。
水曜日。
ポーションを入れる小瓶と蓋を作る。
陶器の小瓶を捏ねて素焼き、本焼き。その焼き時間と冷まし時間に、サローンリザードやバイコビットの皮を加工。
トカゲ革は予想通り防水がついてたし、兎革は柔らかくて革紐として使いやすい。小瓶の蓋はとりあえずこれで解決かな。
木曜日。
部活の時、次の動画を一日早く投稿するようにベル部長にお願いされた。
調教スキルを待ち望んでる人たちの為にっていうのと、同時に土曜のライブを告知したほうがいいということで。
夜はほぼポーション作成。仙人笹から作るポーションは、ヒールポーションというよりはリジェネポーションっぽい。
俺、まともな戦闘をしてないから、実際にHPを減らしたことないんだよな……
『痛覚設定を確認しておいたほうがいいと思いますよ』
「りょ」
システムメニューを開いて痛覚設定を確認。デフォルトの5%(上限カット)のまま。わざわざ痛い思いをするつもりはないので、そのままにした。
金曜日。
ミオンのチャンネル登録者数が10万人を突破。
公式のPVが出てから倍々ペースで増えてるんだけど、さすがにこのあたりで落ち着くんじゃないか、というのがヤタ先生の予想。
ちなみにベル部長が10万人を超えるのに半年近くかかったそうで(今は50万人超えてるけど)、だいぶ呆れられた。
土曜日。昼。
解説に入るということで、ベル部長が配信を見てくれている。ミオンは習い事があるということで不在。
高校になっても続けてる習い事ってすごいよな。やっぱピアノとかかな。似合いそうな気はする。
「魔女ベルの日曜のライブ中止ってもう伝えてあるんですよね?」
『ええ、木曜のライブの終わりに伝えたわよ。日曜は新規の人も多いだろうし、視聴者のプレイヤーにはそっちのフォローをお願いしたわ』
「おおお、すげぇ……」
そんな雑談をしつつ、西側の森で仙人笹と仙人竹を確保していく俺。
木を切るのは大変だけど、腕の太さまでの竹ならまだナイフでなんとか切り倒す事ができるし、加工も木工スキルでなんとかなっている。
『その竹も罠に使うの?』
「ええ、対人用のブービートラップですね」
対人っていってもゴブリンだけど、二足歩行なら人間と同じように引っかかってくれるはず。
『簡単そうに言うけど大丈夫なの?』
「まあ、数匹ずつ釣って、予め仕掛けてある罠に誘い込むだけなんで」
『ショウ君、今、キャラレベはいくつ?』
「7っすね。ずっとステータスに振ってるので、そっちはかなり上がってます。SPは特別褒賞をたくさんもらえたおかげで余ってますし」
ベル部長に見えるようにステータスウィンドウを開く。
水木金とがっつりプレイしたので、キャラレベもスキルレベルも結構上がってる。
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Name:ショウ Lv.7
HP:248 MP:248
STR:28 DEX:28 AGI:20
INT:22 VIT:22 LUK:10
元素魔法:1 短剣:4 解体:5
鑑定:5 投擲:5 木工:5
石工:5 気配感知:5 気配遮断:5
応急手当:1 調薬:3 採集:5
料理:3 調教:3 罠作成:5
罠設置・解除:5 罠発見:3
陶工:5 素材加工:3 裁縫:1
残りSP:16 残りBP:0
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で、ついさっき、裁縫スキルをSP1で取得した。
革を切ったりするのに楽なようにっていうのと、今後、自前で装備を作る際に必須になるだろうから。
もう少し早く気づいてれば、革でベルトポーチとか作ったんだけどなあ。
インベから出すとワンテンポ遅れるけど、ベルトポーチならすぐ取り出せそうだし。
『これだけスキル取ってても、まだ16もSP余らせてるのね。ステータスだけ見れば、トップとは言えないけど、セカンド組ぐらいにはいるわよ』
「ま、比べる相手もいないですけどね」
ベル部長の話だと、今のトップ組がキャラレベ12あたりらしい。
雷帝レオナ様がキャラレベ15でトップ。その次がベル部長あたりの人たちで13らしい。
「よし、ルピ。いったん帰るぞ」
そう呼ぶと、フォレビットを咥えたルピが足元にやってくる。
「おお、えらいえらい」
「ワフ〜」
解体したフォレビットの皮と骨をインベに入れ、肉は少し切ってルピにご褒美を。
骨は解体スキルのレベルが5になって現れるようになった。これ削り出して、針とかにできるかもなんだよな。
ああ、針といえば、釣りスキルもそろそろ取った方がいいのかな……
『賢いわねえ。調教スキルに躍起になってる人たちの気持ちも何となくわかるわ』
世の中にもふもふが嫌いな人はそうそういないよな。
実際に犬とか猫を飼ってるなら今さらなんだろうけど、家の都合で飼えないって人もここならってのはあるだろうし。
「ベル部長の周りには調教スキル取ろうって人はいないんです?」
『うーん、SP9使ってまでっていう人はいないかしら。そもそも、トップ組ってそんなにいないもの』
「トップ組って少ないんすか?」
『少なくとも同じ狩場にいる人は少ないわね。新規制限が無くなれば、もっとメイン盾やヒーラーも増えて、いろいろ解決するとは思うんだけど』
そいや、美姫もメイン盾は引っ張りだこだって話してたもんな。
「メイン盾が足りてないのは知ってましたけど、ヒーラーも足りてないんです?」
『神聖魔法の習得に必要なSPが4なのよ。採集、鑑定、解体の必須セットを取ると残りSPが3でしょ?
武器と盾のスキルを取るとSP1しか残らない超テンプレビルドになっちゃうせいで不人気なのよね。
それでいて、今は回復以外にすることがないものだから、殴りアコばかりなの』
「なるほど……」
ところで『殴りアコ』って何?
『そうそう、ライブ開始って夜の8時半からよね? ライブ予定地はいつ作るのかしら?』
「あー、そのへんはミオン任せです」
まあ、ライブ始まってすぐにゴブリンの殲滅に向かうわけじゃないと思うし、8時の集合のときにでもいいんじゃないかな。
「ルピ、罠の設置に行くぞー」
「ワフン」
時間は午後3時。2時間ほどかけてじっくりと罠を仕掛けていく予定。
今回はスネアトラップだけでなく、結構えぐい罠も設置するし、間違ってルピが作動させないように覚えてもらわないと。
まあ、ルピがスネアトラップ踏んだことは一度もないんだけど……