第360話 安心できる預け先
「じゃ、またな〜!」
「リュ〜!」
10時半をまわったので撤収開始。
教会裏でパーンたち、カーバンクルたちと別れる。
ラズだけは俺のフードの中に入ってて、そのままスウィーたちのいる神樹まで。
仲間と分かれてていいのかなと思うけど、やっぱり俺がテイムしたからなのかな。
「〜〜〜♪」
「クルル〜♪」
定位置の左肩に後ろ向きに座ってるスウィーがラズと楽しそうに話している。
オーカーナッツもマローネも美味しかったよねって。
『ショウ君なら猫さんが何を話してるかもわかるんでしょうか?』
「どうだろ? 意思疎通できるのが、翡翠の女神の使徒って称号のおかげだとしても、その種族の守護者の称号も必要とか?」
『あ、そうですね』
ベル部長たちは、ケット・シーとの意思疎通を試みてるっぽく、ノームを介してなんとか状況把握を進めてる状態。
ケット・シーたちは住んでるところから逃げてきて、気がついたら死霊都市の南側にある教会にいたらしい。で、美味しそうな匂いに釣られて……みたいな。
どこから、そして、なにから逃げてきたのか、そういうところはまだわからないまま……
「〜〜〜?」
「明日? 明日はトゥルーのところに行って、高台の先に行こうかなって」
「〜〜〜♪」
昼はミオン家からログインかな?
そういえば、魔王国アップデートでのミオンのお仕事の内容とかどうなんだろ。
「じゃ、また明日ね」
「〜〜〜♪」「クルル〜♪」「「「〜〜〜♪」」」
盆地に出たところでスウィー、ラズ、フェアリーズと別れて山小屋へと。
魔導線の敷設もしないとだけど、それはまあテスト期間中にでも。
「ベル部長たちはまだIROやってる?」
『はい』
IROの配信先は、一般公開、グループ限定公開、個人限定公開の三つ。
ベル部長はライブじゃない時は配信してないけど、今日の交流会を俺たちがあとで見れるようにと電脳部グループに限定公開で配信してくれている。
『ショウ君もー、スタジオに来たらどうですかー?』
「りょっす。ログアウトしてそっち行きます」
ヤタ先生も残ってくれてるのは心配して……いや面白そうだからかな。
………
……
…
「ぉ、ぉかえりなさぃ」
「あ、うん。ただいま」
生声のおかえりなさいにドキッとしつつも、そのまま手を引かれてソファーへと。
向かい側にはヤタ先生が座っていて、その視線の先にはベル部長の配信が。
これなら別に部室でも良かったんじゃと思ったけど、こっちのソファーの方が座り心地いいんだっけ。
バーチャル部室はRPG酒場風で雰囲気重視なせいか、座り心地いまいちだもんな……
「あ、こっちの会話って向こうに聞こえてます?」
「いえー。音声は届かないようにしてますよー」
それなら問題ないか。
俺たちがベル部長の配信から口を出して、もしパーティ組んでるナットとかポリーに聞こえるとバレるんだよな。なんか、既にバレてる気がしなくもないけど。
「本当に困ったら何か合図があるかな?」
『だと思います。セスちゃんから配信が来るんじゃないかと』
「……そんな気がする」
画面を見ると、ベル部長とセス、ナット、ポリー、ノームが2人の6人。
ご飯を食べ終わって落ち着いたケット・シーに声をかけて話を聞いて回ってる感じ。
「ケット・シーの件もあるけど、交流会の方は大丈夫そう?」
『はい。そちらはリヴァンデリのみなさんや、あとから参加された人たちも楽しんでるみたいです』
「なるほど。あとは……アージェンタさん、白竜姫様が抜け出したことに気づいたのかな? それとバーミリオンさんが酔って暴れてないといいけど」
ベル部長の配信はケット・シーとのやりとりがメインなので、そっち側が映ってないのが気になる。
「ん?」
『セスちゃんが別れましたね』
ということは……配信の通知が飛んできて、うん、セスだ。
それを開いて、ベル部長のライブ画面の隣に並べる。
「お疲れ。見えてるぞ」
『うむうむ。そろそろ兄上もログアウトしておるかと思っての』
「ああ、ついさっきログアウトしたよ。ミオンとヤタ先生からいろいろ聞いて、ケット・シーの話はわかったけど、交流会の方は大丈夫なのか?」
『心配はいらぬぞ。と言いたいところであるが、ケット・シーの件にかかりきりだったのでな。今からマスターシェフ殿のところへ向かおうと思うての』
そう言って歩いて行く先は、交流会のメイン会場っぽいところ。
屋台ってほどでもないけど、テーブルが並んでて、その上にある料理をいろんな種族の人たちが、もちろん竜人族の人も混じって試食している。
さらに奥へと進んでいくと、ちょっとした広場になっていて……
「おいおい……」
『すごいです!』
レオナ様とマリー姉のタッグがバーミリオンさんと手合わせしてるし。
もちろん、バーミリオンさんは人間形態なんだけど、手加減ができるように長い棒を持って相手してる感じ。
『ちょっとした余興ということでの。姉上ら以外にもトッププレイヤーらが参加しておるぞ』
なるほど。
バーミリオンさんも楽しそうだからいいか。これなら酔っ払って暴れるってこともなさそうだし。
その広場を横目に、大きなテントへと向かうセス。そして、
『失礼。マスターシェフ殿、少し良いか?』
『ああ、セスちゃん。どうかしたのかい?』
『いや、ケット・シーの件にかかりきりであったのでな。それ以外には特に問題はないという認識なのだが』
ざっくりと交流会の方の説明を受けるセスだけど、ケット・シーたちの乱入以外での問題はなかった模様。
あ、そういえば……
「セス。島に白竜姫様が来てたんだけど」
『そういえば、白竜姫殿が島におったらしいが、その件は先方には?』
『うん、アージェンタさんには伝えたよ。驚いてはいたけど、ショウ君の島なら問題ないし、別の竜が迎えにいくはずだからって言ってたけど……誰なんだろうね?』
『ほうほう!』
と楽しそうな二人……
まあ、しょうがないか。どうせいつかはバレることだし。
『そんなところかのう。我は日付が変わる頃には落ちる予定だが、交流会はこのまま?』
『夜の部ってことで、午前3時ぐらいまでかなって。ただ、問題っていうか……ケット・シーたちはどうするつもりだい?
保護するのもちろん賛成だけど、僕たちはずっとこの世界に居られる訳じゃないからねえ。今日はまだ土曜だからいいけど……』
『ふむ。確かにのう……』
ああ、そっか。
どこから来たのかわからないし、どう考えてもすぐに帰れるわけでもなさそうだよなあ。となると、しばらくここに滞在することになるんだけど……
「竜人さんたちはここにずっといるだろうし、俺の方から頼もうか?」
ログインし直して、アージェンタさんに手紙を送って……ちょっと厳しいか?
『竜の区画でケット・シーらを預かってもらえぬか、聞いてみるのはどうであろうか?』
『ああ、その手があったか。いいね。食糧支援は僕たちの方からできるし、今からちょっと話しに行こうか』
『うむ!』









