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第346話 まずは食文化の交流を

火曜日

「ワフ!」


「「バウ!」」


 古代遺跡を出たところでルピが駆け出し、それをレダとロイが追いかけていく。さらにスウィーとフェアリーズが続き、最後にラズが。

 今日の放課後は教会裏で畑仕事。

 いつもなら月曜が畑仕事だけど、昨日はトゥルーたちセルキーの里で過ごしたので。

 とはいえ、


「リュ〜!」


「パーン、昨日はありがとうな」


「リュリュ」


 胸を張るパーンを撫でる。

 今日も数人のウリシュクが畑の世話、そして家畜の世話をしてくれているので、特に問題もなく。

 畑の方にはフェアリーズが飛んで行って、精霊魔法で水やりのお手伝いを。女王様とラズはグレイプルの方へ。


「ワフン」


 教会の周りをぐるっと巡回してきたルピたちが、異常なしの報告に来たので、こちらもしっかり撫でてあげる。


「さて、さつまいも植えるよ」


『すごいですね。もう、茎も根も出てます』


「本当は数日かかるはずだけど、ゲームだからあっという間だったね」


 昨日のログアウト前に、木皿に薄く水を張ってさつまいもを置いておいた。

 増やすのに茎を生やさせるためなんだけど、一日経ったらもうすごいことに……


『それを植えるんですよね?』


「ん? えーっと、このまま植えるんじゃないよ。茎をぷちっと折って刺す感じ」


『え?』


 ミオンが驚いてるけど、種芋から生えた茎を埋めておけば、あとは勝手に根が生えて、さらにさつまいもができるっていう……再生栽培だったかな。


『すごいですね……』


「放置してても勝手に成長する感じだけど、葉っぱがすごいことになるから、そこだけはちょっと手間かもね」


 あたりがさつまいもの茎と葉で覆われるし、つる返しっていうのをやっておかないと、採れるさつまいもが小さくなるらしい。ばーちゃんが言ってたから間違いないと思う。

 それにしても、


「うーん、畑が増えてきて、場所が足りなくなってきたな……」


『これからまだまだお野菜とかも増えそうです』


「そうなんだよなあ。やっぱり、あの廃墟の周りを綺麗にして、畑を増やすべきかな……」


 安全さえ確保できれば、今すぐでも整地して畑にしたいところなんだけどなあ。

 いや、でも、流石にウリシュクたちの手が足りなくなりそう……


「リュ?」


「ん、なんでもないよ。じゃ、植えるから見ててね」


 と言っても、50cm近くに伸びた茎をポキっと折って、30cmほどを畑に斜めに刺すだけの簡単な作業。少し間隔をあけて、畝ひとつ分に5本ほど刺す。

 あとは、水の精霊の力を借りてたっぷりと水やり。

 お手入れは雑草を抜くことと、つる返しぐらいかな。幸いなことに、虫にやられたりとか病気の類はないし。フェアリーズやウリシュクのおかげかもだけど。


「クルル?」


「リュリュ」


「クル♪」


 刺したさつまいもの茎を見ていたパーンの肩にラズが飛び乗る。


『どういうお話をしてるんでしょう?』


「多分だけど、ラズがこれなにって聞いて、パーンがさつまいもだけど育つまで食べないでねって感じかな?」


『なるほどです』


 ラズもちゃんとそれを理解してるようで、大きく育つのを楽しみにしてるっぽい。

 野生のさつまいもでもそれなりに大きかったし、ちゃんと育てればかなり大きくなりそうな予感。


「さて、あとはどうしようかな……」


 俺が特に何かしないとって作業ってあったっけ? と思ってたら、


「リュリュ〜」


「ん? どうしたの?」


 ウリシュクの1人が中サイズの瓶を持ってきて、俺にそれを渡す。

 なんだろうと地面に置いて木蓋を開けると……


「あ、小麦粉、コハク粉か!」


「リュ〜♪」


 この間のライブで収穫したやつだけど、ちゃんと乾かしてから脱穀、渡した石臼で挽いてくれたようですっごく助かる。


「ありがとう!」


『これでパンが作れますね!』


「だね。あー、でも、みんなで食べるにはちょっと量が足りないか」


 やっぱり、あの屋敷と一帯をセーフゾーンにしたいところだけど……


***


「ただいまっと」


『おかえりなさい』


 リアル部室に戻ってくると、ヤタ先生は小テストの採点中?

 で、珍しくベル部長も先に戻ってきていて、


「ちょっとお願いというか、できればでいいんだけど……」


 申し訳なさそうな感じで切り出されたのは、竜族との交流を深めたいので、何か良い方法はないかという話。


『あの……部長はドワーフの人たちを通じてお話しできるのでは?』


「アミエラ領にいるNPCのドワーフの人たちって、竜族と知り合いですよね?」


 偉そうな有翼人たちが迷惑かけてる話を調査しに来てたんだけど、それも多分、俺がアージェンタさんにチクったからという……


「ええ、レオナさんの親衛隊からアプローチはしてもらってはいるわ。でも、なかなかね……」


「うーん、俺からアージェンタさんに話しましょうか? というか、何が目的なんでしょう?」


「死霊都市の竜族が押さえてる場所に教会があるでしょう? あそこにショウ君が置いたミオンさんの女神像があるのを見たがる人が多いらしいのよ」


 ええー、確かにライブでも見たいって言われたけどさあ……隣のミオンも苦笑い。


「うーん、それだけのためにです?」


「それだけって言われると痛いところだけど、今のままだと竜族と揉めることになりかねないのよ」


 女神像を見たいためだけに教会に侵入する……みたいなことが起きると、確実に竜族と揉めることになりそう。

 そういう暴発を防ぐ意味でも、ハードルは高くてもいいので竜族が認める正規の手順が欲しいらしい。


「死霊都市で揉め事が起きて、ゲームドールズの人たちに責任問題なんて話になると、今度こそ間違いなく私かレオナさんがって……」


「あー……」


 俺としても本土のプレイヤーさんたちにもっと竜族と交流を持ってもらいたいし、ちょっと考えないとだな。


『あの、料理とかで交流を図るのはダメでしょうか?』


「それいいかも。俺が聞いた話だと、あっちって調味料で凝った味付けとかないみたいですし。あと甘味も珍しいっぽいし?」


「まずは食文化の交流をということかしら」


「っすね。俺の方からそういう催しができないか聞いてみましょうか? その時にでも、女神像を見たいって話をしてみるとか」


 なんかうまい理由を考えて……バーミリオンさんにワインが飲めるよって言えばオッケーしてくれないかな?


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