第340話 今はまだその時ではない
「じゃ、出発〜」
「ワフ〜」「「バウ」」「〜〜〜♪」「クルル〜♪」
夜になって、さっそく出発。
メンバーは俺、ルピ、レダにロイ、スウィーとラズ。フェアリーズはひとまずお留守番で。
今日、アズールさんとの話が終わったら港に行くけど、セルキーの里に行った時に神樹経由で来てもらってもいいし。
『アズールさんはお話だけして帰るんでしょうか?』
「どうだろ? 俺としては灯台の方も見て欲しいなあって思ってるんだけど」
『あっ!』
あの灯台、もちろん動いてないんだけど、動かすと何が起きるか調べてもらえると助かるなあっていう。
なんか変なものを呼び寄せるようなら封印だし、逆にセーフゾーンができるとかなら動かしたいところ。
「よっと」
いつものルートを通って、地下への転移エレベータに乗る。
次の瞬間にはもうその地下に到着。
「あと5分ぐらい?」
『です』
「ニーナ。アズールさんっていうドラゴンが……前に一回来たけど、今日また来て、ニーナに質問があるらしいんだけど」
今ごろ気づいたというか、ニーナ的にそれはオッケーなのかという問題が。
[はい。管理者であるショウが回答を許可すれば問題ありません]
「うん。それは許可するし、俺が知らないこともあると思うから」
[はい。了解しました]
良かった。
ああ、あとそうだ。
「この子はカーバンクルのラズ。他にもカーバンクルが増えてるからよろしくね」
「クルル〜♪」
[はい。了解しました]
まあ、そんなところかな?
あとは……左側にある転移魔法陣に石壁の蓋が乗っているのを確認。右側の大きな魔導保存箱は中身が空になってるな。
『ショウ君。時間です』
「りょ」
部屋の奥、竜の都に繋がっているらしい転移魔法陣の前で待機。
ほどなくして、光に包まれた魔法陣の中から、
「やあやあ」
とアズールさんが現れた。
………
……
…
前回はエレベータから十字路を左、教会の方に行って戻ってだけだったけど、今回はまっすぐ進んで、制御室へと続く転移エレベータに乗る。
「えっと、今日は白竜姫様はいないんですね」
「姫がいると重要な話をするどころじゃなくなるからね〜」
あ、うん、そうなるよなあ。
なんで、今日は白竜姫様には内緒で来てるんだとか……
「へー、こんな感じなんだ」
「他の古代遺跡とかと似てます?」
「どうだろ。竜族が中に入ることってあんまりないからね。この前の死霊都市がずいぶん久しぶりってぐらい?」
ああ、そんなこと言ってたっけ。
上がったところで右手に外に出る扉が見える。
「こっちは展望台へと出る扉です。最初このあたりは崩落してて通れなくて、逆側から来たんですけど……」
ニーナが復活する前の状況も何かの参考になるかもと説明しておく。
アズールさんもそれを熱心に聞いてくれてるので、無駄ではなさそうかな?
「で、ここが制御室です。ニーナ、自己紹介お願い」
[はい。本施設は自律型マナ再生施設、型式番号MR-217です。管理人ショウによりニーナの名称を頂いております]
「おおー! あ、僕はアズール。竜族、厳密に言うと古代彩竜の一人、蒼竜アズールね」
古代彩竜? それ初耳なんだけど……あとで聞こう。
「で、さっそく質問なんだけど、君のような古代遺跡って再起動に非常用の魔晶石が必要なんだよね?」
[はい。停止状態、保全状態からの再起動には非常用魔晶石にマナが充填されている必要があります]
「ふむふむ。その非常用魔晶石っていうのは、再起動に必要な分のマナが充填できるものなら、サイズが違ってても問題ないのかな?」
ああ、なるほど。
俺がアダプターを作ったとしても、そもそもの魔晶石のサイズが違うからダメってなる可能性もあるのか。
[回答不能です。停止状態から再起動するために必要なマナ量を供給できれば再起動は可能ですが、その大きさの魔晶石は本施設に正常に設置されません]
「ほうほう。それって魔導鋼で魔晶石のサイズを調整するようなものを作ってもダメ?」
俺が提案したアダプターをつける話だ。
それを聞いてニーナが珍しく考え込んでる模様……
[回答不能です。実際に動作確認をしてみないことにはわかりません]
「あー、やっぱりそうかー」
そりゃそうだよな。
アズールさんも首を傾げてどうしたものかという感じ。
「例えばだけど、俺がそれを作ってニーナに試してもらうのは可能?」
[はい。非常用魔晶石は診断機能を使うことで、正常動作するかどうかを確認することは可能です]
「なるほど!」
ぽんと手を叩いて頷くアズールさん。
となると、あと問題は……
「ニーナの非常用魔晶石よりも、死霊都市の非常用魔晶石の方が大きいですよね」
「大きさの調整なら後からでもなんとかなると思うよ。それよりも、大きめの魔晶石を探さないとだね」
「そうですね。確か保全状態からの再起動でも2割は必要らしいんで……。ニーナ、ちょっと非常用魔晶石見せてもらっていい?」
[はい。問題ありません]
オッケーをもらったので、コンソールの左端にある非常用魔晶石の蓋を開ける。
現れたのはマナが100%充填されている魔晶石。うん、でかい。
「うわ、これすごい大きさだね……」
「やっぱりこの大きさって珍しいですよね?」
「だねー。人間の国なら国宝になると思うよ?」
「マジか……」
ということは、やっぱりここってもっとずっと先になってから見つかるべき場所だったんだろうなあ。今さらか……
ふと横を見ると、スウィーがあくびをしてて……まあ、うん。
「この魔晶石はここからはずしたくはないよね?」
「そうですね。はずした後に何かあったら、ニーナが完全に停止しちゃうらしいんで、それはちょっと……」
「だよね。僕もそれは反対だし、どこかから魔晶石を調達して、それに合わせて大きさを調整する部分を作るしかないかなあ」
とはいえ、そんな大きさの魔晶石はアズールさんも見たことないらしい。
正確には「今までは魔晶石のサイズを気にすることもなかった」って話だけど。
せいぜいが中サイズ、魔導保存箱に使うサイズぐらいしか見たことがないそうで。
『この先のアップデートが来るまでは、そのサイズの魔晶石はないのかもですね』
俺もそんな気がするんだよな……