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第34話 俺の妹がこんなに賢いわけがない

10日目(火)

「おは」


「おはって、いいんちょまでどうしたん?」


 朝、いつものように登校すると、ナットのそばにいいんちょまでいる。


「伊勢君、出雲さん呼んで」


「ん? いいけど」


 とミオンの方を見ると、こっちをじっと見てる。

 ちょいちょいと手招きすると、とてとてと小走りでやってくる。


「ごめんなさいね。これって……」


 いいんちょがタブレットで見せてくれたのは、あー……


「ナットがばらしたの?」


「いやいや、いいんちょが気づいたんだって」


「私が気づかないとでも?」


 うーん、バレないと思ってたんだけどなあ。

 ともかく、ここでコソコソ話し合ってるのもなんなので、昼飯の時に話すということで納得してもらう。

 いいんちょはちょいおこって感じだったんだけど、校則違反ってわけでもないよな? てか、熊野先生のアイデアだし……


 ………

 ……

 …


「じゃあ、アレは部活だっていうの!?」


「うん」


 隣でコクコクとうなずくミオン。

 お昼になり、購買で買ったサンドイッチとジュースを持って屋上へ。

 高いフェンスで囲まれた屋上だが、かなり広くて、あちこちに同じ様にお昼をしている集団がある。俺たちもそのうちの一つ。


「ちなみに、うちの顧問は熊野先生だから苦情があったらそっちへどうぞ」


 うーん……と釈然としない表情のいいんちょ。

 やっぱりというか、俺がミオンを悪い道に引きずり込んだみたいに思われてたっていうね。


「出雲さんも納得してやってるの?」


 ミオンはその問いにもコクコクとうなずく。


「それにしてもよくわかったな。ぶっちゃけ、家族とナットぐらいにしかバレないと思ってたんだけど」


 持ってきたタブレットにはミオンのチャンネルが表示され、新しい方の動画が流れている。

 俺のキャラは画面に全身が映っているだけで顔つきとかはなかなかわからないし、ミオンはたしかにバストアップが映ってるけど、現実の出雲さんとは思わないはず。


「ってかさ、真面目ないいんちょがなんでこの動画のこと知ったの?」


「そいやそうだな……」


 家に帰っても勉強してる姿しか想像できないような、まさに委員長と呼ぶにふさわしい委員長キャラなのに。


「それは……、高校進学祝にVRHMDをもらったから、ちょっとゲームでもしてみようと思って、CMでも見たゲームだったからどうなのかなって」


「お、いいんちょも興味ある!?」


「今度の日曜から新規制限も消えるし、やってみたら?」


「ぃぃょ」


 ミオンにもそう言われ、ぐらついてる感じ?


「でも、ゲームの中でも人付き合いしないとなんでしょ?」


「そりゃMMOだしねえ。こいつは別として」


 それはちょっと黙っとこうか?


「別に知り合いとだけプレイすればいいじゃん。俺の島には来れないけど、ナットがいる帝国スタートとかさ」


「あー、それなら王国にした方が良いかもな……」


「え、なんで?」


「いや、メインストーリーの話が出ただろ? あの頃ぐらいから、街の中に兵隊がうろうろしてて、すっげえピリピリしてんだよ」


 ナットがNPCに聞き込みしたところ、皇帝の体調かなり良くないらしく、崩御ということになると国内が荒れる可能性が高いらしい……


「おおお、なんかメインストーリーって感じだな」


「まあ、始めるなら王国にしとくのが安全だろうな。俺もフレも帝国がヤバくなってきたら王国に向かうかって話してるし、いいんちょ迎えに行ってもいいぜ」


 へえ、そんな事になってるのか。結構、ガチ目のストーリーなんだな。


「待って待って。まだゲームやるって決めたわけじゃないから」


「そうは言ってもなあ?」


「沼には引きずり込むもんだよな」


 と、酷い言い方するナット。間違ってはないけどさ。


「あ、そいや、美姫が王国にキャラ作って遊んでるんだよ。ナットもいいんちょも知ってるだろ?」


「美姫ちゃんか。ゲーム上手そうだし、スカウトしたいとこだな」


「伊勢くんに似ず、しっかりした妹さんね」


 ……タチの悪いことに外面は完璧にできるからな、あいつ。

 まあ、しっかりしてるといえばしてるんだろうけど。


「ん?」


 ミオンが制服の裾をちょいちょいと引っ張って……


「あー、俺ら小学校のころから同じクラスだったからなあ。いつも俺の後ろにくっついてた美姫は、ナットもいいんちょも知ってるって話」


 そういうと納得した風。


「でも、話したのはもう三年以上前よ。中学になってからは学年が違うとね」


「疎遠ってわけでもないけど、まあ話さなくなるよな。てか、美姫ちゃんは受験生だろ。MMORPGなんてやってていいのか?」


「ここに来るんだってさ」


 その言葉に二人とも驚いている。まあ、美姫が天才ってか神童なのは、中学の時も有名だったしな。

 で、またちょいちょいとされるので、美姫が全中模試一位なことを教えると、めちゃくちゃビックリしてる様子。

 俺としても『俺の妹がこんなに賢いわけがない』って感じだよ……


***


『ショウ君、私も妹さんに会いたい』


「え、美姫に?」


 その答えにうなずくミオン。それ、部活に来てVRHMDをかぶって第一声でいうことかな?


「いいけど、あいつ癖があるからなあ……」


 ナットもいいんちょも美姫の喋り方がおかしいのに慣れてるけど、どう考えても普通じゃないよな。

 めちゃくちゃ頭が良いってことで「じゃ、しょうがないね」みたいな雰囲気を勝ち取ってるあたりが厄介というか。


「でも、会うタイミングってある? この間みたいに一緒に買い物してるところに出くわせばいいんだろうけど」


『それは私が無理です』


「はい……」


『妹さんのライブ、私も一緒に見るとかダメですか?』


 ああ、この間みたいにあいつが遊んでる放送をかー。それなら話す内容にも困らないし良いかも。


「じゃ、あいつが次にライブ見せる気になった時に聞いてみるよ」


『近いうちがいいです』


「あ、うん、了解」


 まあ、帰ってから聞くか。アプデくるって話で王国がどうなのかも見てみたいし。

 ちょうどそこにベル部長がやってくる。


「二人とも待たせたわね」


「ちっす」


『こんにちは』


 そいや、ベル部長も王国だったよな。


「王国ってアプデ発表後ってどういう感じです? ナットに聞いたら、帝国は街中もピリピリしてるとか聞きましたけど」


「ええ、王国もバタバタしてるわね。なかなか楽しいことになってるわよ」


 ベル部長の話だと、ポーションの類を国が買い取るという話で、全体的にヒールポーションの値段が高騰しているらしい。

 そして、


「教えてもらったアンチパラライズポーション、ヒールポーションの3倍の値段で買い取ってくれるから、うちの知り合いはそっちにかかりっきりよ」


 とのこと。

 ヒールポーションは備蓄が整えば一気に値下がりするだろうけど、アンチパラライズポーションは製法を知ってるのは部長の知り合いの一部だけ。

 そりゃまあ、儲かるよな……


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― 新着の感想 ―
[一言] 帝国から王国に移る気なら早くしないと国境封鎖されるんじゃ…
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