表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

211/634

第187話 種と仕掛けがある話

 グレイプルビネガーも無事完成。

 これでお酢ができたので、次はいよいよだけど……


「あと1時間ぐらいあるよね?」


『はい。10時前ですよ』


「おっけ。じゃ、グリシンを試そうか」


 グリシンから醤油とか味噌ができる可能性は……半々かなあ。

 ルピにスウィーを見張ってもらってるので、バックヤードの魔導醸造器のところに戻る。

 グリシンを半分ほど詰めた小さい樽を魔導醸造器にセット。

 さて、どうかな?


【魔導醸造器:動作中】

『原材料

 ・グリシンの実

 醸造メニュー

 ・グリシーナ、グリシンソース……材料が不足しています』


「うーん、この『グリシーナ』が味噌で、『グリシンソース』ってのが醤油っぽいけど……ダメかー」


『ショウ君、グリシンソースの説明を見れませんか?』


「ああ、それか」


 このメニューからでも見れるのかな? ポチッと……


【グリシンソース】

『グリシンの実を発酵させることでできるソース。独特の風味がある。

 料理:調味料として利用可能』


 間違いなく醤油っぽいんだけど、足りない材料がわからないんだよな。

 待て。こっちをポチッと……


【必要な原材料】

『グリシンの実、ハクの実、塩、水』


「ハクの実?」


『なんでしょう?』


「ちょっと待ってね。これも説明が見れるはず。ハクの実の説明を……」


【ハクの実】

『ハクの小さく白い種子。食用で栄養が豊富なため「月白(げっぱく)の実」とも言われる』


 小さくて白い種子……米? となると、ハクって稲のこと?

 あー、山小屋に戻ったら、植物図鑑をもう一回見直さないとだな。


『心当たりがある感じですか?』


「あー、うん。なんとなくだけど、ハクっていうのが稲のことで、ハクの実って米のことじゃないかなって」


『醤油にお米が必要なんですか?』


「米っていうか麹が必要だからってことだと思う。多分だけど……」


 この魔導具、米、いや、ハクから麹を作ってくれるとか?

 うーん、麹ってなんかいろいろ種類があったような気がするけど、まとめてハクの実で大丈夫って感じなのかな。


『えっと……』


 ミオンが全然ピンと来てないので、簡単な説明を。

 とはいえ、俺もなんとなくでしか知らないんだよな。今どき種麹なんて、パックで売ってるものだし。


「まあ、そういう菌のことを麹って言うんだけど、それが必要だからだと思う」


『お米から作るんですね』


「ばあちゃんから聞いた話だけど、麹って神様にお供えしたご飯に生えたカビらしいよ」


 正確にはご飯に生えたそれをお酒にしたんだっけ?


『さっきの説明も女神様が関わってましたね』


「え?」


月白(げっぱく)というのは、IROの女神様で一番偉い人だそうですよ』


「へー」


 そういうところ、微妙に日本製って感じがするよなIRO。

 まあ、ゲームとしてわかりやすく「その女神様の実を入れれば、発酵してくれるので、日本酒も醤油も味噌もできますよ」って感じなのかな。


「あ、そういえば、白銀の館のディ…マリアさんって味噌とか醤油作れたのかな?」


『いえ、多分まだだと思います』


「適当なこと言っちゃったからなあ。この魔導醸造器の説明だと、ハクの実がないと上手くいかないっぽいし」


 例の神聖魔法でどうかって話をした後、ベル部長やセスから「成功した!」って話は聞いてないし……


『終わった後、部長に話しますか?』


「うん、向こうが忙しくなさそうなら。連絡しといてくれる?」


『はい!』


 そもそも、ハク、つまり稲が見つかってるかどうかも気になる。

 米が手に入れば、白ご飯はもちろん、リゾットやらピラフやらも作れそうだし……


「〜〜〜!」


「あー、そろそろいいか」


 あれこれやってるうちに、カムラスのコンポートも冷めたはず。ちょっと味見してみよう。

 バックヤードからカウンターに戻ってくると、ルピがスウィーを咥えて拘束中。ジタバタもがいてるフェアリーの女王。


「〜〜〜!!」


「はいはい、もうちょっとだけ待って」


 そのまま手を突っ込まれるのもアレなので、竹串を取り出して1個プスっと。

 スウィーのサイズからすると、それでもスイカ丸1個ぐらいになるんだけどな。


「中がまだ熱いかもだから気をつけて」


「〜〜〜♪」


 その注意を聞いてないのか、大口を開けてがぶりとかぶりつくスウィー。

 とりあえず火傷するような温度ではなくなってるっぽくて何より。


『大丈夫みたいですね』


「うん。せっかくだし、俺も一個……」


 金柑の大きさだから一口で食べられてちょうどいい。

 ぎゅっと噛むと、滲み出る甘味と酸味。絶妙な調和具合が堪らなく美味しい……


「これはちょっと……実物でもあり得ない美味さかも」


『ずるいです……』


 リアルで再現できるならしてあげたいところだけど、これはちょっと無理なんじゃないかな。


「ワフ」


「ん、はい」


 パクッと一口で食べて、美味しさに目を細めるルピ。

 それはいいんだけど、なんかこう……ルピが一瞬淡く光ってたような?


『ショウ君』


「うん」


【マナガルム:ルピ:親愛:自由行動:抗毒Ⅱ(6時間)】


 抗毒ってやっぱりカムラスのコンポート食べたからだよな? っていうか、


「俺もひょっとして光ってた?」


『いえ、私からは普通に見えてました。ステータスを開いてもらえますか?』


「うん」


 ステータスを開くと【抗毒Ⅱ(6時間)】の表示が追加されてるので、俺にもバフが掛かってるってことか。

 ミオンは俺の主観をライブしてるから、俺自身は別にわからないだけかな。視界に入ると鬱陶しいだろうし。


『すごいですね。カムラスの実のおかげでしょうか?』


「多分ね。でも、フェアリーの蜜のおかげもありそうだし、これもベル部長に報告かな?」


『そうですね。カムラスの実は本土にもありそうな気がしますし』


 海沿いの斜面に生ってる感じだし、例の釣りプレイヤーが集まってる村から、沿岸沿いに探して行けばよさそうな気がする。


『あ、部長たち、部室に来ましたよ』


「りょ。片付けして上がるよ」


『はい』


 あとの準備は明日の昼にまったりやろう。


***


「どもっす」


『おかえりなさい』


「兄上、おかえり!」


「お疲れさま。何か新しい発見が?」


 さっそく、ベル部長の催促が来たんだけど、ミオンがさっきのアーカイブをサクッと再生してくれる。

 説明するのは『ハク』という稲、そして、『ハクの実』が米じゃないかという話。あとはカムラスの実とその効果を見せる。


「ハクって稲のことだと思うんですけど、王国とかで見つかってます?」


「いえ、見つかってないと思うわ。ただ、IROは小麦、コハクって呼ばれてるけど、そっちが主食だから気づいてないだけかもしれないわね」


「うむ。米があれば麹が作れるというのは理にかなっておるし、さっそく探さねばの!」


 とのこと。小麦がコハクだと、大麦はオオハク?

 島にもあるといいんだけど、やっぱりあの教会の向こう側を探さないとかなあ。


「あ、あと、ディマリアさんになんか適当なこと言っちゃったので、謝っといてください」


「良い良い。それよりもだ!」


「ええ、このコンポートの方が大問題ね」


 え? マジで?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もふもふと楽しむ無人島のんびり開拓ライフ ~VRMMOでぼっちを満喫するはずが、全プレイヤーに注目されているみたいです~ もふもふと楽しむ無人島のんびり開拓ライフ2 ~VRMMOでぼっちを満喫するはずが、全プレイヤーに注目されているみたいです~ もふもふと楽しむ無人島のんびり開拓ライフ3 ~VRMMOでぼっちを満喫するはずが、全プレイヤーに注目されているみたいです~ もふもふと楽しむ無人島のんびり開拓ライフ4 ~VRMMOでぼっちを満喫するはずが、全プレイヤーに注目されているみたいです~ もふもふと楽しむ無人島のんびり開拓ライフ5 ~VRMMOでぼっちを満喫するはずが、全プレイヤーに注目されているみたいです~
― 新着の感想 ―
[一言] 便利装置はお米を所望みたいですが、皆で遊んでるところでは麦があるなら麦麹でいいのではという気も。 既に試した人が居てそっちでは無理だったのかな?
[良い点] ワンコに咥えられてジタバタする女王様… 切り抜き動画にしたら人気出そう。 [気になる点] 甘味好きなのは中の人なのか、AIなのか?
[一言] 最高神の名を関する穀物が発酵を司るという事はつまり月白様はお酒が好き…? おつまみは発酵食品?臭いほうがクセがある方が美味しいのよ!っていう根っからの酒飲み…? 神も美人も酒が好きってジン…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ