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第16話 困った時の……

「ただまー」


「兄上おかえり! お風呂にするか? ご飯にするか? それとも……」


「飯で」


 ありきたりなお約束はノーサンキュー。

 結局、あのあと動画についたコメントをチェックしたりでIROできなかったし、はよ飯食ってゲームしたい。


「連れない兄上よのう。中華丼を作っておいたので夕飯にしようぞ」


「おう、サンキュ」


 作っておいたってのも、レトルトだよな。愚妹に一から中華丼を作らせたら、台所が爆発する可能性がある。


「味噌汁とほうれん草の胡麻和えぐらいは作るか……」


 健康のために副菜をサクッと作って添える。好き嫌いがわりとあっても残さない分、愚妹はまだ扱いやすい。これが姉貴なら更に一悶着ある……


「いただきます」


「いただきます!」


 ガツガツと美味そうに食っていた愚妹がふと顔を上げて俺を見る。


「どした? 茶か?」


「いや、兄上は最近、乳臭いのだが女でもできたのか?」


「ぐふっ!」


 危ねえ、中華丼吹き出すところだった……


「なんだお前、その『乳臭い』ってのは」


「制服に母上でも姉上でもない匂いがのう」


 マジか。可能性があるとしたら、絶対に出雲さん——ミオンなんだが……

 腕を組むとか、羨まけしからんことはしてないはずだけど。ブレザーの裾を掴んでたりすることがたまに……


 箸をいったん置いて、掛けてあるブレザーの裾を嗅いでみる……わからん!


「ほう、身に覚えがあるようだのう?」


「げぇっ、お前まさか!」


「ふっふっふ、姉上から『翔太が部活の女の子と仲がいいらしいので、イチャコラしてたら処せ』とDMが来ておった」


 マジかよ……ってか熊野先生から漏れてんじゃん! 個人情報保護法!


「まあ、兄上に彼女ができるなら、めでたいことだ。我から姉上にチクったりなどせぬ」


「おお! って彼女じゃねーよ! 同じクラスで部活も一緒なだけだって」


「なんだ、つまらんのう。家に呼ぶようなことがあったら、我にも紹介するのだぞ? しなかった場合は……」


「させていただきます」


 まあ、あれだけ引っ込み思案なミオンがうち来るなんてあり得ないと思うけど。


「ところでお前、DMってサエズッターの?」


「そうだぞ。兄上はやらんと聞いていたが、心変わりしたのか?」


「ネタバレ嫌だからやんねーって。それに真白姉にアカウントがバレようもんなら『あんぱん買ってこい』とか言われるに決まってる」


 触らぬ神に祟りなし。やっぱSNSにはこわちかが一番ってことで……


***


 飯食って洗い物して宿題やって8時過ぎ。そろそろ始めるか。

 ベッドに寝転び、VRHMDを被ってリアルビューに。フレンドリストを見るとミオンはもうオンラインでバーチャル部室にいるっぽい。

 ベル部長はIROでライブ配信中かな? 今週は木曜にやるって話だったし。


「ばわっす」


『ショウ君』


 嬉しそうに手を振って迎えてくれるミオン。次にアップする動画を編集してたっぽい? それを傍に避けて手を振ってくれる。


「それは次の?」


『うん。この間のゴブリンを追いかけたあたりまでかなって』


「いいね。でもなあ、あいつらどうやって倒そう……」


 現状の初心者装備でってのはちょっと無理そうだし、もちろん店はない。

 そうなると武器防具を自分で作らないとなんだけど、鍛冶スキルは取得できたとしても、元になる素材はどこに……


『ショウ君、あんまり無理しないで?』


「あ、うん。ま、のんびりやりますか。じゃ、今日は西側をぶらっとしてくるよ」


『うん、いってらっしゃい』


 なんかこう……、ちょっといいかも……


***


「よしよし、今日もちゃんとテントの中だ」


 表に出て、今日は西側……の前にミオン限定配信をオンっと。


【ミオンが視聴を開始しました】


『ショウ君、こんにちは』


「ようこそ、ミオン」


 カメラのある方に手を振ってご挨拶。


『今日はどういう感じですか?』


「今日は無人島の西側を探索してみようかなって」


『はーい、頑張って』


 んー、久々にまともにIROプレイしてる気がする。装備を確認して、インベントリ確認して……大したものないな。


 早速、西側の方へとてくてく歩いていくと、少し草原というか草むらが続いた後、東側とはまた違う感じの森が見えてきた。杉とか檜っぽい?


「東側は南国風だったのに、こっちは北欧風かよ」


『面白いですね。ゲームならではでしょうか』


「かな。でも、これでログハウス作るための木材の目処はついたかも?」


『ログハウス!?』


「まあ、どうやって木を切るかって問題があるけど」


 伐採スキル取っても斧が無いんだよな。どっかに斧落ちて無いかな。

 でも、斧を手に入れて伐採できるようになったら、次は大工スキルに鋸とか金槌とか釘とか……


「ん?」


 気配感知に弱々しい何かが引っかかる。


『どうしました?』


 答えると気づかれるかもなんで、手を軽く上げて答えになるかな? まあいいや。

 気配遮断のスキルを発動して、そろそろと何かに近づいていくと……


「クゥン……」


 は? 仔犬? ああ、そうだ、鑑定を使えばいいんだ。


【狼?:軽傷】


 え? 狼? ってか『?』ってついてるのは鑑定のLv不足か?


『その子、怪我してます?』


「っぽい。えっと……」


 スキル一覧を出して検索。軽傷ってことは怪我だから、怪我を治すスキルを探す。

 一番良さそうなのは【神聖魔法:Lv1】なんだけど、何か取得に制限があるのか取得不可の状態。


「うーん、神聖魔法取れないな。元素魔法は条件なかったのに……」


『じゃ、応急手当とか調薬とか?』


「それだ!」


 どっちのスキルも自分が怪我や病気の時に有効っぽいし取っておきたい。

 えーっと【応急手当:Lv1】【調薬:Lv1】を取得。あと【採集:Lv1】も取得して、薬草を効率的に取れるように。残りSP28だし、まだまだ大丈夫。


 で、仔狼に応急手当を……


【道具が不足しています】


「うへ、道具って包帯とかだよな。ここでどうやって調達するんだ?」


 というか、そもそもこれクエストっぽいし、周りにある何かで代用できて然るべきだよな。

 ぐるっと周りを見回して……


【仙人笹】


「これ使えるか?」


 ぶちぶちっとむしってからの応急手当……


【応急手当に大成功しました】


「よっし!」


『すごい!』


 こういう時は落ち着いてもう一回鑑定。


【狼?:軽傷(完治まで約12時間)】


 なるほど、こういうふうに出るんだ。うーん、ここに半日放置しておくのは、さすがにまずいよな……


「いったん、この子連れて戻るよ」


『はい!』


 インベに兎肉はあったはずだし、水は魔法で出せる。まずは治すために、しっかり食べさせないとだな。


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