第137話 たまったタスク再確認
日曜日
日曜日。
朝飯を終えて、真白姉が寮へと帰るのを駅まで見送りに。
「じゃ、体に気をつけて。あと好き嫌いはほどほどに」
「わーってるっての! それよりも……だ!」
ガバッとヘッドロックで締め上げられる。
「お前、澪ちゃんのこと泣かしたらわかってんだろうな?」
「そんなことしないっての! いてててて!」
ドスの効いた声と共に、締め上げる力が増していって……マジ痛いんだけど!?
「まあまあ、姉上。我が見ておるから心配せんで良い」
「美姫。ちゃんと見とけよ?」
「わかっておる。ほれ、そろそろ電車の時間だぞ」
その言葉でようやくヘッドロックを解いてくれた真白姉。
足元に置いてあった荷物を持ち直し、
「じゃ、今度は夏な!」
そう言って走り出すと、振り向きもせずに改札を抜けて行った。
ホント、台風みたいな姉だよ……
「で、真白姉は大学、寮へ戻ってもIRO続けるつもりなの?」
「うむ、気に入っておったし、しばらくは続くであろうの」
家への帰り道。
真白姉がどういうゲームプレイをしてたのか気になったので美姫に質問を。
レオナ様とPvPした後は「実戦だ!」ってことで、あちこち行って、いろんなモンスターと戦ったらしい。
同じ寮のシーズンさん、それと、
「シーズン殿とポリー殿が、ちょうどキャラレベルも近うて助かったのう」
いいんちょが付き合ってくれたらしい。ホントありがたい。
パーティとしては、セスがメイン盾、マリーがアタッカー、ポリーが弓と精霊魔法、シーズンさんがヒーラーだったそうだ。
「シーズンさんって裁縫プレイヤーだよな?」
「うむ。だが、怪我しそうな姉上を放って置けんとな……」
と苦笑いする美姫。
なんかもう、ホントすいません。
俺がセスやマリーと兄妹なのは知らないので、心の中で謝っておくことにする。
「他のスポーツみたいに、すぐ飽きないといいんだけど」
「さすがに一日二日ということはなかろう。少なくともレオナ殿に勝つまではの」
「ああ、そりゃ確かに」
真白姉、めちゃくちゃ負けず嫌いだし、負けたまま辞めるはないな……
***
「さて、今日は何しようかな。えーっと、やりかけのことたくさんあるよね?」
『はい。メモしてありますけど……読みましょうか?』
「助かるよ。ざっくり教えて」
ざっくり教えてもらって、テスト週のゲーム時短期間でもできそうなことは、その時に後回しかな?
『えっと……』
・南東の洞窟から海岸までの道(不要?)
・南東の洞窟の入り口に扉(セーフエリア確認)
・木箱とかつづら?を作る
・ミニチェストを作って置く
・未読の本を読む(図鑑とか)
・1階への階段に落ちない柵(急がない)
・土間からの排水整備
・畑を作る
・小さい盾?(盾スキル)
・スキルについて(土木、畜産)
・解錠コードの扉を開ける
最後のはテスト終わってからで確定なんだけど、それ以外にもかなりやること溜まってるな……
「じゃ、洞窟の扉からにしようかな。もともと山小屋についてた扉を再利用しようと思ってて」
『なるほどです』
時間がかかりそうなのは、こことあそこを行ったり来たりしないといけない点。
扉自体を運ぶのも大変だけど、それを取り付ける柱も立てないといけないし、二、三往復はしないとだよな……
………
……
…
「終わった。結構掛かった……」
『お疲れ様です。今3時前ですし、2時間弱ぐらいですね』
「やっぱり行ったり来たりに一番時間掛かった気がする……」
扉を運び、設置できそうな場所を調べ、そこの高さにあった柱をまた運んで……ってのが大変だった。
材料さえ運び終われば、あとは柱をしっかり立てて、扉を設置するだけだし。
『鍵はうまく動きそうですか?』
「うん。鍵って言うほどでもないけどね」
設置する前に、扉を貫通したコの字型の木組を取り付けた。
これをクルッと回して、柱の閂受けの金具にはまれば、それで十分かなと。
「こういう感じ」
『すごいです』
「ま、この辺だから通用する話だけど」
ゴブリンぐらいの知能があれば開けられる気はする。ただ、こっちにはもう知能が高そうなのはいないはずだし。
『次はどうしますか?』
「畑の話でもあるんだけど、パプの樹を山小屋か泉の近くにって思ってて」
『フェアリーさんたちのために干し柿を増やすんですね』
ミオンの言う通りなんだけど……あれ、ルピどこいった?
「ワフ!」
「お、いたいた。もう連れてきてくれたのか」
「〜〜〜♪」
またがっていたルピから飛んできて、目の前でドヤ顔胸張りホバリング。
うん、まあ、ドヤっていいけどさ。
「あの美味しいパプのデザート作るために、パプの樹を近くに植えたいんだけど」
「〜〜〜♪」
伝わってるらしく、肩へ座ってふんぞりかえる。
大きさ的には結構重そうな感じなんだけど、それをさっぱり感じないのはフェアリーだからなのかな。
『グリーンベリーの時みたいに選んでもらうんですね』
「うん。そういうの得意っぽいしね。この偉そうなの」
『ショウ君……。そのフェアリーさんだけでも、名前をつけてあげたほうがいいんじゃないですか?』
あー、名前……
ぱっと思いつくのは『セス』なんだけど、本物のセスに絶対怒られるやつだよな。
「うーん、俺のネーミングセンスが……。ミオンは何かアイデアない? ルピもすごくいい名前だったし」
「ワフン!」
ルピも喜んでるしね。
『そうですね。甘いもの大好きでしたし「スウィー」でどうでしょう?』
「いいね! えっと『スウィー』って呼んでいい?」
「〜〜〜♪」
お、サムズアップで返してくれたってことはオッケーでいいのかな。
「さすがミオン。一発オッケーっぽいよ」
『良かったです!』
しかし、甘味好きで『スウィー』か。いいセンスしてるよな。
………
……
…
「ふう、疲れた……」
『やっぱり重かったですか?』
「うん。樹自体は大したことないんだけど、根っこが土を抱えてて、それが重かった」
STR結構あると思うけど、さすがに俺より少し背が高いぐらいの樹を抱えての移動はキツい。
「場所はうちの近く? それとも泉の方?」
「〜〜〜♪」
スウィーが飛んでいって指さしたのは、土間から少し離れた斜面。
ちょうど雨水が流れていく溝になってる隣なのは、水分的にちょうどいい感じだから?
「ワフ」
ルピが先行してその場所に行くと、前足で土を掘り返し始める。
ここ掘れワンワンって感じだけど、別にお宝が出たりはしないよな……