8話 書庫
帰宅すると、お父様は慌てたように書斎へと向かい、お母様は体調を崩したリリィを連れ、部屋へと戻ってしまった。
取り残されてしまった私は、仕方がなく、書庫へと足を進める。先程の忘れられそうにもない光景について書かれている本があるかもしれない。きっと、お父様もその事について調べるために急いで書斎へ向かったのだ。
一度、部屋に戻り動きやすいワンピースに着替え直して、隣の部屋の書庫へ向かう。
書庫の扉を開けると、魔法の本と御伽噺の本を探す。書庫には天井近い高さの本棚が三つ、真ん中の机をを囲むようにしてある。魔法の本は、入って正面の本棚、御伽噺や絵本は右の棚に収納されている。
・誰でも理解できる魔法について
・今日からあなたも魔法使い
・初期魔法の使い方
・魔力の循環
・白い魔法使い
・救国の聖女
・聖女は幸せを手に入れる
・舞い降りた聖女
気になった本を本棚から引き抜き、机に運ぶ。
届かない高い所にある本は、本棚に嵌め込まれている石板に魔力を注ぎながら題名を唱えれば手元まで降りてきてくれる。
大体気になった本を運び終えたところで、椅子に腰を降ろし、近くにあった本を手に取る。救国の聖女という題名の本は白色の表紙に黄金色で題名だけが記され、作者の名前も、出版社すら記されていない。
「裏にも何も書かれていないわ」
題名だけ書かれた本もあるのね、と初めて見る形に驚きながら、本を開いた。