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3話 久しぶりの

 

 長い廊下を足早に進む。

 リリィの部屋は私の部屋から、少し離れた位置にある。元々は隣同士だったものの、私が書庫の近くがいいと、わがままを言って変えて貰ったのだ。


 それにしても熱が下がって、本当に良かった。倒れてから、完全に熱が下がるまで一週間もかかるとは思いもしなかった。



 久しぶりに、会えることに気分が上がっていると、目の前に見慣れた背中が見える。


「お父様!」


 思いのほか大きくなってしまった声が廊下に響く。しかし、そんな事は気にせず、お父様に向かって走り出す。

  アンナが、エミリア様!と、注意するように声が訊こえたが走る足を止めることはしなかった。

 カリーナ先生に見つかってしまったら、確実に怒られる行動だと分かっていても、今日は許して欲しいとエミリアは思った。


 カリーナ先生はリリィと私の家庭教師をしている人物で、エミル伯爵夫人でもある。カリーナ先生はとっても怖くて有名な家庭教師だ。実際、怖い。あの冷たい視線で射抜かれることを想像しただけで震えてしまうほどだ。

 この一週間はリリィがいなかったから授業はお休みだったけど、治ったら再開することになっている。

 マルク先生の魔法の授業なら喜んで受けるんだけどなあ。



「エリィ、おはよう。もしかして今からリリィのところに行くところ?」


 振り返ったお父様に、飛びつき抱きしめると、そのまま膝裏に手を回され、抱きかかえられる。


「はい。やっと会える許可が出たので今から向かうところです」


「では、一緒に行こうか。私も今から向かうところなんだ」



 そう言って頭をなでられる。そしてそのままお父様が歩き始めた。


「お父様、私歩けますわ!」



 もう6歳なのよ!まだ、立派な淑女とは言えないかもしれないけれど!言葉遣いや礼儀作法もまだまだ完璧とは程遠いけれども!さっきも走ってしまったけれど!



「エリィ、今回は私のわがままに付き合って欲しいな。いつまで、こうしていられるか分からないんだから」



 女の子の成長は、早いからねと呟いたお父様。そうなのね、私が成長したらこうやって抱きかかえることも難しくなるのね。それはなんだか寂しい。



「はい、お父様。今回は我慢しますわ!」



 そう言ってお父様の首に抱きつく。そうするとふふっと笑うお父様。

 私もなんだか嬉しくなって足をバタバタしてしまう。それを見ているアンナもなんだか嬉しそう。



「あ、でもお父様。今度、リリィのことも抱っこしてあげてくださいね!私だけだったら不公平ですもの!」



「優しい、エリィ。もちろんだよ」



 やっぱり嬉しいことは共有するべきよね。リリィもきっと喜ぶわ。



 そう思っているうちにリリィの部屋へと着く。お父様に抱っこされると長い廊下もあっという間だ。



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