2話 準備
お母様から怒られ、リリィに会えなくなって一週間。どこに居ようと、何をしようと、いつも隣にいた存在を探してしまう。一体いつになったらリリィに会えるのか。
すっかり不貞腐れた私は、布団から出ることを拒んだ。毎朝、同じ時間にやってくる侍女のアンナの言葉を無視し、頭まで布団をかぶる。
「エミリア様、朝ですよ。起きてください。朝食の時間はとっくに過ぎています」
何を言われても無視し続ける私に対して、アンナはわざとらしくため息をつく。
「起きなくて良いのですか?やっと、リリシア様の熱が下がり、許可が出ましたのに」
「お会いになりたくないのでしたら、仕方がありません。リリシア様も楽しみにしていらっしゃたのに」と続く言葉に勢いよく起き上がる。
「それを、早く言ってよ!」
ベットから下りドアまで駆け出す。部屋を飛び出す直前に、アンナの制止がかかった。
「エミリア様、落ち着いてください。嬉しいのはわかりますがまだ着替えも済ませておりません。まず、顔を洗ってください」
「だって、やっとリリィに会えるのよ。一週間も我慢したのよ!」
「それでは早く身支度を済ませてしまいましょう。さぁ、顔を洗ってください」
頬いっぱいに空気を詰め込んでアンナを下から見上げる。
「良いんですか?そうやっている間リリシア様に会うのが遅れますよ」
その言葉に意地悪だ、と思いながらもリリィに早く会う為に我慢する。
「アンナ!顔を洗うわ!」
「はい、準備はできております」
急いで顔を洗ってドレスに着替える。髪を整えてもらう中、鏡でおかしな所はないか確認する。
鏡の中にはお父様似のプラチナブロンドの髪、お母様似のペリドット色の瞳、ややつり目がちな目に薄い唇が鏡に映し出されていた。
「終わりましたよ」
「ありがとう」
椅子から降りて、ドレスを軽く整え部屋から出れば、やっと会えるのだと嬉しさが込み上げる。
アンナに「早く行きましょう。」と声をかけ、リリィの部屋へと向かった。