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童夢

作者: 瀬川なつこ

夢の幕間。

童夢。

幼子の見る夢のような、

淡くてあどけなくて、それでいて摩訶不思議な玉手箱のような詩たち

夏の風情

小径 憧憬 郷愁。憧憬 童夢。

廃人と堕胎 天気輪 夢の幕間 夢と骸骨

惰性、劣情、刹那、曲がり角、四辻 辻道の不吉。角に影。


旅人は

忘れられた本を探しに

裏道裏街道に入り込んで

亡くなった人と出会い

鬼が舞っているのを目撃し

幾つもの風車が風の通り道でくるくる回っているのを

横目に


またも知らない町へ

旅立ってゆく


そんな夢



忘れられた裏街道へ入り込むと

古びた家屋の二階の、洗濯ものの干してあるところから

シャボン玉が舞い飛んでくる。

けんけんぱのチョークの落書き。

竹馬の落とし物、竹トンボの落とし物

サッカーボールが転がっていて

遠くで子供たちが、櫻の下で、

舞い散る花弁と共に小鬼と舞っている。


そんな夢




夢の幕間。

小鬼と子狐のマイムマイム

焚き木を囲って秘密の会話

お地蔵様がお餅をぺろり

お坊様がすってんてん

狐とタヌキがちゃかぽこちゃかぽこ茶釜の中で踊り舞い

遠くのお寺で鐘が鳴る。

鶴と亀が坂から転げ落ち

鴉の七人の子が、不吉に鳴く。

柿の実落ちた。


さあ、今日は逆さに時計の回る日。


雨に濡れて蝸牛が、禅門の柱で雨宿り。

紫陽花が露に濡れて、ちらちらとかすかに輝いている。

お堂の中ではちらちらと赤い舌のように蝋燭が灯っていて、

金色の阿弥陀様のお顔が、不気味に輝いている。

梅雨の不可視。曇り空に、雨天。



海辺を歩く いたるところに、桜貝が採れる時期があります。

海の竜宮城から 送られてくるのでしょう 

人魚の鱗にすり潰してまぶして螺鈿のような 光沢にするのでしょう 泡沫の 季節



斜め後ろから マネキンが 近づいてくる 

店が閉まって やることないからって 動き出すこと ないじゃないか。

 都会の闇。 

嗚呼、前からは虫眼鏡探偵が髪を振り乱してやってきた 

奴の招待は 男の山姥 

前門の虎 後門の狼


櫻の夢をみる 縁側日差しの下で 紅色の鬼女 座敷の中で舞い 泡沫のように消えてゆく


海辺を歩く シーグラスを拾った 

長い年月をへて 生み出されし海の宝石 

あ、いま、シーグラスの中を シーラカンスが 尾を翻して 海蛇が、にょろりと動いた


夢の中

さかさまに堕ちていったら

こんな夢を見た

みたいな

我は、神を冒瀆する


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