94 互角
「すごいな……」
ベルの魔法を見届けていると突然身体が何者かに引っ張られた。
「油断するでないご主人」
「え?」
ヒュン。と、先ほどまで俺の頭があったところを何かの光が通り過ぎていく。
ベルが引っ張ってなければ死んでいたかもしれない。
あの魔法でノーダメージなのか!?
「よーし! 行こう!」
ビレナが走り出す。
次の瞬間には一体のハイエルフのもとにたどり着いており、勢いそのままに殴り飛ばす。
だがハイエルフはビレナの一撃で吹き飛ばされることなくその場にとどまる、反転、反撃に移った。
「ビレナのスピード体力であれか……」
改めてハイエルフの強さを認識させられる。
前衛を任せられたバロンの元には三体のハイエルフが迫っていた。
「一体は引き受けるわね」
そういうとティエラが魔法陣を展開する。
バロンの元へ向かっていた一体がティエラの魔法で出現した木々に絡め取られるように上空に吹き飛ばされる。すかさずそこへティエラの魔法弓が飛んだ。一本一本がAランククラスの魔物を一撃で仕留められるほどの威力。
だが。
──カキン
あっさりと受け流される。
それでも一体は確実にバロンから離すことに成功したのでティエラはそちらの対応に向かった。
「さてと、俺らも行くか」
「キュクー!」
「きゅっ!」
精霊憑依の強度をあげて対応している。いまの俺の身体はほとんどがカゲロウにコントロールを委ねた状況。
これもリリィが後ろから永続ヒールをかけてくれているおかげだ。普通にやれば1分で全身動かなくなるだろう。
「うおぉおおおおお!」
バロンに迫る一体を上から叩きつける。
手応えあり。だがすぐに反撃が届く。
「きゅきゅっ!」
キュルケの剣で弾き飛ばして体勢を整え、そのままバロンに迫るもう一体を相手しようとする。だがバロンに目で制された。
「私も何も準備をしていないというわけではないのだ!」
そう言うとバロンの身体が闇に包まれる。
なんだあれ!?
「おお。習得したのだな」
「あれは?」
反応があったベルに尋ねる。
「悪魔憑きとでも言えばよいかの。我々の世界の魔力をその身に宿す力だ。単純な戦闘力で3倍はあるだろうな」
「すごいな……」
一対一で心配が必要なのはもはや俺だけのようだった。
「では、いってくる」
「ああ」
だが一対一ではほとんどダメージが与えられないこともここまでの戦いでよくわかっていた。
ビレナやティエラの攻撃では吹き飛びすらしないのだ。
そうなると頼れるのは二人ということになる。
その一方であるアオイが動いていた。
「龍技……砕波!」
アオイの刀が抜かれたと同時、ハイエルフ2体に向けてなにかの魔法のようなものが飛んでいく。
ハイエルフの片方は避けたが、片方は真っ二つになっていた。
「すごい……」
「とどめを刺さんとな」
身体が半分になった程度では止まらないのがハイエルフ。
すかさずベルが接近して闇魔法を展開した。
「闇の中で眠れ!」
ベルの展開した黒い渦に、真っ二つになったハイエルフが飲み込まれていく。
暴れる光の塊を闇が飲み込んでいき、ついに一体、完全にそちらに引き込むことに成功した。
「後六体!」
ようやく数が揃った形になった。
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