83 政略結婚
「さってと、あんたらが来たってことはそうだな……この辺りの情報が欲しいんだよな?」
ちょっと待ってくれよといいながら執務室の引き出しを豪快に開き、乱雑に中の物を積み上げていくカルメル。
「お、あったあった。これだこれ」
「これ……地図か!」
「驚きました……これほど広範囲で……」
「エルフの里の場所まで明記した正確な地図を、どうして……?」
地図は特に、この辺境を守る貴族たちにとって非常に重要な情報の一つだ。
旧ビハイド領地までの広大かつ正確な地図を、ただの騎士爵が持っているのは違和感がある。
「がはは。俺は冒険者だからな。自分で作った」
「つくった!?」
「スキル、測量。職業、地図屋だ!」
「そんなもんまであるのか……」
いやだとすればBランクから貴族に入ったというのも頷ける。
どちらかといえばこれはもう鎖だ。王国の重要な情報を持ったものを冒険者として在野に解き放っておくのは恐ろしいと感じたのだろう。
「でだ、あんたらが来た理由だが、今後この元ビハイド領はあんたが治めるんだろう?」
「そうですね」
なぜかリリィが応える。
俺はちゃんと聞いてないからな⁉
「安心しな。ここらの連中はみんな、ビハイドに良いようにやられてた。中には妻子を持っていかれたやつも多い」
おそらくカルメルもその一人だな。
「だからまぁ、あんたに感謝こそすれ変なことにはならん。だが俺らはそうもいかねえ」
「どういうことだ?」
「あんたは俺たちにとって正義だ。だが俺たち弱小貴族たちにしてみれば、今回の混乱は自分たちの地位を確立する絶好の機会でもあるし、お家取り壊しのピンチでもある」
まあ俺はもともと相続とか無いんだがなと笑い飛ばしているが、生きてるうちに貴族でなくなるのは体裁も悪いしなんならカルメルの場合は事情が事情なので暗殺されてもおかしく無いだろうな。
だがその話が何につながるのかいまいちピンとこなかった。いつもどおりリリィに助けを求める。
「政略結婚の話が上がっているのですね」
「御名答」
「辺境の男爵以下の貴族なんて中央の奴らからすれば吹けば飛ぶ弱小貴族。生き残るためには繋がりが必要だ。そしてこの地域はいま、そのつながりに飢えてる」
要するに小さな貴族同士がつながって行く動きが盛んになってるということだった。
本来は王都の大貴族とのつながりを求めて動くんだが、すでにこの辺りの貴族はビハイドの影響を多かれ少なかれ受けた結果、王都からしてみれば貧乏くじでしかないわけだ。
「ということでだ。この地図と、この情報。あとはそうだな……いないとは思うが万が一いた場合、この近辺であんたらに歯向かおうとする奴らがいれば俺が動く」
「それはありがたいが……」
「その代わり、ルミをもらってやってくれんか? 次期辺境伯さまよぉ」
突然の申し出にルミさんがあわあわと目を白黒させていた。
みんなに忘れられないように頑張ります!
これまでのあらすじ
ビレナと出会って卒業する
リリィと出会ってやる
バロンを倒してやる
神国に乗り込みつつベルを召喚してやる
ピンチに駆けつけたティエラとやる
ついでにミラさんともやった
だと思います!




