53 帰り
リリィを敬語キャラにしました
30話くらいまで修正してますが随時修正と投稿していきます!
「やっと落ち着きましたね」
リリィが心底疲れたという表情で吐き出す。
「お疲れ様」
「ご主人さまも」
そう。あれから何度かお飾りのトップ、神の遣いとして駆り出されていた。途中からほんとに影武者を見つけてきたらしくお役御免となったがまあ慣れない仕事で気疲れしたのは事実だった。
「じゃ、そろそろ帰ろっか?」
当初の予定通りバロンを残し、逆にティエラを加えたパーティーで帰路につく。とはいえバロンは召喚が出来るようになったので精神的な距離はそんなになかった。
むしろいつでも呼び出されてしまうバロンの心労が増えただけとも言えた。悪い、バロン……。
「ちなみにだけど、バロンの着替え中とかに突然呼び出せちゃうの?」
「高度な露出プレイですね」
ビレナとリリィが悪巧みをしているがベルがそれは否定した。
「流石に召喚される側も対抗はできるからな。いまの力関係では嫌な時に応じないくらいの自由はある」
「待て、ベル。それだとリント殿が強くなった時は自由に呼び出されるように聞こえたのだが……」
「その分強くなれば良いだけだな」
バロンはうなだれていた。
とはいえ直近で伸び代が大きいのはバロンだ。黒魔術の星の書は適性を考えバロンが持っている。あれが習得できればまた段違いに強くなるだろう。
ちなみにキラエムが所持していたものは完全なものではなかったらしい。旧ビハイド邸のあったあの遺跡から発掘保管していた数枚がちょうど内容を補完したらしかった。これでビハイド家、キラエムのそれぞれの闇魔法より強力なものが理論上使いこなせるようになる、とのことだ。
「私が早く使いこなさねば意味はないがな」
「その点は大丈夫だろう。この世界のものとしては圧倒的な適性がある」
「そ、そうか……」
ベルのお墨付きをもらい照れるように顔を逸らすバロン。リリィはそれを優しく見守っていた。
「じゃ、帰りましょうか」
そう言ったところだった。
「待て! 非常事態を告げる知らせだ!」
「非常事態……?」
バロンが腕に巻いた魔道具を確認する。神国はこれ使って簡略化した情報伝達をしている。この辺りもまともな軍事力がバロンだけでありながら国家として領土を守り続けていられた理由の一つだ。
「王国との国境に謎の軍勢を確認。その数およそ3万」
「3万!?」
「大貴族なら揃えられる数とはいえ、これはもう戦争だねぇ……」
「戦争……」
立地を考えれば間違いなく王国の軍だ。
王国が神国にしかける理由は……。
「ま、王様も言ってたとおりさ、Sランクがこれだけの数で国を興したら脅威になっちゃうわけだからわからなくはないんだけどね」
「それにしても、おかしいですね。国王との盟約を考えれば」
「そうだねー。それに王国くらいになると侵攻には大義名分が必要だけど」
「例の貴族はどうだ?」
「そっちのほうが怪しいよねぇ、たしかに……」
闇魔法という共通点を持っていたキラエムとビハイド辺境伯。釘は刺したとはいえ闇魔法に呑まれたものが何をしでかすかわからないことはもう身をもってよく知っている。
「とすると、その3万は闇魔法で洗脳されたか、最悪の場合は禁呪による強化魔法も考えておいた方が良いな」
スペシャリストであるベルの言葉に一同が耳を傾ける。
「禁呪……?」
「この世の生命は寿命という概念があろう。あれに込められた力を無理やり引き出すことで人外の力を得る技術が、闇魔法にはある」
「そんなものが……?」
だとすれば犠牲となっているのは領民だ。
「一応聞くけど、解呪は?」
「できる。ただ使った寿命は元に戻らん」
「まあそうだよな……」
正直に言えば特別何か思い入れがあるわけでもないことを考えれば解呪するだけでもいい気はする。ただ一応、できる最善は考えておきたい。
「ティエラ、なんとかできるでしょ?」
ビレナが声をあげた。
「んー。一度森に戻る必要があるけど……」
確か森に戻れば長老組に狙われるんだったか……。
「ハイエルフを相手にするリスクまですぐに負う必要はないだろう。私が言ったのも最悪の可能性の話でしかない」
「それもそうか……」
ただまぁ、近いうちに森に行く必要性はこの時から全員が認識していた。
すみません更新止めすぎて遂にランキングからも消えてました!
こっからまた頑張りますー!




