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29 新居

ほのぼのサービス回

「ここがリントくんの家かー!」


 3人を連れて村に戻る。よかった、うちは無事だったらしい。

 まぁ盗るようなものもなければもともとボロ屋だからな……心配することがあるとすれば浮浪者の住処になっていないかくらいだったが大丈夫だったようだ。


「綺麗にしちゃいますね」

「あー、ありがとう」


 リリィがそう言うので軽い気持ちでお願いした。リリィが祈りを捧げるポーズに入る。


「え?」


 骨折程度ならノールックで治してしまうリリィがわざわざ祈りを捧げた時点で嫌な違和感があったが、止める間もなく詠唱が完了してしまった。


「ええええ!?」


 ゴゴゴゴと自分たちのいる部屋が動き出した。


「周りに家もないところでよかったねぇ」

「いやまぁ、それはそうなんだけど、え? 何が起きてるの……?」


 窓の外を見ると驚いたことに何故か森の木々を見下ろせてしまう。うち、平屋だったはずなのに!?

 さらにちらっと見える外観は屋敷かと見紛うほど立派なものになっていた。


「これは……土魔法? 聖女殿は一体どれだけ魔法を……」

「聖属性の応用ですよ。再生魔法の。ただまぁ、一応一通りの属性はつかえますが」

「全属性持ちに聖属性適性が化け物クラスか……つくづく規格外だな……」


 気づいたらいまいる部屋も何故か新築のときの綺麗さになっていた。何が起きたんだ……。


「ご主人さまの家なんだからこのくらいしないといけません」

「どう考えてもやりすぎ……」

「ここは思い出もあるかなと思いましたので基本的には部屋を増設して対応しました」

「この規模だとメイドくらい雇わなきゃかなー……あ、バロンでいっか」


 ビレナの言葉に固まるバロン。だがビレナは「閃いた!」とばかりに言葉を続ける。


「うん。いいねいいね。メイド服もあるし」


 そう言って収納袋から様々なタイプのメイド服が出てきた。

 オーソドックスなロングタイプから、胸元が大きく開いたものまで。さらにはメイド服と言って良いのか? と思う防御力のなさそうなものも複数出てくる。なんでそんなもん持ち歩いてるんだ……。


「ご主人さまに選んでもらいましょうか」

「リント殿……私は一応、この中で一番常識のあるのはリント殿だと――」

「じゃあこれで」

「慈悲はないのか?!」


 迷うことなく一番防御力の低いのを選んだ。

 カチューシャ、レースのあしらわれた胸元を覆うためだけの布、紐のようなパンツ、そして下半身に巻くフリフリの白いエプロン。後ろから見れば何も意味をなさないが、前から見たときにニーソとの間に絶対領域を演出する。白の布と黒い肌のコントラストが美しい。


「くっ……いっそ殺せ……」

「そうは言いつつしっかりやってくれるんだねー」

「ご主人さまも嫌いじゃないですよね?」

「まぁ……」


 むしろ好きだ。


「はぁ……まぁ……仕方あるまい……」


 バロンはもう2人に刃向かうのを諦めきっていた。


「ま、バロンは強いし、テイムで力を増してるけど、これから別行動も増えますしね」

「まさか、ずっとメイドをやらせるつもりか!?」


 バロンが身構える。


「いえ、この後神国乗っ取ったら忙しいですよ? 私は出るつもりなので」

「ん? 私に国を任せるつもりなのか?」

「そうですよ?」


 そのためにテイムしたと言わんばかりのリリィ。


「そうか……そうか……」


 それがなぜかバロンを喜ばせるスイッチを入れたらしい。やる気を出すバロン。


「よし! やるぞ、メイドでもなんでも! 何からすればいい?! 掃除か!」

「んー、いま建てたばかりだから、やるなら料理ですかね」

「そうか。なんでも作るぞ」

「ただ問題があって、食べ物までは魔法じゃ生み出せないんですよ」

「そうかそうか。それはそう……ん?」

「だからまずは、買い物から、ですかね」


 にこやかに言い放つリリィ。

 自分の格好を上から下まで確認した後、無言でリリィを見つめるバロン。


「わかった。なら着替えねば」

「そのまま」

「着替えを……」

「そ の ま ま」


 再び無言で見つめ合う2人。

 にこやかな表情に反して有無を言わさないリリィ。


「やっぱりお前らは嫌いだぁあああああああああああ」


 バロンの悲痛な叫びが無駄に広い我が家に響き渡った。



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