地下水道の調査依頼③
3話と4話の間の出来事です
「ファイア!」
「ヂュ⁉」
突然目の前に炎が現れたフクロネズミは驚いて固まっていた。
当たらなかったが足止めに成功したので仕留めるために前に出たが、俺が到着するより早く一人の冒険者が現れた。
「はっ!」
「ヂュ……」
現れた男が剣を振り抜き、見事にフクロネズミにトドメをさした。
あとから続々とそれを追いかける冒険者たちが現れる。
「よしっ! さすがリーダー! まず一匹だ!」
「やりましたね! えっと、まずは血抜きと……」
「リーダー! 剣を貸してください。すぐキレイにしないと錆びついちゃいますから」
パーティーか。手際が良くて羨ましい……。
倒したあとにすぐ解体に入る担当と、武器の整備を行う担当。その間も常に周囲を警戒する要員もいる。パーティーはやっぱり、憧れるなぁ……。
一応Sランクの冒険者に誘いは受けているにしても、どうなるかわからないし実感の乏しい俺としては羨ましい限りだった。
そんな視線にフクロネズミにトドメを刺したパーティーリーダーの男が気づいたようで、声をかけてきた。
「あれ? 手に持ってるはスクロールか……ってことはこれ、横取りしちゃったかな?」
困った顔で頭をかく男。人の良さそうな顔をしていた。
「いや。追いかけてたんだろ? だったら俺のほうが横から手を出したかもしれない」
「確かに追いかけてたけど、一瞬なにかにぶつかったように動きが止まったのは魔法だったのか。申し訳ない」
「いや、こちらこそ……」
冒険者同士の暗黙の了解の中に、獲物を横から奪い取る行為はマナー違反というものがある。こういった不特定多数が集まって行動するクエストでは特に気を使う問題だった。
「俺はカイン。Cランクパーティーのリーダーをしている」
「俺はリントだ。Dランクの冒険者をしてる。よろしくな」
「ああ、よろしく」
パーティーメンバーもそれぞれ作業をしながらも挨拶を交わした。
武器整備はシーフがやっているようだ。解体にあたっているのはヒーラー。最初に追いついてきていま見張りをしている男は武闘家のようだった。リーダーはオーソドックスな剣士なので割とバランスも悪くない良いパーティーだった。
「それにしても……スクロールを実戦で使う冒険者なんて初めて見たよ」
「う……」
スクロールに対する冒険者のイメージはあまりいいものではない。
まだ未熟な冒険者が魔法の練習に使うものであったり、ひどい場合には子供のおもちゃであったりする品物だ。
当然威力は出ないし、回数制限の上お金もかかるアイテムをわざわざ好き好んで使うやつはほとんどいない。
「うちも魔法使いはいないけど……パーティーでやればスクロール分くらいの働きはできると思うよ?」
相変わらず人の良さそうな顔で悪意なくそう告げるカイン。
キュルケを見た上で言ってるわけだからテイマーへの偏見もなく良いやつなんだろうけど、パーティーを組めずにここまできた俺は苦笑いしかできなくなっていた。
助け舟を出すようにカインのパーティーメンバーの作業が終わったようで話を中断させてくれていた。
「リーダー、終わりました」
「こっちもオッケーだ」
「ありがとう」
解体されたフクロネズミはきれいに素材単位にわかれていた。ここまで丁寧にやってあの時間……これなら買取査定はかなりプラスに働くだろうし、いいな……。
「じゃ、これはリントくんに」
「え?」
解体でキレイになったフクロネズミ。その中でも最も素材価値の高い袋部分を含んだ革を差し出してくるカイン。
「どっちが先かはわからなかったけど、一応こっちがトドメは刺しちゃったから討伐証明はこっち。その代わり、素材はリントくんのってことで」
「ありがとう」
「じゃ、俺たちはもう少し進むけど、ソロは危ないから気をつけて!」
「ああ」
そう言って歩き出すカイン。後を追うように他のメンバーもこちらに頭だけ軽く下げてからついていっていた。
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