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1 王都


 テイマー。

 最近では()()()として有名な冒険者の職種だ。

 劣等職で有りながら一定数がこの職種を目指す理由は、一度“テイム”してしまえば自分より強い魔物を従えることができるという一攫千金感が冒険者を目指すものにハマりやすいから。

 一方劣等職である理由は、そもそもそんな強い魔物をテイムする努力をするより、自分の実力を高めることを選ぶ人間のほうが圧倒的に優秀だから。


 さて、じゃあ俺、リントはどうかといえば、間違いなく前者だった。


「だってさぁ、お前らが強くなったら俺、サボれるじゃん?」

「きゅっ!」


 元はスライムだったはずなのにいまや羽毛に包まれて角と羽が生えてよくわからない生き物になった相棒のキュルケを撫でる。

 テイムされた生き物が成長するという話は時たま聞いていたが、成長させて使う人間よりそもそも強い魔物をテイムして使役しようとする人間が多いので稀な事例だ。

 こいつは俺が練習でテイムして、その後解放したはずなのに付いてくる変なやつだった。


「お前が強くなってくれて嬉しいよ」

「きゅきゅー!」


 よくわからないがうれしそうに周囲を飛び回る謎の生き物と戯れながら、俺は初めて王都のギルドへ足を踏み入れた。

 これまで拠点にしていたのは生まれ故郷の辺境フレーメル。そこでなんとか実績を積み、Dランク冒険者になったので満を持して王都へ上京してきたというわけだ。


「さあ、ここから俺の伝説が始ま――」

「どいてどいてー!」


 伝説の第一歩は小柄な獣耳の少女と、その子が抱えてきたバカみたいにでかい牛のような鳥のような魔物に吹き飛ばされた。


「いてぇ!」

「わぁっ! ごめんね、大丈夫? あ、でもちょっと今は急いでるからー!」


 それだけ言って俺の開きかけた冒険者ギルドの扉をくぐっていった。


「なんだったんだ……」


 出鼻をくじかれてトボトボ入っていくとその答えは周囲の冒険者達からもたらされた。


「さすが瞬光のビレナ、またA級モンスター抱えて帰ってきやがった」

「またソロだろ? 誰か誘えよ」

「ソロでA級ボコボコにできる冒険者なんざ、誘えるのはSランク冒険者くらいなもんだろ」


 瞬光のビレナ。それがあの獣人の少女の名前らしい。

 褐色の肌に頬に2本よくわからない模様は自分でつけたのか生まれつきなのかわからない。獣人としてのわかりやすい特徴は、猫のようなフサフサの耳としっぽが見え隠れしているところだろう。


「A級をボコボコということは少なくともAランクか、下手をすればSランクの冒険者か」

「何だ兄ちゃん、ビレナを知らねえってこたぁお前、新参者か」


 長身のハゲのおっさんに声をかけられる。銀の胸板と背負った剣、何よりアチラコチラについた傷が歴戦の冒険者をうかがわせる。CランクやBランクの冒険者かもしれない。


「フレーメルの方から今日やってきた。色々教えてくれるとありがたい」


 そう言って酒代をテーブルに置く。冒険者同士に敬語はいらないが、酒はいる。


「さすがはフレーメルで鍛えられたやつは基本が身についてるな」


 フレーメルは王都まで何日もかかる片田舎ではあるが、冒険者としてはほどよい魔物が出現する穴場として知られている、と俺は聞いていた。どうやら名が知れていることは本当らしかった。


「さてと、何から聞きたい? おっと、兄ちゃんはテイマーか。残念だがテイマー向けの情報は少ねえな」

「わかってる。別にそれは構わない」


 テイマーは劣等職かつ嫌われ者。理由は単純で、魔物のテイムを手伝わされるケースが多く、足手まといになりやすいから。

 これがドラゴンなどの強力な魔物を引き連れていれば話が変わるが、俺の連れはこのスライムもどきだけだからな。


「んじゃこっちの情報がねえみたいだからそこからだな。さっきのはビレナ。ここ数日のギルドランキングトップを走ってるAランクの冒険者だ。ソロで魔物をボコボコにしてるから、多分拳闘士。戦ってるのを見たやつの話じゃ、早すぎて見えなかっただとよ。見た目の可愛らしさに惹かれて高ランカー含めて何人もパーティーを申し込んだが全部断ってる筋金入りのソロプレイヤーだな」

「なるほど」


 ランキングトップの情報が聞けたのはありがたいな。あの子に逆らわなければ基本的になんとかなるということでもある。

 その後も王都のあれこれを聞いて最後に酒を追加で注文して卓を離れた。


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