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ダンジョン日記  作者: 亜坂コウ
一章
25/56

25

十月十五日 晴れ

なば採り。

風がいつもより冷たかった。

夜は奇麗な星空が見えたので明日は冷え込んでくれそうだ。

この一週間ほどで想定外のバレ葉が多く出てしまった。

今の時期は足が長いから商人も嫌がる品だ。

斎藤さんに連絡して駅に置かしてもらうことにした。

最近、商品を出す人が少ないと言っていたので喜んでくれた。

駅の当番もできない人が多くてほぼ同じメンバーで毎週やってるそうだ。

俺もたまには顔出してくれと言われた。

行ってもほぼ世間話で一日つぶれるからなぁ。


十月十六日 晴れ→曇り

なば採り。

予報通り冷え込んだ。

ようやくまともななば採りができる。

みんなには乾燥用で採って回ってもらい、俺だけ生用の奇麗ななばを採って回った。

夕方から乾燥機に入れて生出荷用のなばを詰めた。

今日は一階の掃除だけ。


十月十七日 曇り→雨

カッパ着てなば採り。

十時ごろからパラパラと降りだした。

三時ごろからは雨脚が強くなったので今日は三時まで。

あまり濡れてないものから生用を抜いて乾燥機に入れた。

予報じゃ明日の午前中まで雨らしいので明日は昼からと伝えた。

冷たい雨で体が冷え切ってしまったのでゆっくり風呂に浸かった。

風呂から出たらダンジョンに入った。

B3で戦闘。

今日は鉄杖は置いてハンマーをもっていった。

それをブンブン振り回す。

技術もへったくれもないただ振り回しただけの攻撃だがB3の敵にはそれで十分だったらしく、弾き飛ばし粉砕しながら倒していった。

何も考えないで振り回したおかげか少しスッキリした。

人を雇わないと回らないとはいえ人夫衆がいると気疲れする。

出した指示がキチンと伝わってなかったり、みんなで一緒に動かず別のところに行こうとしたり、単純に採り方が甘かったり。

強く言ってもう来ないと言われたら大変なのはこっちなので辛抱強く対応しなければならないのだけど、しんどいものはしんどい。

規模を縮小するべきだろうか?

俺の跡を継ぐ人間はたぶんいないのだろうけど、曾祖父の代から大きくしてきたこの榾場を守りたい想いがある。

この悩みはこれからもずっと付きまとうんだろうなぁ。


十月十八日 雨

なば採り。

一日雨だった。

人夫衆は来たがらなかったので一人でなば採り。

雨子(あまこ)日和子(ひよりこ)に比べるとだいぶん価値が落ちてしまう。

仕方がないので今日採った分は全部スライスにした。

十一時までかかってスライスして乾燥機に投入。

スライスの過程ででたみじん切りのなばを使ってパスタを作って食べた。

なかなかうまかった。

販促に使えるかもしれないから写真を撮ってレシピを書き出した。

こういうのをSNSとかにあげればいいんだろけど。


十月十九日 晴れ

なば採り。

最初の発生は落ち着いたようだ。

木に残っている芽も少なくなってきた。

今年は芽切りはよかったけど天気がひどかったので作柄が悪い。

十一月と十二月でいい品が採れればいいのだけど。

なば採りは人夫衆に任せて駅に持っていく物を詰めた。

千円袋五十とお徳用のバレ葉を五十。

ついでに駅の当番をしてくれている人たちの分も詰めておいた。

夕方から乾燥機に入れて今日はゆっくりした。


十月二十日 晴れ

なば採り。

朝一で駅に商品を持って行った。

斎藤さんはいなかったが他の人がいたので預かってもらった。

そこで聞いた話じゃ昨日の朝、豪華寝台列車が停車する日だったらしい。

その日の方がよく売れると言っていた。

来週からはそれに間に合うように用意しよう。

戻ったらなば採り。

今日は若めに採ったので明日は休み。

ダンジョンでストレス発散しよう。


十月二十一日 晴れ

朝はしっかり冷え込んでくれたのでなば採りは休み。

一日ダンジョンに入った。

とりあえずB3でハンマーをブンブン振り回した。

一旦戻って装備を整えたあとB4へ。

突く、払う、叩く動作をしっかり意識しながら戦った。

目が良くなったおかげでファイター一体ならコマンダーを入れた戦闘でも難なく熟せた。

ファイター二体だけの戦闘でもだいぶん対応できるようになってきた。

フルメンバーの相手と戦うのはさすがにまだ厳しい。

それでもしばらく停滞気味だったのがこれからはしっかりと向上していけそうだ。

扉の向こうに挑戦する日も近いかもしれない。

まぁ、ダンジョンばかりに気をやってる暇はないんだが…

ダンジョンを出たあと動いている乾燥機を見て一気に現実に引き戻された。

ダンジョンは今のところ金にならない。

今抱えている悪い品を少しでも高くどうにか売っていかないといけない。

そう思うと思わずため息が出てしまった。

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