AoG 第3話 円卓で
今までにないぐらい投稿が遅れました、スミマセン。
目を覚ました時は朝だった。
隣ではイリアが眠っている。
「ありがとう、」ただそう言った。
それがなにに対しての感謝の言葉なのか。俺を慰めてくれたことに対してだろうか。正直なところ自分でもあやふやだった。ただ、お礼を言いたかったのだ。
昨夜はお互いなにも食べていないので、腹が減っていた。
イリアを起こすべきか、そう考えたが止めておくことにした。
気持ち良さそうに眠っている。
それより夢のことを整理しておきたい。
あいつはマーリンで間違いない。夢魔と人間の混血であり、それ故に不死身。円卓の騎士を結成、召集した。
そしてあいつは「思いでの場所で待っている」、そう言った。
と、その時、ドアをノックする音が聞こえた。
{誰か来たようですね、誰でしょうか}
と、霊体化しているブリシェスが言う。完全に忘れていた。
「出てくる、なにも喋らないようにな」
はい、と言ってドアを開けると、学院長、何人かの見たことのない人が立っていた。
「なにか用でしょうか」
「ああ、カイル君、この人たちは王都の対魔王軍戦線の夜八刻騎士団の隊長、副隊長たちだ。君はもう知っているだろうが、騎士は王都の中での位が高い。そのなかの上位の人たちを主と呼ぶんだ。彼らはそれだよ。君に用があるらしい」
騎士たちの方を向くと、
「こちらに来てくれるかい、話がある」
とのこと。
「少し待ってください。」
イリアに置き手紙を書いて出ていく。
#*#
俺たちは学院の庭にいた。
ここは庭というより庭園というのがただしいのだろう。大きな四角い形をしたここの周りには沢山の花が咲いており、中央には噴水がある。そのなかの椅子に俺たちは腰かけていた。人数が多く、座れていない人も何人かいるが。
「話というのは、なんでしょうか」
問うと、隊長と思われる人が答えた。
「俺が答える。まあそう固くならずにな。俺は夜八刻騎士団隊長を勤めている、フェル=フォードだ、宜しく。ところで君はこの間の竜が襲撃してきた事件を覚えているかね?」
はい、と頷く。覚えているもなにもここにはその竜がいるのだ。
「君の情報が沢山挙がっているんだ。君はいったいあのときになにをしていた?」
厄介だな、そりゃあんな大がかりなことをしたら何人もの人には見られているだろう。
「俺は......」
「君は?」
「......」
言葉につまる。
「......まあ、話したくないことなのだろう、ひとまずそう思っているよ。そこでひとつ、君に頼みがある。」
「なんですか」
「君には夜八刻騎士団に入隊してほしい」
俺が対魔王軍の戦線にか、入りたい気持ちはある。だけど今はそれより大切なことがある。
マーリンに会いに行かなくてはならない。これは俺の義務だ。
「......すみませんが、少し時間をください」
「わかった。それでは明日の夜にでもまたくる、その時に返事を頼む」
「わかり、ました......」
騎士たちはぞろぞろと帰っていく。
学院長はいつのまにかいなくなっている。
イリアには置き手紙をした。今日、明日、明後日は連続休校日。イリアには1人にさせてしまうが今日はマーリンが待つ場所へ今から行くことにした。
思い出の場所と言われたらキャメロット城。俺達が初めてあった場所である。そこでは様々なことがあった。俺が仲間を裏切ったのもそこで起こった。
食事はそこら辺の店でなにか買っていけばいい。
俺は歩き出す。
*#*
キャメロット城は俺が死んでから1200年ほど経過している今でも南の方角に存在する。
王都の周りには森があり、そこを抜けて南に進むと砂漠がある。それをさらに進んでいくと段々と木が見えてくる、その先に[英雄都市キャメロット]がある。
ひとつの大きな城、[キャメロット城が]あり、そのしたには城下町がある、
随分と発展したようだ。俺が城にいたときは家、店が数えられるほどしかなかった。
キャメロットにここから行くには5日以上はかかるだろう。
3日間では間に合わないと思われるだろうが、俺は移動魔法を習得している。
だが、移動魔法は一度訪れたことがいる場所へしかいけない。
けれど俺はキャメロットに生前いたことがある。さりとて、俺は移動魔法でキャメロットまですぐに行けるというわけだ。
食事ははした。もうすでに行く準備はされている、
「それじゃあ......」
移動魔法の詠唱を始める。移動魔法の詠唱は他の魔法と比べて長い。
それ故に、無詠唱で発動することは難しい。
俺の下に淡い紫色の魔方陣が現れる。
目の前が光に包まれる。
............。
目を開けたそこには大きく、どこか懐かしい城が聳え立っていた。
「またここに訪れる日が来るとは思ってもいなかった......ブリシェス、城の中の様子を見てきてくれないか?円卓の騎士たちが侵入者に警戒して設置型魔法などが施されてるかもしれない」
{わかるました、少しお待ちを}
「気を付けろよ」
ブリシェスは城の中に入っていったらしい。俺が今たっている場所は城の門の前。門の奥には橋があり、そのしたには大きな水路のようなもので、水が流れている。まるで小さい川のようだ。
さらにその奥には大きな扉がある。今は大きく開いているが、夜は閉ざされているのだろう。俺の生前はそうだった。久しぶりに見たそれは、大きな口を思わせた。
城は沢山の塔が刺さっているような見た目で、その真ん中には他のものとは比べ物にならないような大きな塔が刺さっているようだった。それが本丸である。
そこは広く、幾つもの窓があり、大きく、高く建っているのとは裏腹に、どこかひっそりと佇んでいるようだった。
と、そのとき
{マスター、特に罠や設置型魔法などは施されていません、扉を真っ直ぐに行くと、幾つものドアがあります、さらに、}
「大丈夫だ、俺は元々ここにいたんだ。仕組みはよく知っている」
俺は門をくぐり、橋を渡り、扉の中に入っていった。
「......久しぶりだな、ここにはいるのも、マーリンたちは本丸か?」
本丸へと上る階段へと続く長い道には赤い絨毯がしかれている。
俺はその上を歩いていく。その真紅の絨毯は血を思わせた。
それを思った瞬間、気分が悪くならなかったのは、生前に人の血を見ていることが慣れていたためか、それとも、このあとに自分が人から血を出させることを分かっていたからだろうか。
廊下を歩き終え、階段を上り、少し歩いたその先には一際大きな扉があった。
その扉を躊躇い、躊躇もなくこじ開ける。
そこには円の形をした大きな卓があり、その周りには何人かの人が椅子に腰をかけていた。
「あ?」
「?」
「なんでしょうか?」
「来たか」
様々な声が聞こえ、それぞれが俺の方を向く。
そこで一人の人間が立ち、声をあげた。
「やあ!!よく来たね!!歓迎するよ、ようこそ!ここに来るのは久しぶりだろう?アーサー!!」
見た目は好青年、白髪、肌は抜けるように白かった。やつは、
「マーリン......」
「う~ん、やはり、夢より現実で聞いて正解だったよ」
と、そこでもう一人が声をあげ、あり得ないほどの跳躍をして、俺の前に跳んでくる。
「はあ!?笑わせるなよ!こんなやつがアーサーだってか??」
金髪で爽やかな顔立ちに似合わず大きな声を出してきた人間は
「ガヴェイン」
だった。
「てんめえ!!何故俺の名前を知ってやがる!?まさか本当にお前がアーサーだってのか!?ふざけるな!!もしお前が本当に転生したアーサーだってもよ、俺はアーサー、もとい、お前のことをぜってえに許さねえ!!」
「やめてください、ガヴェイン!」
そう声を上げたのは<ガラハッド>だった。白髪で高身長、優しい顔立ちをしている。それは1200年前とは変わらなかった。
「ガラハッド、」
「久しぶりです、アーサー、いえ、今はそうでは無いのでしょうか。それでも私は分かりますあなたが出すその気配、忘れもしません」
と、深く頭をさげる。
「うるせえ!!お前は黙っておけ!!こいつは俺達や、多くのキャメロットの民を裏切ったんだぞ!?」
「まあそう、声を荒らげないでおくれよ、ガヴェイン君」
マーリンだった。ガヴェインがちっ、と舌打ちをする。
「だったら、ここで俺と決闘をしろ!!俺に勝てばお前を認める、だが、俺に負ければ俺はてめえをこの剣で刺し殺す」
その言葉にこの場にいる誰もが驚いた。
彼は剣を立てた。その剣ガヴェインの愛剣である紛れもない<ガラティン>だった。
それに対してガラハッドが抵抗した。
「何を言っているのですかあなたは!?」
俺も言葉を発した。その言葉に対してもこの場にいる誰もが驚いた。
「わかった、その決闘に俺が勝てば認めてくれるんだな?」
「おお?話が分かるじゃねえか」
ガヴェインは笑う。
「あなたまで!?」
ガラハッドには悪いが、俺はこの決闘を受けることにした。
「すまないガラハッド、これがガヴェインが俺のことを認めてくれる一番の近道なんだ」
ガラハッドは黙りこんだ。そこでマーリンが俺に向けて言葉を発した。
「いいのかい?今の君は円卓の騎士ではない、僕の蘇生、治癒の固有魔法は円卓の騎士限定で普通の人間には効果がないんだ。つまり、ガヴェインがここで君に殺されても僕が蘇生することが出来るが、君がここで死んだらもうそのままだ。君の人生は終わり。それでもやるかい?」
「ああ、知ってるさ。けど俺は戦う、でなければ俺が魔術師になる意味はないから」
「わかった。君の意思がとても固いことは前から知っているよ」
#*#
「いつでもいいぜ、かかってこい」
「じゃあ遠慮なく!」
俺は模倣魔法を展開し、魔方陣から一本の剣を耐久力、鋭さを70倍にして取り出し、彼にむけて走り出す。
横へ、縦へと振った剣は全て避けられた。
「なんだあ?おっせえな!!」
そういって剣を振ってきた。縦振り、右に避ける。次に横振りだ。後ろに退く。
俺は剣を彼に向けて振った。先程の三倍程度速く、これは避けられない、彼は剣で防ぐ、俺の剣がガラティンに当たったそのとき、俺の剣が大きな音をたててバラバラになった。
いくら強靭な<剣>でも、最強を超え、人知をも超え、究極の存在に至った伝説には敵わない。
「はっ!なんだその脆い剣はよお!!」
即ち、既にもうこの決闘の勝敗は決まっていた。
彼は手に持った愛剣を俺に振りかざす。その一瞬が長く感じられた。永遠に時が止まったようだった。
そのとき、彼の左腕が吹き飛んだ。その傷口から出る血はまるで壺から溢れ出る水のようだった。
俺は立ち上がる。その俺の後ろには大量の魔方陣が睨むかのように彼の方を向いている。
「俺が使う武器は決して剣だけではない、俺は騎士でもなんでもないからだ。俺は魔術師だ!!」
そう、勝敗決まっていた。<カイル>という一人の魔術師の勝利が
この魔方陣は模倣魔術の魔方陣であり、そこから出る剣、銃などの数々の武器は全て強化されている。
「お前!なにをした!!」
無くなった左腕の傷口を右手でおさえながら彼は魔術師に問うた。そして魔術師は後ろに大きく跳躍して後退し、答える。
「今俺は模倣魔術で武器を模倣し、その魔方陣に高圧力の魔力を流しこみ、一本のただの剣を君に向けて飛ばした。君はそれを防げなかった。どうだ、簡単なことだろう?」
「クソがぁ!!」
彼は剣を握りしめ片腕で俺に向かって走ってくる。無謀だ。
「そうか、彼の固有スキル」
ガヴェインの固有スキル、[我が剣に勝利を]このスキルは確か自分の身体損傷率に応じて本人の身体能力が格段に上昇するようなものだった。
だから今の彼は俺の武器の射撃を防げると踏んだわけだ。
「ならこれならどうだ」
一丁の銃を取り出す。スプリングフィールドM14だ。
周りで見ていた何人かの円卓の騎士たちが銃を見てざわめきだす。この世界に銃はないからな。
フルオートで照準を定める。まだ距離はある。
ここだっ──。引き金を引いた。だだだだだっと音がする。
10発の弾を撃った。銃口という小さく、凶暴なその口から発射された鉛はガヴェインの体に吸い込まれていった。
「はっ、がぁっ、うっ......」
血飛沫を散らしてその場に倒れ込む。
俺は完全にアイツを殺すつもりだ。それが一番彼にとって納得のいく手段だろうし、それが一番簡単である。
「お、お前ぇぇっ!!」
声を荒らげる彼はごはっと口からを血を吐く。
「次は頭を狙うぞ、立て」
剣を杖のようにして彼は立った。
「ぜってえに許さねえ、殺す、殺す殺す殺すコロスコロス!!!」
その彼の怨嗟に俺は眩みがした。まるで彼の怨嗟が呪いとなって俺にまとわりついてくるように。
だが、ここで負けては意味が無い。絶対負けない、俺は。
目に見えぬような速さで彼はこちらに向かって跳ぶ。
だがそれも傷を負っていれば、ただの跳躍に過ぎない。
彼は跳んで降りた場所に倒れる。この様子ではもう立てないだろう。
この銃の残りの10発で彼を仕留める。
俺は近づいて彼の頭に銃口を向ける。彼はこう言った
「俺の負けだ、」
そして俺は返す、言葉と弾を
「ああ、ガヴェイン、君の負けだ」
そして、銃は音を立てて彼の頭を穿った。
全ての10発全てを彼の頭に撃った。
彼の脳漿は周りに飛び散り、たった今という一時で彼、いや、これは肉塊になった。その溢れかえるような深紅、もとい、真紅の血は何故か俺に安堵と安らぎを与えてくれた。
そしてこう発する。
「そして、俺の勝ちだ」
と──
読んでくださりありがとうございます!今回は今までにないほど投稿が遅れてしまいました。スミマセン、そのかわりにちょっとだけいつもと違い、内容をボリューミーにしました。そして、総合評価が50ptを突破いたしました!!ありがとうございます!!!これは僕にとって凄く嬉しいことです!他人から見ると、そんな凄くねえじゃん。とか思われてしまうかもしれませんが、僕が執筆した小説を読み、ブックマーク登録や、評価をしてくれることがとても嬉しいです!!これからも頑張っていきますので、何卒、応援やご愛読をよろしくお願い致します。