始まり
なるべく誤字脱字を無くすように頑張ります。
よろしくお願いします。
ジリリリリリ!!
頭の中を揺らす様に、目覚まし時計の音が部屋中に鳴り響く。
ベッドのすぐ隣にある勉強机に手を伸ばす。
そして目覚まし時計を止めようとしたが
「あ…あれ?」
いつもの所に目覚まし時計が無い。
「ど、どこやった…け」
仕方なく目を開けて周りを見渡すと、少し離れたクローゼットの上に置いてあった。
徐々に頭が覚醒しだして思い出す。
二度寝しないよう、昨日の夜にいつもの場所よりも遠いところに目覚まし時計を置いたのだった。
これ以上手を伸ばすとベットから転げ落ちる気しかしないから仕方なくベットから立ちアラーム音を止める。
「ふわぁぁ………眠い……」
大きな欠伸をしながらカーテンを開ける。
朝の日差し、と言うべきなのかサンサンと眩しい陽の光が目を焼き付ける。
階段を降りた後、1階の洗面所で顔を洗いながら寝癖を治す。
思ったよりも髪がすごいことになっていた。
某少年向け雑誌の超サイヤ人と言えば分かるだろうか。そんな感じだ。
朝食のトーストを食べながら天気予報を見ると晴天らしい。
入学式に晴天とは、神様にも愛されてるもんだ。
「そうか……今日から高校生か……」
自分の口から実際に声に出してみると、意外と実感の湧くものだ。
今日から高校生、夢に待った高校生活と考えるとウキウキしてくる。
「入学式だし……テレビでやっていたけど、早めに行くと友達ができるんだっけか……」
昔テレビでやっていたことを思い出し、身支度を開始する。
昨日の内に大体準備しておいたお陰で特に何もすることは無さそうだが、
おっと、忘れ物だ。
中学校の生徒手帳だ。これを提示する事によって本校に合格したことを証明するようなもんだ。忘れてはいけない。
名前の部分には大きく
『 小鳥遊たかなし 零次れいじ』
と書かれている。
自分でも小鳥遊という名字は珍しいと思う。少なくとも、付近の学校では俺の家族以外見当たらない。
「これで準備はいいな、よーし」
大きな声を出し、気合を入れて家を出る。
そこには、妹の湊みなとが庭を掃除していた。
「あ、お兄ちゃん。もう出るの?入学式だから8時からだよ」
「ああ、知ってる。早めに行っとこっかなって」
うちは仕事の関係で母と父が海外に出勤しているため、家事は妹がすべてやってくれる。
俺も家事の一つや二つ位できるのだが、湊曰く、私がやりたいからやってるだけ、だそうだ。
いい妹を持ったと感動する。
湊に手を振られながら家を出る。
学校は比較的近いので歩いていくことにしている。裏路地の近道もあって、急げば5分もあれば学校に着くくらい近い。
まぁ、だからこの高校を選んだわけなのだが
学校の校門に『入学式』と大きく書かれた看板を見て、緊張と同時に今日からこの高校に通うんだなと心の何処かでワクワクしてる自分がいる。
早速、校門を通ろうかと思ったら
「ん?なんだあれ」
ガヤガヤと校門を通り過ぎて直ぐら辺に人集りが集まっている。
後から背伸びして見てみると
「おい、新入生共この学校に入るなら金払え」
どこの昭和のヤンキーだよ、と言わんばかりの理不尽なことを発している人がいた。
いわゆう不良か、中学の時はあまりいなかったし、縁もなかったら少し感動しながらビビる。
カツアゲとかそんな面倒なことするならバイトしたほうがいいと思うんだけどな〜
てか先生方は何も注意しないのか、監視の目が行き届いてないのか
まぁ、変に思われないように安かったら払っといた方が身のためかもしれない。
どうせ後で先生方に知れ渡って帰ってくるだろうし
「一人五千円な〜」
そんな金入学式に持ち歩いてるわけないだろ!!
さあ、どうしようか。門を通りたい、だけど持ち合わせてないし、五千円なんてあっても払いたくない。
「あまり使いたくないんだけどなぁ…」
人集りから離れて、人影がない所へ移動する。
大きく息を吸い、息を止め歩き出す。
そして、堂々と人集りの間を抜けていく。
誰にも俺の存在は気づかれない
1人も俺のことを見ない。いや、
見れないの間違いだ。
なぜなら、今の俺は透明人間だから
何が原因でこうなったのか分からないが、俺は生まれつき息を止めている間は誰にも存在が気づかれないらしい。
いや、どちらかと言うと体が透明になっている、と言った方が正しいのか
物や人には普通に透明状態でもぶつかるし
ぶつかれば、何かがいるとバレる可能性はある。
だから余りこういう人気のある場所では使いたくなかったのだが、今回のような騒動が起きれば使わざるを負えないってわけだ。
周りに人がいないのを確認しながら、息を吸って吐く。
昔からこの能力は使うから、意外と肺活量には自信がある。まぁ、中学校の時は別に吹奏楽部にも特にこれといった部活には入ってなかったのだが
歩いている内に、今日から1年間お世話になる教室の前に出る。大きく息を吸って吐いて、緊張をほぐしながら扉を開ける。
扉を開けた途端、一人の女の子と目があった。巨乳だ。ボインちゃんだ。
変な目で見られないうちに目線をそらす。
「やあ、君もお金を払ったのかい?」
「え?」
他の男の子に急に話しかけられた。
ブレザーが良く似合う、爽やか系のイケメン君だ。
いかにもスポーツやってます、みたいなスマートな体型ながらも、ガッチリしている節々が見える。
「あ、うん」
質問に対して答える。
払ってないと言ったらどんな目にあうかあったもんじゃないから、適当に話しをつけておいた。
自分の生まれつきの能力の事もバラす予定はないし。
「災難だったよね、まさか入学式早々あんなのに絡まれるなんて」
イケメン君がはにかみながら喋る。
災難だった。僕もそう思う。誰でもそう思う。
「あ、急に話しかけてごめんね。僕の名前は『桜庭さくらば舜しゅん』」
「ああ……大丈夫、俺の名前は小鳥遊零次」
「零次君か!いい名前だね」
「そっちこそ舜なんて、いい名前じゃないか」
「なんの話をしてるの?」
お互いの名前を褒め合っていたら、その様子を見かねてさっき目が一瞬合った巨乳の子が話しかけてくる。
おっぱいに目が行き過ぎないように注意しながら話そうとしたら
舜が先に答えてしまった。
「自己紹介していたんだよ」
「ふーん、そうなんだ、舜」
「あの……二人はお知り合いで?」
とても初対面の呼び方だとは思えなくて、不意に聞いてみた。
「うん、同じ中学校でね」
「ま、そういうこと」
「ほら、自己紹介したら?」
イケメン君が巨乳の子に向かって自己紹介を促す。
巨乳の子は頷き、胸に手を置いて
「私の名前は『 目黒めぐろ渚なぎさ』よ」
と、自信に満ち溢れた目で自己紹介した。
ダメだ。巨乳に目がいって、話が入ってこない。
「ちょっと!話聞いてる?」
巨乳の子……渚が腰に手を当て、そのたわわに実った果実を押し出し上目遣いで少し怒り気味に聞いてくる。
まずい!このままではおっぱいに目がいってしまう!!
必死に目を逸らしながら、それっぽい返事を返しておく。
「ん?零次君 渚 時間だよ」
キーンコーンカーンコーン
大きなチャイム音の後に教室はより一層ざわめきを広め、急いで移動を始める生徒が見え始めた。
暑くて脱いでたブレザーの上を急いで着ながら、ふと思ったこと聞いてみる。
この学校は学ランじゃなくてブレザーだ。俺的には、ブレザーの方が好きだから良かったが。舜や渚は、どうなのだろうか
「舜君ってブレザーと学ランどっちが好き?」
「んーー僕は、ブレザーの方が好きかな……学ランはあまり好きじゃ無いんだ。堅苦しいっていうのかな?」
「後、僕のことは呼び捨てで良いよ」
舜はブレザーの方が好きらしい。
理由は俺と同じで、親近感が湧いてくる。
「渚……ちゃんは?」
「女子はあんまり変わんないから、別にどっちでもいいんだよ」
「そっか、あんまり変わらないもんな」
「私も呼び捨てでいいよ、高校になって『ちゃん』付けは、引かれるよ」
クスクスと笑う渚、笑うたび胸が震えている。ヤバイ。
そんな話をしていたら最後の方になってしまった。
急いで入学式の会場である体育館に行こうと、教室から出ようとしたら、渚に手を引っ張られよろめいた俺に耳打ちをしてきた。
「零次君っておっきい方が好きなんだね」
「え?」
「ふふ、じゃ行こっか」
……なぜバレた!?
目線や喋り方には物凄く気をつけたつもりだ。
『心』の中でしか思ってないはずなんだが……
あれか、昔から見られていたから少しの目線や態度でも気づくとかか。
いや、それでも初対面の男に対してそんな確証が持てると思うか?
スッキリしない気持ちで体育館に着き、学校の校歌と共に入場する。
椅子に座って後ろを見渡すと大勢の人が居た。
父親と母親らしき人が2人組で座っているところを見ると、息子または娘の晴れ舞台を両親が見に来てるところが多いらしい。
俺の親は海外で働いているから親はいないのだが
俺の目線に気づくとニッコリと笑って、手を軽く振ってくれた妹がいた。
普段こういう場には小学生は親同伴とかじゃないと入れないと思うのだが、家庭の事情を話せば案外どうにかなるものだな。
「ん、舜の親は来てるの?」
偶然にも出席番号がいい具合に重なり、隣の席になった舜に聞いてみると
「あぁ、壁際の1番前にいるカメラを持った母と父だね」