花
つぎつぎと失われるから
急がなければならない
リズムと旋律と歌詞の
紡ぎ出すような連音の
信じてという
まるでそれは
破れてしまった胸の底に
しんしんとふる闇が
暗く暗く夜空を憧れる
たった一つの星を見ている
唯ずっと見ている
憧れはもう遠く
悲しみさえ擦り切れてしまった
街は足元こそ明るくて
空は真っ暗に明るくて
星は一つもない
月は見えなくて
夜は乾いた足音だ
照明が闇を隠している
そうやって明日が軽くなってしまうんだ
その空洞に
多くの傷が渦巻くようにあり
通り過ぎる時が引っかかる
糸くずのように汚れのように
それでいて痕跡を残す壁画のように
螺旋状に昇るでもなく降るでもなく
螺旋条痕は銃弾に貫通力を与えるように
我らを抜けていく何か
この空虚な我らというメタファーの塊を抜けていくものは
意味か
それとも痛みという誰かの痕跡であるか
いずれにしても
個では捉えきれない彼方への飢えだ
ひとつの種が芽吹くとき
震え
喜び
届き
そして
開く
連続する断絶を耐え
途切れないことを予測する
様々なファクトで組みあがっている
まるで堅牢なモザイク状のドームの空
或いは濃密な関係性
意思的である
そして心地よさを追っている
ある曲線に沿う指数関数的悦楽として
命たちが伸びていく
光ある方へ
明るい方へと
そして
どうしても闇への憧れを失わず
滅びの哲学を乞うて
止まないノイズこそ
覆いつくすノイズこそ
刺すように驚かす鋭い刺激から救うのだ
鈍麻という静けさこそ
ある暴力から逃れる術となるのだ
遮光された海岸の景色のように
眩しすぎる光より逃れることは
不思議な穏やかさと優越を与えるだろう
そうして後に訪れる乖離感とは
そうだ
隠されていた姿である
誰もが本当は知っていながら
目を背けている姿である
つまりは
日常という曇り空を裂く光
もう無視出来ないことがあるだろう
なぜ昨日は消えてしまったのだ
なぜ今日は昨日と異なるのだ
そして明日とは何なのだ
時は過ぎゆくだけの亡者
我らは在るが故の苦しみ
高層建築の窓は眩しい
巨大で堅牢な約束された安定が
圧し掛かる頭上の楼閣道路は冷たい
花一輪生えることも許さないことを
きっと継続のための論理だというだろう
しかしそれは我らをも退ける冷たさだ
今更ながら命を
その温かみを
それは贅沢で傲慢であろうか
我らは自らを失いつつある時代なのだ
己を壊す前に
もっと
奥底まで見つめている視線を見る
暗闇こそ僅かな光を捉えるもの
最も苦しく
最も貧しいところからこそ
一つきりの光が見えるのだ
それは祈りである
確かに
しかし
乞う祈りではなく
貫く視線の明晰な光としての
意思よりもっと透明な
接触
手触りを求める手指の
確信する周囲環境との親和性
見えもせず聞こえもしないが
感じる予測
未来という今を
事実として受け入れること
そこに既存の裏切りはなく
既知の足枷はなく
ありふれていたかった希望もない
やがて全てが過去になり確定する
何時だってその連続としているが
過去に喜びはない
そこに何一つとして希望の余地がないからであり
全てが凍り付いた氷壁の中にあるからである
運命論はそこで死に絶える
後ろ向きのランナーは決して勝てないのだから
勝利とは最も前を向いたものに訪れるだろう
断崖を飛ぶ勇気こそ
愚者の輝きこそが
鉛色の海を黄金に染める
旭日昇るとき光が押し寄せる
闇は払われ
昨日は失われる
そこにメロディーが現れる
シンプルな
或いは豪華な
誰にとっても一つきりの
それぞれにとって一つきりの
旋律として
言葉が現れるだろう