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傘と恋する 共通① 蝙蝠と蛇の目

カサっていいなあ。


こうもり傘、ビニール傘、折り畳み傘、日傘、番傘など傘にはいろいろな種類がある。


物にもよるけど、お洒落でスタイリッシュだ。



晴れの日は日傘をさす。

理由はただひとつ、傘が好きだから。



「あ!!女子高生なのに日傘さしてるババアだ!!」

「やーいやーい」


落ち着け、キレるな私。小学生のひやかしだ。



「おはよー」

さすがに教室では傘をささない。


「はよ~」


クラスメイトに手をふり、席につく。


――――――――



「もうすぐ、漆色ししきの雨が降る――――」


異形の物等が、ざわめき、耳障りな咆哮を上げめた。

――――――



「あれ、雷…」

下校途中、門を出るときから、雨はふっていなかったが、天気が怪しくはなっていた。


降りだす前に、雨傘をさす。


これでいつ降っても大丈夫だ。



安堵した途端、七色の稲妻が私に迫る。


逃げなくては、そう判断したときにはすでに遅かった。



「あれ…私生きてる」

どういうことだろう。

雷にうたれたのに、痛みがない。

めちゃくちゃピンピンしている。



カツり、靴音がした。

誰かが後ろからゆっくりこちらに歩いてくる。


私は怖くなとて振り向く。


そこには黒いコートの青年がいた。


雨だというのに、傘をさしていない。

なのに、体はまったく、雨に濡れていない。

むしろ滴を弾いている。



「ワタシは蝙蝠傘の精霊“ヴァブ”」


「バブ?」

この人頭大丈夫?精霊とかなにいってんの。



「傘の精霊はワタシの他に、5体います」

「はあ、それがなんだっていうの?」


他の精霊はどんな傘なんだろう。

いや、傘の精霊がどんななのか考えるところだった。



「ある事情で、ワタシ達はこの世界にてアンブレイラの座を掛けて戦っているのですが」

「無視?」


傘の精霊がクルセイドバトルとか、意味のわからない事を言っている。


「そんなこんなで、【漆つの雷-ジセンダ】にうたれた少女を探しています」

「話きけ!!」


七の雷にうたれたってまさか私じゃないよね。



「おや、貴女の傘が金色に輝いている」

「なっなんでかなー」


厄介ごとには関わらないように、くるりとヴァブに背を向けて―――――。


「まってください!!」

「待たない!!」


己の出せる力を全て出しきり、なんとかまいた。



「みつけたぜ―――」

近くから声がする。


「誰!?」

シンプルな夏物の和服を着た長髪の男。

左目にかかっていて、片方の眼だけでもすごい威圧感がある。


まさか、この人も傘の精霊なの――――


「俺は蛇の目傘の霊魂“青巳そうみ

漆傘后なながき咲々(ささ)

お前の心臓を貰いに来てやった!」


この人なんで私の名前を――――。


青巳は傘を手に出現させて、私にふりかざしてきた。



「おやおや、関心しませんね

彼女は私が先にみつけていたんですよ」


傘がヴァブの足で蹴られ、吹き飛び、壁にあたってべしゃりと水を跳ねさせた。


「…この借りは必ず倍にして返す!」


青巳は高く飛び、ビルの向こうへ姿を消した。



「やはり、貴女でしたか」

「……アンブレイラってなんなの!?」


どうして命を狙われなくちゃいけないの。


「貴女は傘が好きですか?」

「好きだけど」


「―――私達は100年ほど昔に精霊になりました。その前はただの廃棄物で、気まぐれな神が憐れんで私達七つの傘を精霊に変えてくれたのです」


「ええはなしや……」


「あるとき神は言いました『人間になりたくないか?』と。

もちろん私達はすぐに頷きました。

すると神は言いました」



――――七色の雷に当たった物が、強く傘を愛する者なら、その愛を与えられた物は人間に変われる。



■2親切な紳士


「ククク……愚かな奴等め、つぶしあえ……オレの手のひら、もとい傘の上で踊れ!」


「ママーあの人傘だよ」

「しっ!見ちゃいけません!」


「いかんいかん、気を抜いたら一部だけ傘になってた……」

―――――



「あー雨降ってるなー」

教室の窓から外を見る。ざあざあと大降りだ。


「あれー」

「どうしました?」

「“折り畳み傘”がない『く……あ奴め、わしを裏切りおったな!』」

「時代劇ですか」


「まあいいや、購買でビニール傘でも買おう」


私は購買にいき、傘を買って、下校することにした。


あそこにパン屋がある。丁度小腹が空いたので買い食いしよう。


「あれ、売り切れ?」


生クリームとカスタァドの入ったパン“ダブルクレームで板挟み”がない。


「ダブルクレームで板挟みは売り切れました……なんですかこの商品名」


落胆していると別の客がすれ違って来た。


「ダブルクレームで板挟みください」

クリーム色の髪を縦ロールにした背の高いスーツの男性が、私の食べたかったパンを頼んだ。


「もうしわけありません。売り切れとなってまして……」

「困りましたね、今日中に用意してもらえませんか?」

「それはちょっと」

「……これならいくらでもありますよ」


「ダブルクレーム作れ!!今すぐだ!!」

男性が分厚い札束をちらつかせると、店員はそそくさと厨房にいく。


いいなぁ。個くらいわけてもらえないかな。


→【待ってる】

【帰る】


パンが出来上がる。すると縦ロールの男性が近くにやってきた。


「お一つどうぞ」

「あ、ありがとうございます!!」


財布を取り出そうとすると、止められた。


「お代はいりませんよ」


パンを私の手にのせて、店を後にした。


「いい人だったなあ」

「なんだったんだろあの髪型……」



「あのさ、いつまで私についてくる気?」

「私は貴女を護ると決めましたから」


ヴァブは傘の仲間なんだし、間違いなく私の心臓を狙いに来ている。

油断させて後ろからザックリとか企んでいるに違いない。


「……家までついて来るの?」

「では傘に戻ります」


―――この姿なら私の好きにできるしいい。ヴァブは黒い蝙蝠傘の姿に戻った。

――――ってなにを冷静になってるんだろ。人が傘になったけど傘が本体で!?


「……傘って誰が使ってたとか覚えてるんでしょ?」

《はい》


「じゃあ無くなった傘とか探せる?」

「精霊やツクモ神の類いが宿っていれば可能かと……」


「そっか……」


―――父さんの傘、どこにいっちゃったんだろう。

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