祀られる立場からするとひたすらいたたまれません
はい踊り子さんも音曲奏でてた人たちもみんな一様にぴったり静止してこっちをガン見です。
あ、うん。どこからどうみても見事な「やっちゃったー」ですね。
わたしが調整した龍笛の楽師さんなんて、レッド、オレンジ、イエロー、ホワイト、ペールブルー、ダークブルーと、目で終えるスピードできれいなグラデーションの顔色を見せてくださいましたよ。あれって芸人魂だよねきっと。
ぱんっ。
すがすがしい柏手が静寂のしじまを破る。
みればクールビューティ系イケメン神官…長いんで氷の神官とかでいい?中二っぽいかな。やわらぎメンマな穏やかイケメンは、撫子神官とかどう?春の神官とかいうより分かりやすくてよくない?まあ普通に紫神官と緑神官でいいと思うんだけどさ、次の儀式とかで衣装変えてきたらその都度色の名前で呼ぶのもなー、とか思ってると、静かな拝殿に氷神官の朗々たる美声が響いた。
「かしこくもあてなるくさぐさのたから、つきづきしとくさのおんかたな、そがあらみたまあらはれいでて、くしみたまけがれはらひて、にぎみたまそをばいつきて、さきみたまそをばことほぎたまふ。おおんかたなかくよさしたまへば、かくあれとぞかし、さにあれば、あはれ、つつしみてまおさく、まほなるしらべきこしめしたまへと、かしこみかしこみもまおす」
さっぱり意味が分かりませんが、古文の知識総動員すればなんとなく日本語に見えなくもない謎言葉。それこそ祝詞。またの名を子守唄とぞまおすらし。とりあえず古文選択しといてよかったと思ったひとときでした。…や、古文選択しててもあれは謎言葉には違いないのだけれどね。
紫神官が祝詞を唱え終わって深々と一礼して一歩下がると、凍り付いていた音楽と舞いが再開された。
うん、今度はね、さすがに自重しましたとも。いや自重する必要ないくらい完璧な音楽だったし、きれいな舞でした。眼福。
そしてふわっと視界がホワイトアウト。
なにがおきた!?
と思う間もなくなんか固いものの上に載せられてどっかに運ばれた感覚。あれ~?神事まだ終わってませんよ~?
刀身を覆っていた布が取り払われて視界がクリアになりました。
右に仏頂面を消したことで無表情になり、より人外っぽくなった紫士官。
左に顔は笑みの形ながら、泣きぼくろがセスクィなたれ目が笑ってない緑神官。
その後ろには折りたたんだ一反木綿みたいに、ひたすら平べったくより地に近くをモットーに平伏してみましたという感じの親方。
ええ空気読める子はなにやらしでかしてしまったんだなと瞬時に理解です。
おとなしく、気持ち背筋を正して軽くこうべを垂れる感じで。正座して説教効きますの殊勝気な姿勢。実際には正座どころか寝そべってるわけなんですけどね。刀だからね。
沈黙。
無言。
静寂。
いろいろ覚悟してたのに雷が落ちてくる気配が皆無。それが逆に恐ろしくて下手なこと言えない雰囲気。チラ見した神官ズの表情も微動だにしてないもん。
怖いです。
調子に乗ってました。
本当に反省してます。
だからこのいたたまれない場をだれかどうにかしてやってくれー。
たのむー。
神頼み―。神…あ、わたしそいえば神刀?
助けてプリーズわたし。
神官ズの精神攻撃。◀神刀に混乱の状態異常ステータスが付いた。◀セレクトボタンでスキップ
四角囲みのメッセージウインドウが開いた気がした。