ぷるぷるチワワ状態のマッチョども
おっと、自分に新しく開花した能力に感動しすぎて、あやうく周囲の人の反応を見るのが遅れた。ていうかここがどんな世界かわからんけど、自分たちが打った刀が唐突に歌いだしたら失敗作って思われるかも…。
むっさい鍛冶師の師弟の様子をそっと窺う。よく考えるとものであるわたしが五感を有しているのは謎なんだが、これもひとつの転生チートと思うことにしよう。
そして、師弟はというと。
なんかいわゆる土下座っぽい姿勢でチワワみたいにぷるぷる震えていた。
歌うたったら土下座された。前後関係が分からんよ。ひとまず情報収集できるかな。歌を歌えたなら会話も可能かもしれない。
「わたしを作ったのはあなた方ですか?」
「っ!ひゃいっ!」
親方の方がひっくり返った声で肯定する。ばね仕掛けのように返事の時だけ姿勢をただし、言葉を紡ぎ終わると再び先の五体投地に戻る。
…やりづらい。
そもそも刀剣の発声器官ってどういうからくりなんだろう。そのあたりも含めて製作者たちとゆっくり話をしてみたいんだけど…。なんだか必要以上にこちらが気を遣わなければ、謎のバイアスがかかってしまう気がする。
さて、このふたりをどうにか正気に戻して事情を把握しよう。
「まずは、わたしを生み出してくれたことに感謝します」
下手に出たわたしをふたりは驚いたような鳩豆な表情を浮かべる。
「い…いいえ、おいらはこれまでいくつも刀剣を打ってきました。そのいずれも出来には十分満足しております。…しかし、」