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人斬りの道具が奏でるメロディ

 しばらく呆然としてたので現状認識が遅れてしまった。というかむしろ積極的に現実逃避したい状態だ。

 いやいやだって普通に考えたらありえないよね?わたしがツッコミ体質だったらすでに何回か「なんでやねーん!」って絶叫していたと思う。小説の世界だから…って納得して生きるラノベの主人公を今更ながら尊敬する。この精神をがりがりやられる感覚はハードモードにもほどがある。

 けど、泣いても笑ってもいまのわたしが日本刀の刀身で、わたしを打った鍛冶師とその弟子がこちらをまじまじと眺めている現実。

 うん、むさい。

 作ってくれた恩義は感じるけどね。

 とりあえず作ってくれたことに感謝の念は表したい。筋を通したらちょっくら自由になりたい。一刀身の身でそれがかなうのかどうかはわからないけど。

 まずは「ありがとう」の一言でも言うべきだろう…と思ってはたとわが身を思う。…わたし、無機物じゃん?しゃべれるの?刀身にはふつう目も口も鼻も耳もないよ。ただ、まわりを見ることができたので、もしかするとわたしは刀身であるとどうじにまだ人としての能力を有しているのかもしれない。

 試してみるか。

 目を閉じて、人間時代の発声をイメージする。なんだか微妙な違和感はあるけれど、

「らー、らー、らー」

 hi Cハイシーが嘘のように滑らかにピンと力強く発声できた。

 あらびっくり。

 肉体という不完全な楽器から脱して一個の無機物になったせいか、狙った音階が正しい弦をはじくように見事に再現される。

 これは…もしかしたらいけるんじゃないだろうか。有名な某オペラの夜の女王のアリア。人間離れした技巧のあのコロテューラ。 DCDE FFFC GGGC AFAc fcdB cFAc fcdB cと息つく間もなく展開される魔性の音階。

 結果から言えば初音ミクばりの正確さで八分音符の連続をやすやすと再現してのけた。

 日本刀の歌唱力、…ぱねえ。

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