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ウルファス物語  作者: ろーき
第4章 建国編
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空から見た王都は輝かしいものであった

「あれが王都ですか、随分四角い街ですね」


王都は碁盤の目の様に区画整理したので、上空から見ると確かに四角い街に見える。ちなみにソラも俺も正装している。俺は鎧姿だし、ソラは仕立ての好いドレスである。


「気に入らんか?」

「いいえ…見た事もないほど大きな町です…お城も綺麗な白磁みたいでとても気に入りました」


どうやらシアンはアッカル樹脂を上手く使ったらしい。泥の城はすっかり立派な白亜の城に変貌していた。アッカル樹脂は大河の向こうのザコクナン樹海で伐採したアッカルという大木を搾った液体である。アッカル樹脂は冷やしても燃やしても常にどろどろの物体だが、魔術の雷を使うととても硬くなり、壁の塗料に最適な物体になるのだ。

それを壁に塗りたくって城の外観を整えるというのは前々から考えてはいたが、魔術師が国に来ないせいで実行できずにいた。自分でやっても良かったが、国民に雇用を造りたかったのだ。今は格好つけのために急いで整えたが、まぁコロシアムにも同様の工事がいるし他にも公共工事の案件は山と残っているから大丈夫だろう。

なお大魔術師マによればアッカルとは古代人が品種改良した木らしい。確かに自然の物体とは思えない性質を持っている。まぁ兎に角便利な物体だと思っておけばいいのだ。

王都の入り口辺りに到達するとシアンの使い魔が肩に留まった。


『ご苦労だったなシアン。何かあったか?』

「ナイソウモカンリョウシマシタソレトソウコノシシャガウンコシタイソウデスガイカガシマスカ」


本当に聞き取り辛いな。大変優秀なので助かってはいるのだが…それよりもウンコか、どうしようかな。倉庫の中を不衛生な状態にしたくない。


「分かった。俺が直接会うとしよう。すまんがソラ、俺は仕事をするので下に下りるが…どうする?」

「お仕事の邪魔でなければ、妾もご一緒してもよろしいですか?」

「断る理由は無いな」


リュウに指示を出して、倉庫の前に下りる様に指示を出す。象とババクと騎士はどうしようかと思ったが、倉庫の前の広場に下ろす事にした。騎士はまだ起きないが、大丈夫だろうか?

リュウからソラを抱えて下りる。そしてソラを降ろして手を繋いで倉庫の中に入る。ソラは興味深くきょろきょろしている。


「大きな倉庫ですね。どれ位掛かったのですか?」

「ロボットを使って1ヶ月だな。金は使ってない」

「そんなに早く出来るのですか、凄いですねぇ~」


倉庫に入ってすぐの柱には使者が立ったまま繋がれていた。幸いまだ漏らしてはいないようだ。ちょっとホッとした。しかし今にも漏らしそうなほど苦渋の顔である。

繋いだ彼女の手が動揺したのが分かった。


「知り合いか、ソラよ?」

「…ソラヴェインの家臣に似た人が居た様な…」


手と表情からその言葉に嘘が混じっていると読み取れた。夫婦に嘘は付き物だが、過度の嘘は関係の冷える一歩である。後で聞いておくとしよう。


「ソアラリエレン様…何故ここに…」


使者は随分驚いた顔だ。びっくりして漏らさなくて良かった。今掃除するのは俺しか居ないのだ。さて、わりと聞き捨てならないことを言ったがどうするかな。


「使者殿はソラヴェイン出身のニラガ国民なのか?それとも騙りか?」


使者は震えている。漏らしてほしくはないな。

それにしても騙りなら騙したのはこの国だけでは無くニラガも騙したことになる。どっちから殺されても文句は言えない。


「ソラ、君からも正直に話すように言ってくれ」

「この方の命をお助けしてくれますか?」


神妙な顔をしているので、頷いてみせる。


「言葉でお返しください陛下」

「分かった。この男の返答によっては処分を軽くしよう」

「もっと具体的に願います」


えらく食いついてくるな。王の言葉の重さと信義を確かめる為に聞いているんだろうか?さて…どう返すのが好感度上がるかな?


「死刑は無しだ。ただしニラガの使者を騙ったのなら罪はこの国だけの物では無いからな。あくまでも俺が殺さないというだけだ」

「分かりました。ウルファス国王陛下の御厚情に感謝いたします。トルング士、何もかも話してください」


トルングという魔術師は堰を切ったように話し始めた。なんでもニラガの使者というのは本当らしい。ソラヴェインが滅ぼされた後、伝手を頼ってニラガに就職したらしい。そして最近になって広大な畑が出来た国の視察に来たそうだ。この国が無礼な返答をしたと偽ってニラガにこの国を滅ぼさせる心算だったらしい。そしてついでに倉庫の中身を焼こうとしたそうだ。彼をそうさせたのはソラヴェインを俺の生家であるエクター王家に滅ぼされた恨みという奴だろう。まったく剣呑なことである。シアンに見張らせておいて正解だった。


「結構なことだ。さて、その話を家臣にしたらお前を殺せというだろうな、どうしようかな?」

「陛下…どうぞトルング士をお助けください…この通りです…」


ソラは手を繋いだまま土下座同然の格好で俺の足元に縋り付いて懇願した。美女のこうした姿には実に興奮する。


「ソアラリエレン様っ!いけません!憎きエクターに連なる者に…そのようなことをなさらないで下さい!」

「そうだ。そんなことする必要ないぞ愛しいソラ。この件は内密にするとしよう。使者殿、さっさと帰国したまえ」


アイテムボックスから剣を取り出して投擲して使者の縄を切ってやる。使者は感謝せずにいきり立っている。それにしてもトイレは大丈夫なんだろうか?それだけが心配である。


「下郎っ!ソアラリエレン様を離してもらおうか…!」

「その必要は無いな」

「きゃっ♪」


ソラを抱き上げてやる。使者は随分驚いている様子だ。


「こう言うわけだ。察してくれ」

「ソアラリエレン様っ!お逃げくださいっ!」

「逃げる…ですか、その必要はありません。トルング士、妾は嫁入りします。妾の年では少し遅い気もしますがこれも王族の義務です。とはいえウルファス様を愛しているので、妾にとっても都合のいいことですが♪」


ソラは俺の頬に口付けをした。トルングは驚いているが、次第に落ち着いていった。どうやら波が去ったらしい。


「…ウルファス王、ソアラリエレン様に傷を付けたら許さんぞっ!」

「…まぁ他人には絶対に傷付けさせない心算だ」


使者は苦虫を噛み潰したような顔で倉庫を出た。投げた剣をアイテムボックスにしまう。ソラは俺があんまり早く魔術を発動するので驚いている。

それはさて置きソラに聞いておきたいことが有る。


「ソラ?最初あの男を知らない風だったが、懸命に助命を願ったのはどういう訳だ?」

「あの人は…昔王家の家庭教師だったのです。知らないふりをした方がよかったかと勝手に思い込んじゃいました♪」


腕の中のソラは悪戯っぽい顔で舌を出している。可愛い奴め。


「それにしてもトルング士は帰しても大丈夫かな?今回彼は何の成果も得てないんだが処刑されないだろうか」

「大丈夫だと思いますよ。ニラガも成果を期待しているなら生え抜きの者を送り込むでしょうから」


確かに、彼がどの位の期間ニラガに仕えているのかは分からないが、結局の所外様だ。恐らく単なる調査員として派遣されてきたのだろう。戦争を起こすほどの裁量を持った使者では無さそうだ。

用も済んだので倉庫を出る。倉庫の外には回復したらしいソラヴェインの騎士が驚いた顔で立っていた。


「姫!?その格好は一体!?」


そういえばお姫様抱っこの格好だったな。降ろそうかとソラに聞いたら拒否された。


「ポポミン、妾は嫁入りします。正式な結婚はまだですが、この国の王に嫁ぎます」

「そいつがっ…いえ…そのお方が…噂の平原皇帝陛下。道理でお強い訳です」


ポポミンという面白い名前の騎士は、俺の前に平伏した。だが表情から言って俺に好い感情を持っていない風だ。


「平原皇帝陛下」

「俺はそんな名前じゃない。このウル太平国の王、ウルファス=ガシャラムだ」

「ではガシャラム国王陛下、ポポミン=ドルンの弓をお預かり下さい」


そう言ってポポミンは平伏したまま両手で持った弓を掲げた。ソラヴェインの儀式には疎いので何をするかよく分からない。それに手は今塞がっているので弓を受け取れない。知らないことは人に尋ねよう。聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥という奴だ。


「ソラ、俺はソラヴェインの儀式に疎いので何をすれば良いのか教えてくれ」

「ただ御言葉を返してください『我が敵を撃ち滅ぼす為の弓はその手に持っておくが善い』と」


頷いてその言葉を言うとポポミンは弓を背負うと立ち上がった。良く分からん儀式である。


「敵は私が撃ち滅ぼして御覧に入れます」


頼もしいことだ。ちょっと目に俺に対しての殺意があるようだが、まぁ気にしても仕方ない。大方憧れのお姫様を取られて嫉妬しているのだろう。しかしなんでこんな美人に手を出した奴が居ないのやら、ソラは普通に処女だったが、経験が無いのが不思議なほど美人だ。もしや地雷女を踏んだんだろうか?まぁそれも好いかな。綺麗な地雷というのも有りだろう。

それはさて置き儀式が終わったのだからポポミンは俺の部下である。命令しても構わないはずだ。


「分かったポポミン卿。では最初の仕事を申し渡す。倉庫前広場で象と…」

「メカチャです」


腕の中のソラに口を挟まれた。象はそういう名前らしい。


「象の名か?とにかくメカチャとババク…」

「バホンオです」


また口を挟まれた。どうでもいいがメカチャの時は怒った声色だったのにバホンオはそれほどでもない。確かにバホンオは気持ち悪いからな。


「兎に角だ、寝たままの動物を見張っておけ。これを渡しておくから、誰かに尋ねられたら王命だと言っておけ。その割符が王命の証拠だから無くすなよ」


ポポミンにアイテムボックスから一枚の割符を取り出して渡す。恭しく受け取ったが、表情にはあまり尊敬の念が見えない。その内裏切りそうな奴である。まぁ女を抱えたまま臣下と話す君主は裏切られても不思議ではないかもしれない。


「では任せたぞ、メカチャとバホンオをどうするのかは後日決めるが、決定するまで世話を頼む。足りない物があったら倉庫番に頼め。今は居ないがいつもは居る」


そう言ってソラと共にリュウに乗る。流石に何時までも抱えたままはどうかと思ったが、ソラが両腕を俺の首に回したので離せない。離す理由もないので離さない事にした。リュウを飛ばしてコロシアムに向かわせる。


「さて…ポポミン君は俺を殺したいみたいだが…どうするかな?」

「もしもウルファスに弓を引く様なことがあったら殺しても結構ですよ」


真顔で言ったよ。実に怖い女である。一応シアンの使い魔にポポミンを見張らせるよう指示を出す。余計なことをしないといいのだが。

コロシアムの上にリュウを滞空させて様子を見ると、まだトーナメントは終わっていなかった。リュウをコロシアムの壁に着地させる指示を出す。群集は俺が帰ってきたので沸いている。観衆も午前中より増えている。農作業を切り上げた農民が見に来たのかもしれない。

壁の上からトーナメントを見ると午前の部より随分張り切って試合をしているのが分かる。取り立てるのが本当だと分かったから気合を入れているのかもしれない。


「ソラよ、お前を紹介するのは何時にしようかな?」

「突然妾が出て行っても家臣を蔑ろにしていると思われるかもしれませんから、重臣と相談なさってからの方が良いかと存じ上げます」


確かに突然生家が滅ぼした国の王族を連れてきて結婚しましたでは、家臣を蔑ろにしているととられかねない。あまり強引にやると人望が失われる。ただでさえ少ない人望が失われると拙い。

別に王など他人にやらせてもいいが処刑とかはごめんだ。俺は強いから問題無いが俺の愛する者達に石を投げさせるわけにはいかない。やはり仁王として生きるのが一番善いだろう。周りの為にも俺自身のためにも。


「相談の結果によってはお前との結婚に反対されるかもな」

「ソラヴェインの民を受け入れてくれれば結婚できなくても構いません。ただウルファスとはずぅっと一緒ですけどね」


ソラは更に密着した。実に心地良い。綺麗で手触りの好い髪を撫でながら優しくソラに語り掛ける。


「この国はどんな人間も受け入れる。但し人に迷惑をかけたら追放か処刑するがな」

「ウルファス…ありがとう。ソラヴェインの民も十年以上の流浪の日々からやっと解放されます」


流浪の民を生み出したのは俺にも責任が無いでは無いが、かといって俺は時を戻せる能力は無い。出来ることをするしかないのだ。

闘技場ではチオの育てた兵士が活躍している。確かインという有望の若手だ。俺の考えた訓練メニューを実行すれば三ヶ月で一端の軍人に成れると思ったが、その考えはそこそこ正しかったらしい。見込みのある奴を選んで訓練させたが、それにしてもまだ訓練は一ヶ月強の筈だ。なのに並の騎士よりは強いらしい。蜥蜴の紋章の描かれた盾を持った騎士は武器を持って一ヶ月のインに槍の突き合いで負かされたのが見えた。


「あれと同じのが百人か、エクター奪還の日も近いな」

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