大空での初デートは互いに高まった
「私がソラヴェインの軍勢に対応しましょう陛下」
「いえウル様、私に行かせて下さい。リュウ様をお借りしてまずは確認だけしてまいります」
「マスター・ワタシガミナゴロシニシマス」
三者三様に俺のことを思ってくれているらしい。いい女に囲まれて幸いである。
「シアン、ソラヴェインの軍勢はポイント1の外れだろう?なら暫くは放っておけ。あの周辺には農民も居ないから大丈夫だ。畑を焼きそうなら止めておけ」
ポイント1はこの街からみて一番北西の場所だ。遠いので現在農作業はロボットのみにやらせている。徐々にロボットと人間の交代をさせているが、町の周辺の田畑は人間に交代させたが、まだまだ遠い所はロボットにやらせるのだ。何せ田畑はあっても耕す人間は少ないのだ。暫くはロボットにやらせるしかない。
ポイント1は馬なら五時間は掛かる距離だし、人間ならその倍以上かかる。とりあえずトーナメントが終わってからでも問題ない筈だ。まぁ午前の部の勝者を表彰したら向かうことにしよう。
「そんなことよりもトーナメントが終わったかな?おーおー騎士どもが飛び入りに文句を言っているな」
「陛下!すぐにソラヴェインに対する備えを…」
「分かっているさ、俺が出る。場合によっては皆殺しにするつもりだ。さて、その前に勝者を労うとしよう」
アイテムボックスから今の身体に合う様に誂えた鎧を取り出して装備する。全身に蒼い鎧を纏い、最後に大きなV字の角飾りのついた兜を被る。剣や槍は必要無いので取り出さない。
「では行って来るぞ。表彰が終わったらリュウに乗ってポイント1に行くから、エレノアはソンショウでついて来い。ハレは念のためここで待機しておけ、コロシアムで揉め事が起こったらその時はチオを手伝え。シアンは引き続き監視を行え」
「陛下の御心のままに」「分かりましたウル様」「カンシゾッコウリョウショウ」
展望室から闘技場に跳び下りる。騎士も民衆も大いに驚いている。
「陛下!どうされたのですか!?」
「チオ卿、トーナメントは一段落したのだから、午前の部で優秀な成績を残した者を労いに来たのだ。君と君は実にすばらしい活躍だったな」
山賊とトマの氏族の騎士は俺の前で膝をついた。山賊の方は作法には明るくないらしい。トマの氏族の騎士の方は流石に手慣れているらしく完璧な貴人の作法だ。
「二人とも名は何と言うんだ?」
「おれ「わたし」は」
「あぁ…一人づつ言え。それじゃあ最初に乱入した君が名乗ってくれ」
そう言うと山賊の方はすぐに立ち上がって嬉しそうな顔で俺を見下ろしている。チオも他の騎士も怪訝な目で山賊を見ている。無礼な奴だと思っているらしい。
「あっしは…」
「無礼だぞキサマっ!陛下の御前だぞっ!」
「気にするなチオ卿、今は俺が彼に敬意を示す時だ。さっ、君の名は何と言うんだ?」
「へへぇ、王様。あっしはリバウってもんです。行商の護衛で食いつないでいたんですが、前から良い暮らしがしたかったんでさぁ」
そう言ってリバウは頭を下げた。余り丁寧なお辞儀ではなかったが、誠意の伝わるお辞儀だ。
「それでこの大会に出たのか、では君を召抱えようと思うが私の下で働くか?」
「もちろん。あっしは以前から優しい王様の下で働きたかったんでさぁ」
「よかろう。チオ卿に従って動け」
「へ?王様の部下には成れないんで?」
「しばらくはチオ卿の下で学べ、それが終わったら将軍として働け」
周囲の騎士はどよめいている。リバウは感激して平伏した。将軍と言っても兵士を預けるとは言っていない。早とちりの多い連中だ。使えないようなら閑職にでもまわすつもりだが、この時代においては指揮能力よりも個人の武勇の方が軍事的には役に立つので先程の実力を常時出せるなら将軍でも文句はない。あくまでも俺に従っていればの話だが、俺のことを尊敬しているような目なのでちょうど良い手駒になるかもしれない。
「さて、次は君だな。名は何と言う?」
「この世で最も偉大な陛下、私はトマの氏族の傍流でございます。名はデキン=トマ・トトンと申します」
「ふむ、王都に攻め入った派閥ではないようだが、3年前はどこに居た?」
「はるか西方で修業をしていました」
「卿がニラガの使者殿が紹介した騎士か?」
デキンは首を振って否定した。
「違ったか。チオ卿、使者殿の紹介した男は居ないのか?」
「すぐに負けたようです」
「そうか、それは残念。ではデキン卿、私の騎士になるかね?」
騎士らしい沈黙で答えたので、以前ボターにされたのと同様の儀式を行う。最後に剣を渡してやると大いに喜んだ。
「王様、あっしにはくれないんですか?あっしはそいつと互角でしたよ?」
リバウは目ざとい男の様だ。別途に賞品は渡すつもりだと言うのに贅沢な奴だ。俺が剣を渡すのはあくまでも支給という形だ。まだ騎士ではないリバウには渡す理由が無い。
「将軍になったら何かくれてやる。頑張れよ。デキン卿も将軍に成ったら俺の宝物を1つやろう」
「へへぇ~楽しみにしておきます」「…こいつ。わが主君たるウルファス国王陛下、必ずやこの男よりも早く将軍になってお役に立ってみせます」
「二人とも頑張れよ。さてチオ卿、俺は少し外に出てくる。二人には賞品を渡しておけ。午後の部も上手く執り行えよ」
チオに襲撃が分かるように右手で右肩を叩くサインを出す。チオは察したようだ。さて、時間は掛かったがすぐにリュウを呼ぶとしよう。コロシアムの壁の上に待機させていたリュウに指示を出し、俺の上に来させる。跳躍してリュウの上に乗ると歓声が起こった。たかが四m跳んだだけだが、冷静に考えると普通の人間には出来ないのかもしれない。どうも最近常識を忘れている気がする。
「では諸君、私は空から全ての事を見守るとしよう。暫しの間お別れだ」
でかい声で叫んでリュウを飛びあがらせる。コロシアムは大歓声である。だがコロシアムは上から見ると茶色いだけで全く美しくない。やはり舗装しておくべきだった。人間の手でやらせたかったが、あまり威厳の無い建物というのも良くない。やはりトーナメントの前に外装工事をやっておくべきだったな。夜も寝ずに働いていれば終わっていたというのに…我ながら怠け者だ。
コロシアムの外には続々と人が集まってきていて、入り口のアガトが四苦八苦しているのが見えた。
「アガトめ…やはり使える男だな。後で褒めてやろう…ついでに何か与えるかな」
リュウを飛ばしてポイント1に向かった。一時間も掛からずに到着したが…あれが軍勢?
「シアンよ、あれを軍勢と呼ぶのか?」
肩に留まらせていた使い魔に声をかける。
「チガイマシタカ?」
「あれは…騎乗動物に乗った騎士と象が一頭だぞ」
「ゾウハタテモノヲセオッテマス」
「確かに幌を背負ってるが…あれに詰め込んでも十人くらいだ」
やはりシアンはまだ判断能力が未熟だ。軍勢は騎士が1人と象…濡れた様な黒い毛に覆われた巨大な象である。前世知識の図鑑のマンモスとは趣がちがう象であう。物理攻撃を反射してきそうな見た目だが、魔物ではないはずだ。
「シアン、エレノアに戻る様に伝えろ。俺だけで対応できそうな規模だとな。軍勢は象と騎士だとも伝えておけ」
「リョウカイシマシタマスター・ソレトシシャガソウコヲヤコウトシタノデホンタイガシバリマシタ」
「よくやったシアン」
声は聞き取り辛いが判断能力はそこそこある…のだろうか?
リュウから跳び下りて、騎士の前に着地する。騎士の方はババクという騎乗動物に乗っている。ババクとは地球でいうパラケラテリウムという絶滅動物に似た見た目の生物だ。大きさは馬ほどだが、二本足で立っている前傾姿勢で全く毛の生えていない不気味な生き者だ。輸送能力は低いが長距離を行くには馬よりも便利らしい。四本足の方が長距離は得意そうなものだが、何故か二本足のババクの方が得意らしい。生物の不思議と言う奴だ。
騎士の鎧は胸当てだけであり軽装に見える。ソラヴェインの騎士は軽装で素早い動きで弓を使うそうだ。兜をかぶっていないので顔がはっきり見える。濃い紫色の髪色はソラヴェインの王族に近い血統である事を示している。
中々濃い顔のイケ面である。年は…人種が違う所為かよく分からない。年上なのは間違いないだろうが二十才にも見えるし四十才にも見える。彼は突然現れた俺を警戒して弓を構えている。
毛の生えた象の背負った幌には確かにソラヴェインの紋章が描かれている。これでシアンはソラヴェインの軍勢だと認識したらしい。中には人の気配があるが出てくる気配は無い。
「さて…そこな騎士殿。私の国に何用かな?」
「貴様の国だと…?」
「卿の立っている道路は私の造ったものだ。この辺りは全て私の手の者が開拓したのだから私の国と言っていいだろう」
今の時代において国とは曖昧なものだ。国と主張すれば例え荒野であってもそこは国である。俺が開拓したところであっても他の人間が国と主張すればそいつの国である。認める気は無いが、国とはそうした幻想である。そもそも星の表面を区切って国だとか領地だとか言うのは結構アホらしい気もする。
とはいえ俺の下にある道路は『メイク・ロード』という魔術で造った黒い石の道路である。俺の造ったものは俺の物だと主張しても良いだろう。
「ここはわがソラヴェイン王国の領地だ!勝手に我がものにするなエクターの小僧!」
領土問題は良くあるものだ。開拓してないところでもこう云う事はある。それにしてもよく俺がエクター人だと分かったな。髪の毛は出ていないのにな、肌は一部出ているからそれで判断したのかな。
騎士は矢を撃ってきたので、殺そうかとも思ったが、安易な事は避けておきたい。矢をかわしてババクの足元に接近してババクを引っくり返す。ババクは1トンも無いので簡単に動かせる。我ながら大層な力だ。
「ばか力がっ!」
騎士は咄嗟に跳び下りたようだ。ババクは引っくり返したが怪我をしない様に丁寧に転がした。上手くいったのは意外と言えば意外だ。足の一本くらい折れるかと思ったが、やはり俺は才能にあふれているらしい。
「ほう…なかなかやるな。もしやトーナメント参加希望者か?」
「何の話だ?」
「ふむ…俺の問いに答えてくれると嬉しいのだがね。卿はこの地の食いものを奪いに来たのか?食糧は売っているし少しなら配給するぞ」
「問答無用っ!」
再び騎士は矢を放つ。さっきよりも近いので到達するまで1秒も無いが全てかわせたが中々の腕だ。エレノアでも防戦一方になるかもしれない。だがハレなら魔術が使えるからハレには勝てないだろう。遠距離攻撃ならば弓より魔術が強いのだ。
「ふむ…話は要らんか…ならば『サンダー・ショック』」
マーリンを取り出して一筋の稲光を騎士の足に撃つ。心臓や胴体を狙うと心停止するかもしれないのでこうして足を狙う。
「グアッ!?」
しかし騎士は気絶してしまった。スタンガンは気を付けて使おう。騎士の傍に近寄って生死を確かめる。呼吸もしているし問題無い。
それにしても象は全く動じる気配が無い。よく訓練しているらしい。ソラヴェインが崩壊してから12年以上経っているはずだ。どうやって象を訓練していたのだろうか。
「…そなたは何者であろうか?」
美しい声が象の上から聞こえた。声が美しいからと言って美人とは限らないが、一応兜を脱いでマーリンをしまってから礼を返す事にした。
「高貴なる御方よ、私の名はウルファス・ガシャラムと言います」
「…知らない名前です」
「それは残念。私はこのウル太平国を治める者です」
「その金の瞳に黒い髪…貴方はエクター王族でしょうか?」
幌の中から美しい女が現れた。褐色の肌に赤紫の髪…この世の物とは思えないほどに美しい女である。堪らなくなったので、象の頭の上に跳び乗る。
「きゃっ!?」
美女は驚いて尻餅をついてしまった。豪奢な服に隠された胸は実に大きい…ハレ並である。腰が細いのでデブではないが尻も大きい。実に好みだ。足元で暴れる象の揺れが気にならないほど美しい。
「失礼…貴方があまりにもお美しいので、考えるよりも先に行動してしまいました」
かなり無礼な行動だが、許してくれるだろうか。
「ぶ…無礼者!こんな…きゃっ!」
足元の象は俺が跳び乗った所為かやたら暴れている。俺の方は立ちながらでも安定しているが、美女の方は今にも堕ちそうだ。
「失礼…」
「なっ…何を…!?」
美女を抱えて空を飛ぶリュウに跳び乗る。象は暴れて騎士を踏みそうになっている。
「落象しそうだったので助けたが…余計なことをしたかな?」
「余計なこともなにも…きゃ!?どこを触って…んっ!」
いかんな、俺は美女に触ると触らなくても良いところまで触る性癖が有る。かと言って今手を離すとリュウから堕ちて大惨事である。美女を減らすのは罪なことなのでしっかりと抱える。
「離しなさいっ!無礼であろう!」
「暴れないならすぐに離しますよ」
「ふざけるなぁ!突然こんなことを…!妾は良人となる者以外に身体を許さぬっ!」
舌を噛もうとしたので、素早く篭手を脱いで右手を噛ませて防ぐ。身体を完全に制しているので動けはしないが、少々面倒だ。言うことを聞かせるためと気絶している騎士から念のため離れるためにリュウを空高く飛ばす事にした。
「ふが…ふがぇ!?」
右手は美女の涎にまみれている。リュウはグングン飛び上がって平原を一望できる所まで来た。腰を落ち着けて美女を押さえ込む事にした。
「ふぅふぅ…」
「高所恐怖症では無かったかな?まぁすこしは落ち着いたかな?」
「はひゃへぇ…おほへぇ…」
「お前は俺の物だ。もう離さん」
俺はやはり傲慢になっているかもしれない。未婚らしいが恋人がいるかもしれない女にこんなことをするとは以前の俺は考えもしなかったかもしれない。
美女の髪を左手で撫でながらそんなことを考えた。彼女の髪はセミショートだが二房だけ伸びた髪がある不思議な髪型だ。手間かかりそうな髪型だな。髪型もそうだが不思議な手触りの髪だ。実に手触りが良く枝毛が一つも無い。触ってるだけで性的な興奮がある。
「はみであふぉぶなぁ…」
「ふむ、ではお言葉に答えて遊びではなくそう{cd/cαll/hψdrαrgεntuμ:ζtructurε/АξΨuЯΑ}」
周囲の魔力資源を集めて五兵形態となった。これからは本気で弄ぶとしよう…しかし俺は昼間から何をしているのだろう。冷静になっても情動は収まる気配は無い…まぁ欲望のままに生きるとしよう。
「ふァがっ!!」
考えるのは美女を楽しんでからでも遅くは無いだろう。




