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ウルファス物語  作者: ろーき
第4章 建国編
38/50

トーナメントには予想外のことが起こった

国とは国が国と認めた物である。ややこしいが地球でもそうだった様に国交の無い国は国と見做されない場合がある。


「ウルファス国王陛下におかれましては我らニラガ帝国に対して好意を示していただきたい」


この国が始めて迎え入れた使者はでっぷりとした褐色の男であった。ニラガはここから北西にあったソラヴェインのノン大河を挟んで西にあるという大きな国だそうだ。俺は行ったことは無いが書物でそう言う国があるとは知っている。

久々に倉庫ではなく泥の城の謁見の間で仕事をしている。使者は王国の規模には驚いたとシアンに探らせて分かったが、城に関しては嘲りの眼で見ているらしい。俺は盛装してエクター宝物庫にあった豪華な椅子に座り一段高いところから、立った使者と相対している。家臣達は謁見の両側の側面の壁際に立って並んでいる。皆そこそこ良い服を着ているが、使者が来るというので慌てて一張羅を繕ったとシアンに報告を受けている。普段はもっと雑な服で政務にあたっている。彼らにそんな服を着させているのも子の国が貧しい所為である。正確に言うと金も物資もあるが、仕立て屋や生地屋が居ないので服を作れないのだ。


「いやはや使者殿、この国はまだ幼いので、そういうことは遠慮しておきたいのですよ。それにニラガはここから随分遠い。親密な関係を築くのは難しいでしょう」

「貢納するだけで良いのですよ。さすれば両国は平穏な絆が築かれます」

「それは断る」


使者は渋い顔をしている。さて、今はなるべく敵対したくはないが、かといって弱気な態度を取るのも拙い。と、いうのが家臣との相談の結果である。どうしろってんだ。


「なるほど、ウルファス国王陛下の言いたいことは分かりました。どうでしょう?この街にある大きな倉庫…あれの中身を売って頂きたいのです。貿易から互いの関係を始めませんか?」

「構わんよ。どのくらい買うのだね?」

「倉庫の中身を全て我がニラガ帝国に運ばせていただきたい。勿論そちらの言い値で天然貨幣をお支払いします」


謁見の間の家臣は全員驚いている。使者はドヤ…とした顔だ。


「分かった。好きなだけ持って行け。車は足りるか?必要なら貸し出すか新しく作ろう。車代は考えてやろう。将来性のある大口の客だしな」


使者は一転驚いた顔をして、家臣は青ざめた顔をしている。人を驚かせるのは実に面白い。


「そ…それは…助かります…陛下のエクター平原の様に広いお、お心に感謝いたします」

「そうか、詳しいことはあとで家臣に伝えさせる。では下がって良いぞ」


使者は平伏した後立ち上がって急いで去った。

使者が完全に居なくなるとチオは滑り込むような早さで俺の前に進み出た。緊張が解けたのか家臣も一斉にどよめいた。


「陛下!何を考えているのですか!?」「そうです、無茶です!食い物が無くなったら国は破滅です…陛下の元々少ない人望も…」「あの食糧を全て…幾らになるのだろう」「金などあっても役には立たん!」


みんな国のことを思っているのだな。俺は実に幸せだ。こんなにいい家臣に囲まれているのだから。


「皆落ち着け、倉庫はあれ一つではない。同じ物が三つ有る」

「「「「「そんなに」」」」


備蓄は大事である。念のため用意しておいて助かった。倉は城の地下とノン大河の向こうにある。防衛も生物を見たら殺させる虐殺モードのボラートに任せているので安心である。機を見てロボットに移させるとしよう。いや、大河の向こうに有るのはロボットにも荷が重いかもしれない。自分で持ってくるかな、俺のアイテムボックスには倉庫の半分位は入る。アイテムボックスに入れる作業だけロボットに手伝わせるかな。


「それよりもだ、あの男をどう見る」

「ニラガの力を示す為に来たのでしょうが…無駄なことでしたね」


チオは満足げな表情だ。


「戦争する気はあると思うか?」

「無いでしょう。ニラガからウル王国に通ずるソラヴェインは未だ廃墟だそうですから。そこを治めて舗装して進軍するには時も資源も足りないかと…」


家臣の中でも年長のカニクリという禿げ頭で長い髭の家臣はそう答えた。


「それにしてもあの使者どうやってここまで来たんだ?大河を越えたのかソラヴェインを通ってきたのかどっちだ?」


この国の西にある大河の幅は二十kmもあるので橋も架かっていない。遥か北の川幅の狭いところには橋が架かったところもあるのだが、ニラガの使者がそこを渡ったとしても、ここに来るにはソラヴェインを通るしかない。ソラヴェインは盗賊の住処だしそんな物騒な場所を越えたとは思えない。家臣もそういえば…という風に顔を見合わせている。


「もしや騙りだったのではないですか陛下」


チオの言い分は間違っているような気がする。使者は仕立ての良い服を着ていたし、儀礼もエクター風では無かったが、きちんとした物だった。


「それは無いな。あの見た目で使者で無いとは思えない。察するに魔術師(ウィザード)だったから空を飛んできたのかもな」

「それなら一層どうやって倉庫の食糧を抱えて帰るのですか?魔術師といえどあれほどの量は…」

「そんなこと余の預かり知らないことだ。無理なら泣きついて来るさ。使者の話は終わりだ。奴はシアンに監視させるからお前達も余計な気は回すなよ」

「リョウカイシマシタマスター」


椅子の背もたれに留まっていたシアンの使い魔はそう答えた。家臣はちょっと驚いているが気にしない。


「頼んだぞシアン。それと食糧についてだが。今の所は使者に悟らせないために倉庫の反対の広場で配給をすることにする。当面の食糧もそこに運んでおく。国民が騒がないように気を配っておけ。異存は無いか?」


全員頷いた。手間のかからないことだ。


「それと入金が何時になるかは分からんが、金はニラガで使うことにする。ついでに向こうで食糧を売ってこさせて供給過剰にしてやろう、そして長い道のりを通った使者の苦労を無駄にさせよう」

「いや…それはどうかと思います」

「なぜだカニクリ?向こうの景気が落ちればこっちの利になるじゃないか」

「食糧が安くなっては国が強くなります。ニラガを強くさせるのはこちらの害になるでしょう」

「確かに、では金もニラガで使わせないほうがいいかな?」


家臣は皆狼狽している。


「そもそも陛下、どうやってニラガまで行くのですか?」


チオは疑念を持っているようだ。家臣にも俺はこの国の全てを話して居ない。何だかんだと言って俺は家臣も国民も信用していないのだ。


「船を予め造っておいたからな。一応航海は実験済みだから問題ない。ニラガまでは上りだが、帰りは下りだから荷物を積んでも楽が出来る。大河の魔物も退治したから安全な航海だ」


後の交易のために造っておいてよかった。書物の知識で造ったので何隻も沈めたが、一隻だけは問題なく航海できる原始的な帆船だ。


「…陛下のお考えには多くの利がありますが…」

「なんだカニクリ、はっきり言え」

「人材が足りません。交易を行う者も船頭…それに護衛も担い手がいません。今は国内を治める時ですぞ。ワシも本来ならば食糧の販売に反対です。ですが…同量の備蓄があるというならば、天然貨幣を貯めるのは少なからず賛成です」

「ふむ…今は交易の時では無いと?皆もそう思うか?」


全員頷いている。操船はロボットにやらせる心算でいたし商人だけ乗せれば良いと思ったが、そう言うわけにもいかないか。5日後のトーナメントで良い人材を得られれば良いのだが。


「分かった。今は国内を治めるとしよう。では倉庫からの食糧の運び出しは皆で上手く取り計らえ。俺は今日は城の執務室にいる。使者とは絶対に揉め事を起こすなよ。まだ戦争をするには早すぎる」

「「「「「御意」」」」」


全員希望を宿した目で頷いた。家臣からの人望はそこそこ得られた気はする。気のせいかもしれない。人の心と秋の空である。

謁見の間を出て、執務室に入る。どっちも似たような泥の個室だが執務室の椅子は謁見の間にあるよりも質素な物だ。そのうち壁に樹脂でも塗りたくろうかな…暇が無くて無理かな…あぁ事前にやっておけば良かった…今更遅いか。


「さて…シアン。使者どのの反応はどうだ?」

「イチジイックオツタエシマスマスター」


シアンの使い魔に拠ると使者はかなり困っているようだ。やはり大言壮語は吐くものでない。

使者は泣きはしなかったが、俺に再び謁見してきてトーナメントに推薦する騎士が居るからそれで買取の話しは忘れてくれと言ってきた。金は手に入らなかった上に得体の知れない騎士を参加させる破目になった。

まぁ流れ者の騎士らしくニラガとは無関係の人間であるので登用しても問題ないと言えば無いが…間者の可能性は0ではない。そんな奴を紹介することが謝罪になってないと思うが、家臣は何故か納得したようだ。書物に載らない慣習にはまだ俺は不得手であるらしい。やはり家臣はまだ必要らしい。


トーナメントの日はすぐに訪れた。アガトとチオは大分苦労したそうだが、俺にはあんまり関係ない。王とは王座でふんぞり返っていればいいのだ。俺はコロシアムを一望できる展望室で、トーナメントを今か今かと待ちわびている群集を眺めるだけで良いのだ。

しかし結構な数だ。報告によると一万人以上入ったらしい。入場料がタダだったのと平原全体にお触れを出したお陰でこんなに集まったのだ。中にはオルガ公爵の軍勢で見かけた人間も居た。このまま国民として定住してくれてくれれば良いのだが。


「陛下、めぼしい騎士はいましたか?」


エレノアは全身鎧姿でそう言った。エレノアは出場はしないが護衛として控えている。別に護衛など要らないが話し相手がほしかったのだ。


「さて…まだ開催さえしていないんだ。遅れてくる奴に光る奴がいるかもしれん」

「…つまりウル様の目に敵う人は居ないんですか?こんなにいるのに…」


ハレは信じられないという顔でそう言った。出場する騎士は全部で百人であり、その内の九割が騎士身分の出身ではない。実力さえあれば取り立てるという話を真に受けたらしい。さて…レベルや魔力はどいつもこいつも似たり寄ったりであるが…技術がある奴でも居ないモノだろうか。


「それよりハレ、原稿は出来たか?」

「勿論できています、どうぞ」


ハレはアイテムボックスから一枚の紙を取り出した。紙を受け取り書面を確認する。良く出来ているとハレの頭を撫でてやると暖かな笑顔で応えてくれた。


「あーーーーーーーーあえいうえおあおおあおえういえあかけきくけこかここかこけ…」

「陛下!?」「ウル様がまた奇行を…」

「いや、これからスピーチをするわけだから発声練習をしただけだ」

「事前にやってきてください」「そうですよエレノアさんの言うとおりです」


最終確認を兼ねてやりたかっただけなのに…ちょっと落ち込む。奇行はないだろう奇行は。


「国王陛下、そろそろ開催の鐘を鳴らして戴きたいのですが」


アガトが部屋に入ってきて俺にそう告げた。どうやら発声練習の時間は元からあまり無かったらしい。


「そうか…ではカリキュラム通りやるとしよう。アガト、ご苦労だった。今の所揉め事も無い見事な采配だな。年若いといえどお前を起用して良かった」

「ありがたき幸せ…しかし陛下、まだ何も始まっていません。どうぞ終了宣言の際にお褒めの言葉を願います」

「分かった。トーナメントが何事も無く終わってほしい物だな」


アガトが外に出ていった後に展望室の民衆から見える位置に進み出て、マーリンを取り出す。『ファイヤーボール』を空中にはなって爆発させた。大きく息を吸って一万人の民衆全員に聞こえるように腹のそこから声を出す。


「諸君。年若いウル太平国に良く集まった。余がウル太平国国王ウルファス・ガシャラムである。10年以上に渡るエクター王国に由る迫害の日々が今日終わったことを宣言する。この国は諸君を守り腹を空かせないために造った国だ。そして今日は国の新たなる守り手を勇気と熱意を持ったあらゆる民から選ばれる日である。選手一同は存分に剣を振るえ」


それなりに民衆はわいた様だ。予定通りの時間に騎士達は闘いを始めた。


「つまらんな」

「陛下…我慢してください」

「しかしなエレノア、あそこにいる騎士…」


鎧姿の男を指差す。男の盾には赤い蜥蜴の紋章が書いてある。チオが連れて来た騎士の一人であり、俺が痛めつけた騎士の一人である。


「コスの氏族の騎士ですか?」

「そいつとベイの氏族の騎士の試合はモロに馴れ合い試合してるぞ」

「…こういうトーナメントでは仕方ないことです。勝ち残る為に疲れない戦いをするのも戦術です」


俺は会場に居る全員どころかコロシアムに居る人間全員倒せるというのに…体力の無い奴だ。不採用っと…これは集団面接でもあるのだ。


「ハレ、お前ならあそこにいる騎士は何人倒せる」

「うーん五人くらいですかね」

「私は三人でしょうね」


ハレの判断は少し甘く、エレノアの判断は少し辛い。俺の見た所二人の実力ならそれぞれ同時に四人まで相手に出来る。エロイ意味ではない。二人にはそう言うことは絶対にさせない。それは置いておいて同時に四人相手に出来るということは順番に闘えばトーナメントに集まった百人を全員倒せるだろうということだ。


「結局雑魚ばかりか、チオに匹敵する奴位は居て欲しかったがな」

「陛下、私とハレは貴方の指導を三年受けた戦士ですが、あそこに居る者達はずっと平原をさまよっていたのですよ。そこは考慮に入れてください」


さまよっていたのなら強くなってそうな物だがな…それから退屈な剣戟の音に眠くなり、本当に寝そうになったが、ハレに頬をつねられて起こされた。退屈な試合は長く感じた。こんなことなら安全に配慮した刃を潰した剣なんて使わせないほうが…いや、それは拙い。民衆もそこそこ喜んで居るようだしいいかな。

試合は退屈に順調に進んでコロシアムで闘っている騎士は残り十人にまで絞られた。大して強く無い奴らが疲れて弱くなっているので、更に見ごたえのなさそうな試合が見ることになるらしい。


「ドリャッー!」


本日初の飛び入り参加が来たらしい。山賊のような格好をした男が客席から入ってきて、当たり構わずに剣を振り回して騎士をばったばったと薙ぎ払っている。予想外のアクシデントだが、中々面白い。山賊男は疲れていたとはいえ、十人の騎士を全員倒してしまった。民衆はやんややんやと歓声を上げている。プロレス的なワンダーである。やっぱり強い人間は尊敬されるのだ。



「ウルファス王!ウルファス王は何所に居られる!」


叫ぶ山賊男に敬意を示す為に闘技場に降りようかと思ったら、また飛び入りが来た。またもや観客席から飛び出したのは山賊男と違い全身に鎧を着た人間である。盾の紋章からしてトマの氏族だ。そいつが正面から山賊男に斬りかかった。正直なことだ、後ろからなら隙だらけだったのに。


「んぉ!」

「貴様如きが陛下に会えるものかっ!」


声からいって男らしい。背は180強といったところか。山賊男が2mを越えているのでちょっと小さく見えるが、どっちも筋骨逞しい男だ。二人の剣戟は今日の試合で一番見ごたえがある。二人とも中々の腕だ。騎士の方は技ならエレノア以上ラグ以下といったところか。山賊の方が膂力が強いので互角だが、やはり技の差で徐々に追い込まれているが、山賊もさるもの。騎士の剣を弾き飛ばしてしまった。


「マスターニホウコクヲシマス」


シアンの使い魔が展望室に入ってきた。山賊と騎士は組み合いを始めたので目を話したくないので、使い魔に目をやらずに答える事にした。


「なんだシアン?今面白いところなんだがな。ま、いい。話せ」

「ポイント1ニソラヴェインノグンゼイヲカクニン」


さて…面白い事かつまらない事かどっちかな?

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