ウルファスとエレノアは試合をした
ドラゴン…それは恐怖の名。ドラゴン…それは強さの名。ドラゴン…倒した者は勇者…俺は勇者なのか?王族ではあるが勇者なんだろうか?
さて、すこしドラゴンを舐めていた俺であったが、ドラゴンは雷に耐性は在ったらしいが、氷属性には弱かった。『ダイヤモンドジェイル』という氷雪系最強呪文を3回唱えたら死んだ。氷漬けの巨大な竜は観光資源に成りそうだが、このご時世には肉や骨・鱗の方が効果的な資源になるので、火炎系呪文を使って焦がさないように氷を溶かした後、シアンと共にドラゴンを解体する。なお魂は金貨一万枚になった…う~んすごい、ちょっとした金の丘ができてしまった。
金の使い道はないのになんでロボットにしなかったのかと言えば、最上級の魔物が幾らに成るのかこの目で確かめたかったからである。王都での経験的には金貨一枚100万円相当だが、今は乱世な上に買い物を楽しむような人間は上流階級の人間しか居ない。そのため日本での金銭感覚とは大分かけ離れている筈だ…というか冷静に考えると俺は買い物をした経験がないので、金貨が一枚幾らなのかはよくわからない。
ボターの村でも金は使われていなかった。基本物々交換で済ませていた村なので金なんて使わなかったのだ。ドラゴンの解体は日が沈んでも終わらなかった。当然といえば当然だ。ドラゴンは怪獣映画に出てきそうなほどでかい。ビル街を丸ごと解体して更地にするような物だ。一日二日で終わる物じゃない。
「とりあえず終わりだな」
「アトハオマカセヲマスター」
「そうか、頑張れよシアン」
シアンは基本昼も夜も無く働けるので、解体を続けさせてやることにした。ドラゴンの死体から降りてハレとエレノアの待つ地上に降り立つ。解体する前に建てた天幕の中に入る。
「「お疲れ様ですウル様」殿下」
二人は揃って俺を出迎えてくれた。タイプの違う美しい女を2人も独占できるとは…素晴らしきかな人生。
「今日の飯は何だハレ」
「麺というのを作ってみましたが…こういうので良いのですか?」
鍋の中には細長い何かがあった。すごいものだ、なんとなく麺に見える。いただきますと言って俺専用のスプーン・フォークと容器をアイテムボックスから取り出し鍋から容器に取る。麺をすすると…パスタっぽい。スープはドレイクを煮込んだものなので名前を付けるなら『空挺ドレイクの大空風スープスパゲティ』だろうか。
「すごいなハレ、どうやって麺なんて作ったんだ?」
「石臼は無かったのですが、麦を石で挽いて粉にして練ったあとで切ったのです」
超麦は基本的に麦と呼ばれる。何故かと言えば超麦は品種改良された麦だからである。それにしても石臼か、やっぱりあると便利なんだろうか?石臼があれば蕎麦とか食え…蕎麦は蕎麦粉か…蕎麦の実あるのかな?麦や麻が地球と同じ様な植物として存在するならあっても良さそうな物だ。
しかしなんでこんな進化をしたのやら。収斂進化という奴だろうか?知性を持った生き物は人間と同じような形に進化するという傲慢な仮説は合っていたが、植物も地球と同じような進化をするのだろうか?少なくとも麦や麻は地球と大して変わらない気がする。まぁ前世の俺の知識には生で麦や麻を見てはいない。だから本当は全然違う植物かもしれない。
「えらいぞハレ、よくあんな半端な情報で完璧な麺を作ったな」
「ウル様のお口に合ったようで幸いです」
「これからも旨い物を作ってくれよ。さ、お前らも食え。疲れの取れる滋養の良い食事だぞ」
二人は頷き、アイテムボックスから取り出して渡した二人用の器に鍋からスープスパゲティをよそっている。
「殿下、食事が終わってからで良いのですが、お話ししたいことが御座います」
「話はちゃんと聞いてやるから、飯を食え。エレノアはまだ疲れが抜けていないのだからな」
エレノアは凛々しい顔で麺をすすっている。二人とも麺を食べた経験が無い所為か俺の真似をして食べている。前世知識には麺をすするのは日本人だけだと言う知識があったが、この世に面を広めたら皆すすって食べるようになるのかな。もっとエロイ食い方をするべきだったかな?いや、食事は普通に摂ろう。食べ物への感謝の気持ちを忘れると天罰が下る。
飯を食い終わったらエレノアは外に出てしまった。ついて来いということらしい。ハレに洗い物を任せて天幕の外に出る。
「それで話とは何だ?」
「試合をしていただきたいのです」
「お前は病み上がりだ。体調が戻ってからでもいいだろ?」
エレノアは答えずに俺の目を見据えている。困ったな、妙な返しをしたらエレノアは俺の元を去るかもしれない。さて、何で試合なんてやりたいのだろうか?そう言えば彼女に俺の力は見せたが、俺はまだエレノアの力を見ていない。主君に自分の腕を見せようとするのは不思議なことではない。自己アピールみたいなものだ。
これからの主従関係を円滑にするためにも上手く試合をするとしよう。
アイテムボックスから自前の鎧を取り出し、エレノアにはエクター王宮宝物庫にあった女用の鎧を渡す。恐らく母の物だが、エレノアと母は背も同じくらいだからちょうど良いだろう。彼女の鎧は俺が治療の為に剥がして装着不能にしたので新しい鎧を渡さなくてはならない。
二人とも一人で鎧を着終わった。エレノアはやはり実力者である。普通全身に鎧を装着するには従者が必要なほど煩雑な作業である。エレノアの身に着けた真っ赤な鎧は中々勇ましい。
「では、まずは剣か?」
エレノアは頷いたので、アイテムボックスから二振りの剣を取り出して地面に刺す。彼女が剣を選んで抜いたので俺も残った剣を持って、互いに試合らしい距離に離れる。彼女は道理をよく弁えているらしく、互いに10m離れた距離に相対する。
剣道なら蹲踞をするところだが、この世の騎士道ではやらない。剣を構えて名乗りを上げるのがこの世の作法である。互いにもう名前も知っているがそれでもやるのが礼儀のようなものだ。
「ウルファスだ。今の俺はただのウルファスだ」
「エレノア=ボガート・ハランです。未熟者ですが腕を確かめていただきたい」
「構えも堂に入っているし、目付けも良い。お前は充分な騎士だ」
「堂…?とにかく実際に剣を交えて確かめていただきたい」
エレノアは剣を両手で上段に構えて、魔力を纏い走ってきた。俺はゆったりと中段に構え、魔力を纏わせた剣で柔らかく彼女の剣を受ける。柔よく剛を制し剛よく柔を断つという法則はこの世でも存在するのだ。その後三合斬り合い、エレノアの隙をついて彼女の喉元を突く。勿論寸止めである。可愛い女を殺す気など毛頭無い。エレノアは剣を地面に置いて両手を後ろ手に組む。このまま胸を揉みしだきたい所だが、鎧の胸当てを揉んでも多分楽しくない。
「まいりました。降参です」
「まだ剣を使うか?」
「いえ、次は槍をお願いします」
分かったと答えて、剣を引き、平伏したエレノアから剣を受け取る。剣を見比べてみると、彼女に渡した剣の方はかなり刃こぼれしている。砕けた破片が俺の鎧と彼女の鎧に刺さっているので、互いの剣戟がかなりの物だったと分かる。目に欠片入ったら失明するなこれ。
アイテムボックスに剣をしまい、槍と盾を二組取り出す。盾にはどちらも紋章が無い。今の俺には必要無いのだ。彼女に再び槍と盾を選ばせる。これは騎士の作法で相手に武器を借りる場合は相手の用意した武器の内好きなほうを借りるほうが選べるという作法だ。相手の公正さを確かめる為の儀式であり、互いの尊敬を高める作法である。
「騎乗動物は要らんのか?」
「いえ、単純な徒歩での闘いをお願いします。それで殿下に私の意を示せます」
どうやら自己アピールではないらしい。ハレと同様エレノアも余計なことを考える女らしい。だがそれも俺のことを想ってするならば可愛い物だ。
互いに離れて槍を構え、魔力を纏い突撃した。示し合わせたように槍で互いの盾を突く、俺は槍の衝撃を上手く逃したので盾には大した損傷は無い。だがエレノア盾には穴が空き、彼女は吹き飛ばされた。
倒れたエレノアに近づき、槍を喉元に寸止めにする。エレノアは吹き飛ばされても槍と盾手放さなかったが、俺が槍を突きつけると手を放した。
「俺の勝ちだな」
「…やはり殿下はお強いですね。降参です」
「次は何をするんだ?」
「槍と盾をしまってください」
アイテムボックスに槍と盾をしまい。彼女の手放した槍と盾をしまおうとすると、寝転がっていた彼女は俺に跳びかかってきた。
「油断しましたね殿下っ!」
「次は格闘か?」
跳びかかってきたエレノアの勢いを利用して逆に後ろに引き込んで巴投げをした。素早く立ち上がり振り向くと、投げた彼女は受身をとったらしく、立ち直って俺に殴りかかってきた。
エレノアは女だが、今の俺よりも背が10cmほど高く、リーチも長い。すると一方的に負けそうな物だが、俺は一方的に殴り勝った。エレノアの鎧兜はちょっと歪んでいる、中身に傷が着いていないと良いのだが。エレノアは気絶したらしいので鎧を脱がしてやる。
ハレほど大きくはないが、非常に形の好いおっぱいが鎧の下から表れた。鎧の下に着た服が度重なる試合で破れてしまったらしい。
「…ウル様、何をなさっているのですか?」
ハレはいつの間にか天幕の外に出て試合を見守っていたらしい。
「エレノアが気絶したので鎧を脱がしたのだ。呼吸ができなくなっては困るからな」
「…本当ですか?」
「本当だ。楽しむのは俺の勝手だが、助けるのは本当だ」
実際エレノアをそのままにしておくと死んでしまう恐れもあるのだ。ハレは怪訝な目をしているが、これも主君の義務である。アイテムボックスに鎧武器一式をしまい、エレノアに回復呪文を唱える。回復呪文は傷は塞がるが、体力は回復しないので気絶は回復しない。横目にシアンがドラゴンを解体しているのが見える。頑張っているな。
半裸で気を失っているエレノアを担いで天幕に入る。
「ハレよ、エレノアが羨ましかったか?お前の目には嫉妬の色が在るぞ」
「…わたしは…エレノアさんに出来ないことが出来ます…」
「図星だったか、気にするなハレ。嫉妬したお前も可愛いぞ」
ハレは困った顔をしている。エレノアをアイテムボックスから取り出した大きなベッドに寝かせて身体を拭いてやる。それほど目立った傷もないので、すぐに起きるだろう。
「さて…今度はハレを脱がせてやろう」
「ウル様…わたしは詰まらない女です…詰まらない嫉妬をする醜い…」
詰まらないことを言いそうなハレの口を塞ぎ、エレノアの寝るベッドに押し倒す。エレノアは結局今夜は起きなかった。惜しいな、二人を楽しもうと思ったというのに。
「殿下、昨日の試合を見ても分かるとお思いですが、私は役立たずです」
朝飯を平らげた後に、いつぞやのハレのようなことを暗い顔でエレノアは言い出した。暗い顔も好いが、明るい顔の方が好きだな。
「私は修業の旅に出ようと思います」
「修業に出てどうする積りだ?」
「殿下のお役に立てるような強さを得たいのです」
「下らんな」
エレノアは顔を赤くして怒りを露にしているが、俺に負い目が在ると考えているらしく目を伏せた。
「勘違いするなエレノア、下らんと言ったのは、お前が昨日負けた原因も聞かずに旅に出るという考えを下らんと言ったのだ。お前自身を下らんとは思っていない。むしろ強くなろうとする意思は尊敬に値する」
エレノアは納得していない目をしている。さて…言葉を間違えればエレノアは俺の元を去ってしまう。何と言って話そうかな…ギャルゲーなら選択肢があるのになー。
「昨日のお前の戦術は100点満点で言えば90点と言ったところだ。槍の扱いも剣も上々だ」
「しかし殿下には剣を届かせる事も出来ませんでした。私の武勇など折れた剣、穴の空いた盾と同様です」
「うぬぼれるなエレノア、俺の武器術は100点満点で云う1000点だ。お前では刃が立たん」
実際俺の剣はそんなレベルだ。ハンデで手足を縛ったとしても大抵の相手には勝てる。尤も俺は最適な行動をその都度選択して武器を振るい、足運びを正しているだけだ。特別変わったことはしていないつもりだが、剣を交わす度に俺は有利になり相手は不利になる。俺の才能は規格外である。大して役にも立たないが、便利な才能ではある。
「さて、エレノアよ、俺以上の腕を持つ者を知っているか?」
「それは…存じ上げませんが…」
「ならば俺の元で学べ、それが強くなる近道だ。それにだな、エクター平原は今は危急の時だ。今はのんきに修業などしている時ではない。民の為にも俺と共に国を造るのだ。それがお前にとって一番の修業だ」
エレノアは感動した雰囲気だ。てきとう言ったがなんか感動したらしい。しかし国造りなんて本当に出来るのだろうか?俺は鍬も持った事もないのにな。ま、なる様になるか。




