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ウルファス物語  作者: ろーき
第3章 帰還編
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長い槍を持った牛人間が待ち構えていた

「ところでウル様わたし達はどこに向かっているんですか?」


代わり映えのしない平野を進むのは退屈なものだが、やはり話し相手がいるのは良いものだ。これで道がもっと整備されていればもっと良いのだが。


「かつて俺の先祖ガシャラムが遷都しようとした地を目指すのだ。そのついでに大魔術師マの最期の地を訪れようと思う」

「マ様というと…帝国の頃の人ですよね?何故山のこちら側で亡くなったのですか?」

「マは大道を開通させた後失脚してこちら側に来たそうだ」

「大魔術師様はお隠れになったと聞いていましたがそれが真実だったのですか」

「オルガのあたりではどんな風に伝わっているんだ?」

「大魔術師マ様は大きな穴を開けた後何処かに消えたというお話をお母さんから聞きました」


宝物庫にはマの弟子が遺したマの伝記があり、それによるとマは大道を開通させた後に怪しげな実験をした罪で投獄されたそうだ。何でもレベルやジョブに関わる実験をあらゆる階級の者に行ったのが拙かったらしい。

その割に真魔道大全にも魔道大全にもレベルやジョブのことは大して載っていなかった辺り、実験は上手く行かなかったのかもしれない。しかし真魔道大全に書かれた術はどれも強力なものだったので役立つのは間違い無い。

それはさて置き、マはまだ人の住んでいなかったこのエクター平原に流されたそうだ。そして開墾を進める過程で古代文明の痕跡を見つけたそうだ。その文明は真魔道大全を著す切欠になったらしく、かなり優れた魔術文明だったそうだ。

彼は古代文明の研究に没頭し、開墾を疎かにして再び帝国の怒りを買ったそうだ。その後彼は弟子に真魔道大全を渡して最期の地に向かったそうだ。もしかすると最期の地には真魔道大全を超える魔術書があるかもしれない。幸い建都予定地の途中に最期の地があるので立ち寄る事にしたのだ。


「と、言うわけだ」

「成る程、では遥か昔に山のこちら側に住む人達の国が在ったのですね。エルフとは違うんですよね?」

「古代文明を興したのは人間だったのかは分からんそうだ。この周辺には俺の先祖が開墾するまで人なんて居なかったそうだからな」


まぁエルフなんかは住んで居たそうだが…エルフはやはり美人なんだろうか?胸ははたして大きいのか小さいのか?地球のファンタジー者の想像力はどの程度真実のエルフ像に近いのだろうか?何時か会いたいものだが、残念ながら人間がエルフ狩りを行った過去があるので会ったら襲われるかもしれない。


「え?マ様のお弟子さんが開墾したのでは?」

「いや弟子は当時の帝国の首都に帰ったそうだ。弟子はマについて来ただけだしな。開墾はマに課せられた義務だ。そして弟子が首都に帰ってから70年後にガシャラムが此処に封ぜられたのだ」

「エクター王国はまだ無かったのですか?すみません山のこちら側のことは何も知らなくて…」


山は境界であり、要塞だ。文化も流通も断絶する天然の結界であると言える。そこに大道なんて物が開通したのは帝国の版図を大いに広げる結果になり、求心力の衰えた帝国がバラバラになった原因の一つである。


「元々エクター王家はオルガ公国の遥か東に在った王国の分家筋だったそうだ。その王国も帝国崩壊の煽りで今は無いそうだがな」

「要するにウル様のご先祖様はお嫁さんを貰って国も貰ったのですか」

「そう言うことだ、国祖ガシャラムは当時野原だったエクター王都に封ぜられ、オルガ公爵と貿易して儲けたそうだ」


オルガ公爵は名門なのでその頃からあるのだ。だが公国になったのは帝国崩壊の後だそうだ。帝国には多くの王国が存在したが、公爵や男爵はあくまでも代々の領地を持っているだけの貴族だ。それと国の何が違うんだと言われると変わらない気がするという辺りも帝国崩壊後に公国や伯国が各地に興った理由だろう。エクターの隣国にも北にアイラ伯国、南にクリチカ公国という国がある。

いや在ったというべきかもしれない。今隣国がどうなっているのかは全く分からない。何せエクターの街も人が殆ど住んで居なかったのだ。それにしても彼らはどこに行ったのだろうか。


「遷都…というのは新しく都を定めることですよね?必要あったんですか?」

「ソラヴェイン王国とエクター王国の間に大河があってな、その辺に都を造りたかったらしい。結局王都の開発に忙しくて断念したそうだがな」

「ウル様は大河のほとりに国を興すのですか?大丈夫なんでしょうか?」

「そうだな…人が住んでるかもしれないしな。駄目なら…一生旅の空かもな」


一応建設予定地周辺はエクター王国の土地で、とある騎士の一族が代々治めているそうだが、どうなっているのかは分からない。騎士は俺に反感を持つかもしれないし、土地の所有権を渡さないかもしれない。


「まぁそんな事には絶対にならないんだがな。ロボットを使えばその程度の障害を乗り越えるなど容易い」

「ウル様の魔術なら国を興すなど簡単です…ところでウル様レベルアップは本当にしなくてもよろしいのですか?」


ハレは神妙な顔で問いかける。何時も笑顔が多いだけにこういう表情も楽しめる。感情豊かなハレと話をしているのは実に飽きない。


「構わんさ、その内指示を出すからその時にレベルアップするんだ」

「ウル様も1なのですが…大丈夫でしょうか?」

「心配するな、俺を信じろ」

「勿論信じています…ウル様を信じないハレなど生きている意味がありません」


またそんなことを言う。まぁ健気でいいことだ。レベルアップをしないのは一応理由がある。レベルはアップしてもしなくても変わらないのだ。これはどういうことかと言えばステータスとレベルは無関係なのだ。この世において強さとは魔力資源の多寡であり、これは働くと増えるのだ。畑を耕しても増えるし魔物を倒しても上がるし、写本作業しても上がるのだ。

マはこの仕組みをある程度理解したそうだ。魔力とは移ろう性質を持ち、より大きな魔力に集まろうとする性質がある。どうも引力を持っているそうだ。努力するものにとっては都合が良く、怠け者には都合が悪い。強さ=魔力資源量なので、強くなろうとすればするほど強くなれるのだ。

さてレベルアップしていない人としている人との間には魔力資源の量が変わらない場合があるそうだが、レベルとは他人に自分の強さを示す数字であり、別に魔力資源の多寡とは関係無い。しかしレベルを上げるとステータス…つまり魔力資源も上がりやすいのだ。

なのに上げないのは何故かと言えば、以前男爵が言っていたようにレベルが低いうちに魔物を倒すと可笑しな上がり方をするという話と関係する。レベルの低いうちは人間は良く上がるという思い込みがあり、低いうちは魔力資源顕在使用量の増加量も多いそうだ。

さらにレベルは思い込みでも上がったりするそうだ。何ともいい加減だ。マはこの法則を利用し、レベルの低い内に弟子に修業を課し、養殖的に高いレベルに上げさせ、時の皇帝を驚かせたそうだ。そんな事してるから左遷されるんだ。


『…こうした事柄からもレベルなど魔力資源の多寡を見分けられなくなった人間が分かりやすく自分の力を示す為の簡易魔術に過ぎないということが良く分かる。レベルが低かろうと高かろうと数字に左右されず自分は強くなれる。より高みを目指せると賢明なる読者諸氏は思い込んで欲しい。そうすれば魔力資源は自ずと自らに集まるのだ。だがレベル…それにジョブにはまだまだ未解明の部分がある。私の言葉は信じなくても構わない。真実を絶えず追い求めるのだ』


マは相当レベルを恨んでいたらしい。まぁレベルを上げなくてはならないのは確かなのでその内上げるが、せめてもう少し魔物の群れを倒しておきたい。そんなことを考えていると斥候として飛ばした使い魔が帰ってきた。新たな使い魔は意識を移すことは出来ないが、猟犬として充分使い物になる。

使い魔を手に握り、集めてきた情報を受け取る。音や映像が一瞬で脳裏に浮かんでは消える。この魔術は慣れない内は意識を失う恐れがあるそうだが、俺は特にそういう事も無い。


「ふむ、槍持ちのミノタウルスか」


ミノタウロスではないらしい。というかルとロの違いは何なんだろうか?まぁこの世にはミノタウロスというのは居ないらしい。というかそう名付けられた魔物は居ないそうだ。ちなみに槍持ちのミノタウルスで正式名称だ。普通のミノタウルスは斧を持っているので、こう名付けてられていたそうだ。


「では行くかな」

「ご武運を」

「クゥン!」

「ふむ…リュウお前は今日走ってないから走りたいのか?」


リュウは熱意を持った目で俺を見ている。まぁ散歩代わりに走らせるとするか。リュウに跳び乗って跨る。ハレの守りとして周囲の魔力資源を使って銀水のヒドラを作る。実に便利な魔術だ。


「ではハレ、行ってくるぞ」

「今日は牛鍋にしますね」


牛人間は食えるのだろうか?まぁ魔物は鬼種以外は食えるので、獣種に分類されるミノタウルスは食えるらしい。アイテムボックスから弓と矢筒を取り出してから、両足でリュウの腹を軽く叩いてリュウを走らせる。リュウは実に早いので、3kmほど先に居た槍持ちのミノタウルスを1分もしない内に視認できた。


「あれが槍持ちのミノタウルスか、中々でかいな」


槍持ちのミノタウルスは10m近い長い槍を持った巨人に見えた。以前戦ったボゥギ2匹分ぐらいの身長だ。地球で見た象よりも大きく見えるし、ミノタウルスが生まれた時から持つ槍の射程は驚くほど長そうだ。

走るリュウの上で振り落とされないように腿を力強く締め、尚且つバランスを取りながら矢を放つ。流石に1発では倒れなかったので何発も放つが、ミノタウルスは動き回っているので当たらない。まぁ1kmも離れているので、動きを予測して当てようとしても意外と当たらない。発射してから着弾まで数秒あるので当然と言えば当然だ。奴は見てからかわせるのだ。


「俺もまだまだってことだな」


重要な要素に40%の運を提唱していたあの男には及ぶ者ではない。俺もあの位の境地に至りたいものだ。弓をしまい。スフアソラを取り出して、地面と平行に構える。

100m程の距離に近づくと槍持ちのミノタウルスの方も長い槍を両手で構える。どうやら待ち構える積りらしい。あれほどの長身ならばもっと遠くから投げられそうなものだが、外したくないのだろう。

俺は魔力資源を集めてスフアソラの先端の刺先に集中させる。スフアソラは槍の機能も持つので今日は投げ槍として使う。

槍持ちのミノタウルスの全身が一瞬強張ったので、薙ぎ払う動作に移行すると考え、スフアソラを投げて右足の腿でリュウを刺激する。リュウはすぐに左に曲がり、槍持ちのミノタウルスの脇を抜ける形になった。王宮の柱のような槍は俺達を薙ぎ払うこと無く俺達の進む筈だった地面に大穴を開けた。

スフアソラは俺達が槍持ちのミノタウルスの脇を抜ける前に胸板を貫通していたが、死に至らしめることは出来なかった。脇を抜ける際に銀水弾丸を巨大な牛人間に放ち、牛人間の身体を内部からズタズタにする。リュウに方向転換の指示を出して、のた打ち回る牛人間の背後から弓で攻撃する。先程と違い面白いように当たった。


「ボモゥウゥウゥ!」

「ふむ、死んだかな?」


断末魔を上げたらしいので俺の勝利である。リュウの戦闘での早さを知る為に突撃したが問題はなかった。もしも馬か山羊ならば槍持ちのミノタウルスの長い槍に怯えて左への方向転換は出来なかっただろう。だがリュウは怯えること無く冷静に俺の指示を聞いた。


「えらいぞリュウ、今日の勝利はお前と俺のものだ」

「クゥン!」

「よしよし…これからも俺の役に立てよ…」

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