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ウルファス物語  作者: ろーき
第3章 帰還編
24/50

裏切ったのは誰だろうか

瓦礫の街と化した王都を眺めつつ騎士の一団と対峙する俺の心は生まれてから例を見ないほどのグチャグチャのどろどろであった。


「ボター卿、俺は俺の責任を果たしたと思っていいのかな?」

「あぁ…君は娘を守ってくれた…感謝しているよ」


互いに騎乗動物に乗ったまま会話する。騎士の一団の中にはボターやガウラードといった見知った顔が並んでいた。宝物庫を出てからアサイラ達の無事を確認する為に使い魔も放たずに一直線に王都の外に出てみると彼らが居た。平原には1000人ばかりのオルガの兵隊が居たのだ。


「要するに俺は諮られたということか、大道には魔物の群れがいた。なのにオルガから救援の一団がやってきた。しかも俺達が王都に着いたその日にだ。さらに地鳴りでトマの氏族は壊滅したらしいが王都の外に居た公爵とあんたの娘だけは無事だった。何もかも邪神教団とオルガ公国の目論見どおりと言う訳か、宝物庫から武器を出させるのが目的だったのかな?」

「何を言っているのか分からない…どう思われても仕方ないんだろうが…我々も預かり知らないことだ。我々は命がけで公爵の救援に来ただけなんだが…信じてはくれないだろうな」


ボターの言葉は到底信じられない。こいつらは俺の故郷に攻め入った人間だ。そんな連中を信じる理由は無い。元々俺もこの連中を利用する積りで参列していたのだから、別に抗議する気も無い。文句を言っているだけだ。


「さて…では俺は去らせて貰うよ。戴いた剣は返しておく。俺の命を随分助けてくれたよ実に良い剣だった」


アイテムボックスから騎士に叙された時に貰った剣を取り出し、ボターの足元に投擲する。俺はピッチング若しくは槍投げの才能もあるので、狙い通りの所に剣は深々と地面に刺さった。


「これで縁切りだ。次に会ったら貸し借り無しの立場だ」

「分かっている。さらばだ」

「何を言っているのだボター!こやつを生かしておくわけにはいかん!」


老いた将軍ガウラードが皺だらけの顔を引きつらせて吠える。ボターは何か言いたそうな顔をしているが、ガウラードはボターに構わずに俺に向かってくる。


「どういう意味かなご老体?俺を殺して何の得がある」

「ウルファスとか言ったな?貴様エクターの王家に連なるものだな?」

「そんな血筋に今更何の意味がある?」

「貴様は殺しておかねば乱の元だ!平原をオルガが治める為にも貴様を討たせてもらう!」

「王都も他の街も人が住めないほど荒廃した。その原因を作ったと言える俺には再び国を乱す意志は無い。どうせ宝が目当てだろうよ、正直に言え略奪者風情が」

「問答無用っ!」


ガウラードは馬に乗ったままフルフェイスの兜を被り、老いた男に似合わないとても長い槍を下人から渡されて構える。別に逃げてもよかったが、俺もスフアソラを右手で持ち構える。


「しっかり掴まっていろハレ」

「は、はい」

「格好付けの素人騎士め、そんな長柄を片手で構えるとはな!可笑しな形の見せ掛けだけの武器を使って長生きした奴は居ないぞ!」

「定型会話は要らん。来なジイさん」


俺はガウラードを待ち構える。ガウラードは老練の騎士だけあり1時方向からゆったりと突撃してくる。俺の持つ斧槍よりもガウラードの持つ槍の方が1m以上長いので、普通に考えたら俺は絶対的に不利だ。

老いた騎士は牽制を交えつつ俺の武器が届かない距離から小刻みに突いてきたい様だが、俺は牽制の一撃に斧刃を合わせ槍を跳ね飛ばす。槍から伝わった衝撃でガウラードは落馬した。鞍か鐙が有れば落ちずに済んだものを、下らない伝統など守るものでは無い。


「グワっ!」

「俺を放っといてくれ」


そう言って斧槍を地面と平行に構えてリュウを走らせ、騎士の一団の脇を抜ける。


「何をしている!討ち取れ!恩賞は思いのままだぞ!」


振り返るとガウラードが下人に助け起こされながら吠えている。2人の騎士が俺の後をついてくる。加速は竜の方が馬よりも早いのですぐに追いつかれることは無いが、面倒なのでアイテムボックスから金貨を取りだし式を書いて、銀水のヒドラを造り後方に放つ。

後ろから叫び声が聞こえてきたが気にしない。俺がその気になれば皆殺しにも出来たが、連中は邪神教団に騙されていただけの間抜けどもだという予測も有った。まぁ殺したくなったら殺せば良いのだ。だが今は人殺しをする気にはなれない。


「使命…俺にはもう何もすることが無い…」


実に空しい気分だ。俺がこの世に生を受けた意味とは一体何なのだろうか?神でも仏でも誰でもいいから教えて欲しいものだ。


「ウル様…」


王都から遠く離れた草原に天幕を建てて休む事にした俺は、木の柱を大地に突き刺してリュウを繋いだ。もうすっかり夕方だ。

天幕の中で寝転んだ俺はこれからどうするか考える事にしたが、特別にやるべき事も浮かばない。


「ウル様、よろしいですか?」

「なんだハレ」

「レベルが1になってますよ」


何だそんなことか…1!?


「何時からだ…?何かの冗談か?」

「あの…ウル様のお母様とお別れの際にレベルがすごく下がったのですが…」


何故そんなことが…待てよ…そう言えばジョブチェンジの秘儀は限られたものにのみ行えるという話だが王妃なら出来るのか…だが何のためにそんなことを…勉強の為か?やるべきことは無いが、やっておくことがあったことを思い出したので立ち上がる。


「ハレ、俺はちょっと外に出て鍛錬してくるから飯の準備を頼む」


ハレは了解しましたと頷いた。天幕の外に出てスフアソラをアイテムボックスから取り出して振り回す。


「ふむ…別に力が増大したわけでもないし衰えたわけでも無い。魔力の色が濃くなったような…そうでも無いような…」


魔力の色は蒼だが、変わった様にも見えない。もしかしたらと思い鏡を取り出し自分の顔を見る。母に良く似た自分とは思えない美しい顔を見ると吐き気がしたが、鏡で見ても特に体表の魔力に気になる点は無い。というか魔力資源は光を反射するのか、光や空気の類だと思ったが鏡に映るのか、知らないことがまだまだ沢山あるな。

スフアソラで地面の小石を高く跳ね上げ、先端の刺先で突いて小石のど真ん中に穴を空け、スフアソラを素早く引いて跳ね上げた斧刃で二つに分割し、鉤爪と刺先で二つに割った小石を刺す。小石は地面に落ちること無く斧槍の奇妙なオブジェになってしまった。


「…手の平に収まる小石を親指サイズに分割して斧槍にくっ付ける…ふんっ実に馬鹿げた技術だ…こんな才能あってもな…」


スフアソラを振りかぶって地面に叩き付けて、その後も何度も何度も全力で叩きつける。だが銀色の神聖武器はまるで変形しない。斧刃を見てみると刃がなめた様子も無く、刃毀れも無い。辺りには重機で掘り返したような跡が残っただけだ。何の意味も無い行為だし気分も晴れない。


「こんな武器は砕け散ってもいいんだがな…」


リュウは俺がオカシクなったと思ったのか、爬虫類風の生き物らしからぬ怪訝な目で俺を見ている。才能…真魔道大全も読み解けるのだろうか?スフアソラを放り投げて一冊の本を取り出してぱらぱらと捲る。長さ3m41cm重さ約10kgの斧槍が落ちたボスンという大きな音がする前にはもう分厚い本を読み終わってしまった。


「…一瞬で内容を暗記できた…歴史上の天才と言われる人間ってのはこんなことが出来たのかねぇ…」


ぱらぱらと本を捲っただけで暗記できて、更に一騎当千の武芸の才能を持つ。これ程の人間は地球の歴史にも余り居なかった様に思えるが、所詮前世の非才浅学男の知識など当てにならない。それに俺に天才と呼べる程の才能が有ったとしても前世と同じく何も出来なかったのだ。俺がこれまで出来たことといえば竜頭人間を初めとした魔物退治位のものだ。RPGなら誰でもやってることだ。比肩する者の無い才能を持ってしても何を成す訳で無し結局母も救えなかった。


「一体俺の人生って…後悔しないと決めたんだけどなぁ…」


グ~キュルルという音が鳴った。こんな時でも腹は減る。そういえば昼飯を食っていなかったと思い出した。スフアソラと真魔道大全を収納して天幕に入る。身体についた土を払うのを忘れていたがどうせ天幕など仮の住まいだ。所詮上等な野宿にすぎないのだから多少汚れていても別に良いだろう。


「飯」

「今日は熊さんスープとパンですよ」

「またパンとスープか、偶には麺が食いたいな」


この辺りに麺を食べる文化など無いことは知っているが、つい不満が口に出てしまった。別にハレには何の落ち度も無いというのに我ながら自分勝手で粗暴なことだ。自分の発言で気分が滅入る。何とも呆れた話だ。俺などハレに嫌われて刺されてしまえば良いのだ。


「メンってなんですか?」


ハレは屈託の無い笑顔で俺の不満を気にした様子も無く俺に聞き返してきた。だが麺など13年以上触れていない上に、俺に料理の知識など無い。説明をしようと麺のことを思い出すが、前世の知識自体は一字一句思い出せるのだが、知識の中身が無いので説明は不可能に近い。


「麺というのはだな…麦とかの粉を固めてだな…細く長くしたものだ…」

「要するにパンを細かくしたものですか?」

「いや、そうじゃなくてだな、麺はスープに入れて食べるんだ」

「…?なんでそんな事するんですか?」

「それは…旨いからだ」

「聞いたことの無い食事です…ウル様はやっぱりすごいです!そんな知識まで持ってるなんて!」


やっぱり・○○は・すごいや!というのは前世知識では禁断ワードとして記録されているが、ハレの笑顔の前には禁句など関係無い。詰まらない事でも褒められると矢張り嬉しい。苦笑して言葉を返す。なんだか照れくさい。俺はいじけていただけで、不平を言った小さい男なのにハレはそんな俺を慕ってくれている。


「今度、麺作ってくれるか?」

「頑張ってみます!あ…でも粉って何の粉ですか?」

「麦か何か穀物の類の粉だと思う」

「では何処かの街で買いますか、パン屋さんなら分けてくれるかもしれません!」

「いや、その必要は無い。ハレ、俺は街を…国を造ることにした」


俺にはハレに褒めてもらいたいという欲が出てきた。国を造り、見たことも無い文化で満ちた世界を見せればハレは俺を尊敬してくれるだろう。今よりももっと尊敬されたいのだ。それだけが目的というわけではないが、主な目的はそれだ。彼女を王妃にしよう。


「ウル様なら絶対出来ます!時間はかかるでしょうが、一生ついてきます!」

「すぐに出来るさ、真魔道大全の力を持ってすればな」


あの本に書かれた魔術の中には市長体験ゲームも真っ青な魔術が載っていた。隕石を降らせたり怪獣を呼び出したりは簡単に出来るそうだ。ちなみに1項目に書いてあったのは避妊魔術で、最後に載っていたのは妊娠促進魔術であった。真魔道大全を著した大魔導師マは何を考えてこんな並びにしたのやら。

魔力資源が見えない者には読めない特殊な文字で書かれた書物には、大道の造り方まで載っていたが、邪神教団の連中の作り方は載っていなかった。やはり時代がずれるからか、ブカドハムラは真魔道大全を知っていたからてっきり関係があると思ったのだがな。

他の書物に何か手がかりでも無いものかと思ったが、今は腹が減っているので飯を食う事にした。ベルセ・フォリスのスープは牛と豚の好いとこどりのような味で実に旨い。隣には巨乳の美少女が居て旨い飯を作ってくれる。何だ、俺幸せじゃないか。

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