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ウルファス物語  作者: ろーき
第2章 放浪編
15/50

心地良い朝

「なぁこの行軍って何が目的なんだ?」

「さぁな、村の板壁直すだけにしては多すぎるよな。どっか攻めるんだろ」

「でもよぉこっから攻めるところなんてあるか?」

「ラスナ男爵が交代したって話だからその牽制かな」

「牽制…多すぎだろ。無駄な行軍なんて金の無駄だぜ」

「滅多なこというなよ。それに俺達は兵役を果たせるんだから金貰えるんだぜ」

「けっ!どうせたいして貰えないんだから、故郷で畑耕してる方がよっぽどいいぜ」


朝っぱらから仕事をしている兵士達の話を使い魔で聞くと、この行軍の意図を理解している者は少ないようだ。それにしても村の壁をもう完全に直しているのは、流石だ。資材や食料も大量に持ってきていると分かったが、山を越えるには平地を行くのに10倍以上の兵站が居るからやはり少ない。

兵士達の噂にはさほど有益なものが無いと分かったので、使い魔を公爵の天幕に向かわせる。使い魔は普段使う水製でなく、風で創った不可視の使い魔なので探っているとはばれない筈だ。

公爵の天幕は既に大勢の騎士や官僚が集結しているが、まだ誰も天幕に入っていない所を見ると公爵はまだ起きていないようだ。


「公爵はまだ起きられんのか」


立派な鎧を着た騎士が厳かな声でため息混じりに口を開く。盾に描かれた指輪の紋章からオルガでも有名な騎士、ガウラードだと分かる。確か年はボターより一回り上で、オルガの東から来る蛮族を何度も撃退したそうだ。

立派な騎士の意見に賛同しているのか、周りにいる者達も口々に喋りだす。


「まったく…突然行軍すると言い出したのは兎も角…どうせまた女遊びで寝過ごしたんだろう」

「うむ、だいたいどこを攻めるのだ」

「将軍方も御存知無いのか?」

「文官達がなにか吹き込んだのでは無いのか」

「まさか、だいたいここからどこを攻めるのだ」

「ふむ…ボター卿が魔物の襲撃で傷を負ったそうだが…」

「応援にしては多すぎるだろうに」

「だがボター卿ほどの豪傑を…」

「第一の槍は衰えていたのさ。大体魔物の死体が1つも無い。当地には魔術師など居ないはずだ。40体近いトロルの死体を数日で全て片付けるなど魔術師以外にできるものかよ」

「魔術騎士が居るのだろう。まだ若いそうだが」

「どの道1人では無理だ。ボター卿が吹かしたのよ」


その後も騎士達と文官達のおしゃべりは続く。オルガ公爵はどうやら軽く見られているようだ。もしかするとその辺を打開したくて行軍を始めたのかもしれない。さて、ドゴが居ないが…何処に行ったのやら。

天幕から立派なマントを着た美形の男が現れた。従者が持っている盾の紋章から彼が公爵だと分かる。公爵は鎧を着ていないが、騎士の筈だ。鎧を着ていないのは…まだ朝の会議の時間では無いのかもしれない。まぁ村人もぼちぼち働き始める時間だが。

公爵の姿を認めると天幕の周囲に居る人間が全員一斉に平伏して公爵の声を待つ。


「お前達朝早くから余の天幕の前で何をしておる?」


公爵はまだ30になるかならないかという年頃に見える。服の仕立ても緑髪の艶も全てが実に貴族らしい華やかさだが、彼の身体は騎士らしい剛健さも持っていることが分かる。尤も周りに居る歴戦の騎士達に比べればもやしみたいな物だし、傷もないから実戦経験は無いのかもしれない。

ウラードが周りの人間を代表して公爵に問いかける。こういう時に話しかけるのは彼が最初らしい。


「オルガ公爵閣下、ご機嫌麗しゅうございます」

「余は何の用かと聞いたのだガウラード将軍」


公爵は実に不満げな表情だ。ガウラードに不満を持っているのか、単に朝を邪魔されて憤っているのかは、彼らの人間関係を知らない俺には判然としない。


「恐れながら申し上げます。この度の行軍について軍に疑念が広がっているのです」

「ふん!卿達さえ分からぬか…ははっははは!」

「閣下?何が面白いのですか?」


突然公爵が笑い始めたので周囲の人間も何やら奇妙な表情でどよめいている。


「これからエクターを攻めるが…卿らにさえ分からないのならエクターの蛮騎士にも分かる道理が無いな」


周囲のどよめきが更に大きくなった。

「エクターを!?」「ここからどうやって…」「まさか山脈を…」「そんなことはカリグス崩壊から100年例に無いぞ」


ガウラードが立ち上がって、周囲のどよめきを手で制す。凄いな、一斉に静かになった。ガウラードが公爵に向かって問いかける。


「閣下、立ち上がって話すことをお許しください」

「構わんぞ将軍」

「どういうお積りですか?」

「だから言ったであろうエクターを攻めるのだ」

「それには戦力が足りません。あの国を攻めるには100万の軍勢でも足りません。更に山を越えるとなれば兵は減るでしょう。この戦力ではどの道無理です」

「ふふふ、そんなことは無いのだ。私には大道を再び造る手立てがあり、エクターには内通者がいるのだ」


大道とはカリグスが倒れる少し前にある魔術師によって崩壊させられた大トンネルである。これがあればエクターとオルガ公国の行き来を活発に出来る。それには山脈の下に最低40km位の長い穴を掘らなくてはならないのだが。

大道を開通させたのは魔道大全を著した大魔術師マであり、彼にしても自身の教え子12人と共に30年近い年月を使って開通させたのだから昨日今日で開通させるのは現実的には不可能だ。

ガウラードは年若い公爵を諭すような調子で穏やかに問いかける。


「閣下、例え大道や内通者があったとしてもエクター王国は竜騎無双で知られる国です。やはり戦力が足りません。急な行軍の為用意できませんでしたが、オルガの総力を結集させれば勝ち目は…」

「卿は怯えているのか?まぁいいさ、私の手の者が今日の昼には大道を開通させるから楽しみにしておれ」


そう言って公爵は天幕に帰っていく。将軍はまだ言いたいことがありそうだが、我慢しているようだ。周囲の人間は立ち上がって呆れた様子で話を再開している。


「大道を開通などと…」

「もしできたら喜んでエクターに攻め入ってやるわ」

「無茶を言うなエクターは平原を制圧したという話だぞ」

「だが王が長年不在という噂ではないか、ワシは嬉しい。公爵閣下が世界を制覇する意志を持たれたのだ」


口々に勝手なことを口走っている。さて…大道を開通させる手の者というのはおそらくドゴのことだ。そして内通者というのも奴の筈だ。だが公爵の側近には何も知らされている様子は無い。もしやベロベス大臣と同じような状況なのだろうか。大臣はエクター王宮を掌握するために邪神教団を利用したようだが、教団の存在を明らかにはしていなかった。

もしも公爵がエクター攻めを成し遂げたのなら、公爵の意見は重臣達の考えを無視する事も出来るくらいの権勢になるかもしれない。大臣の代わりを教団は求めているのだろうか?そもそも大臣まだ生きているんだろうか。元服した頃に使い魔で集めた情報には大臣の訃報は無かったが、不健康そうな男だったと記憶しているので、もう死んでいるかもしれない。

どの道状況を把握するには根気良くいかなくてはならない。ドゴも見当たらないし、もうできることが無いので、使い魔を霧散させて意識を身体に戻す。

小屋の中に意識を戻すと、ハレはまだ起きていなかった。何時もは俺よりも少し遅い位なのに珍しい。まぁ昨日は体力を使っただろうから仕方ない。

とりあえず何時召集が掛かるか分からないので、用を済ませてから鎧を装着しているとカチャカチャ音の所為かハレが起きた。


「ウル様っ!あっ!もうこんな時間…」

「まだそんな時間でも無いぞ。何時も朝餉を食ってる時間くらいだ」

「すっすぐご飯を…」

「もう作ってあるぞハレに比べれば粗末だがな」


何時もの黒パンと芋のサラダである。ハレはなにやらプルプル震えている。目には涙まで滲ませている。


「ど、どうした?」

「ごめんなさいウル様。わたし役立たずです。すぐ出て行きます」


小屋から出て行こうとしたハレの腕を掴んで止める。飯を作ったのが気に入らなかったんだろうか。飯の用意は下人のすることなので本来騎士のすることではないが、俺の中にある日本人的意識が飯くらい自分で作れと囁いたので仕方ない。だが悪いことをしたような気分なので謝ることにする。


「すまん、お前の職分を取る気は無かった。俺が無神経だった」

「違います、ぐすっ…ウル様は何も悪くありません」

「ならなんなんだ?理由を言ってくれ。お前が居ないと困るんだ」


手を放してハレの話を聞く事にした。ハレは座って涙ながらに話し始めた。


「ウル様…昨夜はお楽しみいただけましたか?」

「伝統的なセリフだなハレよ。ふふっ楽しみどころか大楽しみだったぞ」

「わたしは…途中から記憶が無くなりました…ウル様のお供が最後までできませんでした」

「そう云えば気絶していた様な…お互い初めてだから加減が利かなかったな。すまん今度から気をつける」

「わたしは嬉し過ぎて気絶したんです…」


ハレは恥じ入っている表情だ。実にエロイ、そういえば起きたばかりで服がはだけているので色々見えている。この格好で外に出すわけには行かないな。


「楽しかったなら好いじゃないか」

「楽しすぎました…ウル様は何においても素敵すぎます…このままでは、わたしはウル様を夜毎求めてしまいます」

「俺もそう思ってる。いいじゃないか似たもの同士で、これからも一緒に楽しもう。辛い時はお互いにその辛さを和らげてくれると嬉しい」

「ウル様…こんな役立たずを手元に置いてくれるのですか」


なるほど、俺と自分の能力の差に参っているのか、だが黒パンと芋サラダの貧相な朝食を見れば俺に料理スキルが無いことくらい分かると思うが、料理を作れるということだけが取り柄だと思っているハレにはショックだったのだろう。


「というか今更遅い。お前は他所に行かせん」


俺は鎧を着ているので抱きしめると痛そうなので撫でるだけにしておく。撫でるとハレも少しは落ち着いてきたようだ。やはりボディランゲージは大事だな。


「さっさと飯を食え。俺はもう済ませているからな。食事の後にちょっとやって貰う事がある」

「お役に立てますか?」

「お前が役に立たなかったことなど無い」


本心から云っているのだが、中々信じてくれない。まぁ俺もハレの言葉を中々信じなかったのでお互い様だ。やはり似たもの同士である。

ハレが朝飯を元気に平らげているので、俺はレベルや職業が見えないものかと目を凝らす。書物を紐解いて分かったことだが、ジョブチェンジ呪文という秘儀があるらしい。ジョブチェンジをするとそれまでの経験に加え、新たなる力に目覚めるらしい。だが秘儀という位なので知っている者は限られているそうだ。

なんとか方法が分かれば、邪神教団に対する武器になるので何とか習得したい。だがレベルや職業を俺は認識出来無いので変える方法も良く分からない。人間の魔力には色があるので、その色の種類が職業なのだろうか?そういえば村人は魔力は茶色だが騎士の多くの色は青、そして俺の色は蒼天の如き蒼だ。これを変えれば職業を変えられるんだろうか?カラー変更なんてどうやってやればいいのやら。

心の中でジョブチェンジ・カラーチェンジと唱えたり口に出したりしても変化は無い。この世の魔術は全て魔道言語でなくては発動しないのだ。まぁ魔力資源を式の形に整えても発動するが、やってることは同じだ。試しに{cd/chανgε/job}と唱えたりもしたが別に変化は無い。

正しい魔術式でなくては魔術は発動せず集まった魔力資源は霧散する。普通の魔術師は自分の体内の魔力資源しか使え無いので呪文を如何に失敗しないかが1流と2流を分けるらしい。俺は体内の魔力資源など使わないので無尽蔵に使えるので多少呪文を失敗しても関係無いが。

色々と試しているとハレが飯を食い終わったので、ジョブチェンジをハレと一緒に実験することにした。


「御馳走でしたウル様。それでわたしに出来ることとは…?」

「うむジョブチェンジの秘儀は知っているか?」

「…?なんですかそれ」

「職業を変える方法をお前で実験したいんだ」

「お役に立てますか?」


もちろんだと頷くとハレは実に好い笑顔で返した。


「それじゃあとりあえずレベルアップしてみてくれ」


ハレは分かりましたと頷くと、レベルアップのポーズをとってジャンプした。実に豊かに揺れていて眼福である。野良着でもそそるな、今夜は着たままするかな。

さてそれは措いておいて、ハレの体の魔力は俺の見た所変化した様子は無い。やはり魔物を倒したわけでも無いからレベルが上がらないのだろうか?


「レベルアップしたか?」

「はい。多分ウル様が多くの魔物を倒したお陰です」

「幾つになった?というか今までは幾つだったんだ」

「10だったのが…37になりました」


ふむ、上がってたのか、だが別段魔力が増えたようにも見えない。レベルアップでパラメータの類が上がる訳では無いらしい。魔力=パワーというのがこの世の原則だ。魔力を集めた木刀は鉄の柱を容易く両断でき、魔力を足に集めれば走るのが速くなるのだ。それを効率的に行うのが各種強化呪文である。強化呪文を使った状態は魔力が増えたとわかるが、レベルアップした様だが普段のハレと変わらない。やはりレベルと強さは関係無いのだろう。

冷静に考えるとジョブチェンジ呪文は糸口さえないので実験なんて出来そうも無い。ハレに先程試したことをやってみたり呪文をかけたりしたが、彼女の魔力の色は変化しない。ハレも職種が変わったとは感じなかったようだ。やはり邪神教団との戦いには俺の鍛えた技で挑むしか無い。だがその前にやることがある。


「ハレ、これからお前に呪文をかける」

「呪文…蛙にされるんですか?」

「そんなことしない。お前は俺の可愛い女だ。だが男爵の様な下種に狙われることを考えると、厄介ごとを避ける為にお前の姿を醜くするが…いや止めておくか」

「ウル様に余計な厄介ごとを抱えさせたくありませんが…ウル様が判断なさることに全て従います」


う~んどうしようか、冷静に考えると上辺だけとは云えハレの姿を変えるのはあまりにも自分勝手な気がする。


「ハレ、俺の役に立ちたいか?」

「もちろんです。わたしの顔が災難を招くなら…どうぞお焼きになってください。ウル様にはそれが許されます」

「俺はそういう趣味は無い。俺はお前を他の男の目に晒したくないのだ。では…呪文をかけるぞ」

「はい…どうぞお好きになさってください」


ハレは両手を広げて目を瞑っている。無防備な唇と胸を弄びたい気持ちを抑えて、変装呪文を唱える。

{cd/gaιn/Ψou/fαce/βurανια}


魔術が成るとハレの体表が桃色の魔力で覆われる。さて、俺の目はこういう魔術を無力化できるので姿が変わったのか分からないのでハレに確認させるためにアイテムボックスから鏡を取り出す。

ハレは沈痛な面持ちになる。そんなに酷い顔なのだろうか、もしや又変なことを考えているのかもしれないと思い。兜と面頬を脱いで彼女の唇に長いキスをしてやる。たっぷり5分間唾液を交換しつつ身体をまさぐったので口を放す。


「ハレ、俺の目は真実を捉える。お前が俺に忠実な美女だとすぐに分かるのだとちゃんと知っているから安心しろ」

「ウル様、わたしが嫌いになったから醜くして追い出そうとしているわけでは無いのですか?」

「そんなこと考えた事も無い。お前を絶対に手放さんよ。さてそのことを分からせてやろう」


そういって彼女の後ろに回り、豊かな体を撫で回す。


「ウ、ウル様!まだ朝ですよぉ…んっ…」

「気にするな、どうせ呼び出しがあるまで暇だ。その間に俺がどれだけお前を愛しているか教えてやる」


ハレはどうも俺の行為を深読みする癖があるので、もっと俺の言葉を素直に受け取るように調教してやろう。首筋を舐めれば嬌声を上げ、胸を揉めば身体を揉みやすいように開き、股間をまさぐれば足を開く。

まったく身体は素直に反応するくせに疑い深い奴である。俺のことをもっと信じられるように俺のことを教えてやるとしよう。俺のエロさはこんな物では無いのだ。昨夜の3倍はエロイことをしてやろう。なに、気絶しても回復呪文を唱えれば覚醒はするのだから…さいわい小屋の周りには民家など無いのでどれだけ騒いでも問題無いのだ。


「ふゅんっ!ウルしゃま~駄目っダメですぅ…こんな朝かりゃ…」

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