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ウルファス物語  作者: ろーき
第2章 放浪編
14/50

楽しい夜

葬土のゴグの居た軍勢は旗から云ってオルガ公爵の手勢であった。もうすぐ夜だと言うのに何故かこんな小さな村に大勢の軍勢…恐らく万に上るだろう軍勢を公爵直々に引き連れてきた。使者の一団──アサイラも村を出た時と違い立派な鎧装束で使者の一団に混じっていた──をボターに目通りさせ、俺も屋敷に引き上げた。村の壁も彼らの工兵が明日造りなおしてくれるそうだ。だが…確認するべき事は腐るほどある。

屋敷の一室で傷を負って寝ているボターはあまり頼りになるように見えないが、俺が頼れる人は他に居ない。使い魔を使って聞き耳を立てる者が居ない事を確認してからボターに質問する。


「ボター卿、お聞きしたい事がございます」

「その前に聞きたい事があるのだが、ウルファス」

「なんでしょうか?」

「貴方の本名は何と仰るのですか殿下?」

「…それに答えれば…私の質問に答えてくれますか?」


寝たままのボターは頷いた。俺は自らの出生の経緯を話した。王子として産まれたがアンリエットに浚われてベイ・リンの家で暮らした事、その後ラグの元で学んだ事を話した。


「なるほど…つまり殿下は正統なエクターの王子でしたか…どうりで王妃様に似ていらっしゃる」

「母を御存知で?」

「20年前にエクターに武者修行に行った時に王宮でのトーナメントの際に遠くから見ただけです。当時まだ王女は貴方とそう変わらないお年でしたが、良く似ていますよ」

「そうですか、ですが…証明する手段などありませんよ。信じるのですか?」

「そう、そこです。貴方は自らの正統を証明する手段を持たない。それについてお聞きしたい。貴方の目的は何ですか」

「そう畏まらんでもいいですよ。以前どおりでね。目的…宝物庫に閉じこもった母の亡骸を取り戻したいだけですよ。そして願わくば邪神教団の連中を殺すことだ」


俺は本心からそういった。もしもオルガが邪神教団と繋がっていたら…ボターの返答次第では、オルガを敵に回す事も視野に入れるつもりだ。ボターは俺を値踏みするような視線だ。さっきと比べて砕けた調子で話し始めた。


「…ふむ。お前はエクターを再興するつもりは無いのか?」

「再興といっても別に滅んだわけではないだろ。俺の兄弟が治めているんだから」

「さて…どうかな。だが将になるつもりも無いのか?お前なら人も集められるぞ、それにことによっては王位にだって就ける」

「あくまでも母の安息が願いだ。それに今更エクター王家に忠を持つ者も居ないだろうさ」

「さて…どうかな?それで俺に聞きたいことって何だ?」

「公爵がエクターを攻めるんだろう?どうやって山を越えるつもりかは知らんが、奴の軍勢には俺の敵が居た。何か知らんか?」


ボターはなにやら思案している。


「敵とは…公爵その人か?それとも騎士の誰かか?」

「岩の肌をした7シャル程の大男だ。そいつは邪神教団の葬土のドゴという怪物だ。俺の父を殺すたくらみをしていた。そしてたくらみの後に父は殺された。奴らが犯人だ」

「そんな男が陣に居るとは…何が起こっているのやら」

「知らないのか?」

「少なくとも俺が主都で仕事をしていた頃にもそんな異形の男が居たという話は聞かなかった。それに…どうも時機がおかしい。お前の話通りならエクターの王が死んでからもう10年近い。王の不在期間の間エクターに攻め入らなかったのに、なぜいまさら攻めるんだ。もうエクターの王子…つまりお前の腹違いの兄弟は元服して王になれる歳だぞ」


確かにおかしい。もしも邪神教団に山を越える手段があって、尚且つオルガの手先若しくはオルガの黒幕ならもっと早く攻め入っていなければおかしい。俺が山の向こうで元服した頃にはエクターの隣国は制圧されて3年は経っていた。攻めるなら制圧してすぐか、隣国と交戦している時に攻める筈だ。


「確かに…何故今なんだ?それにこの頃の魔物の襲撃は…無関係なのか?ボター卿は何か知らんのか?」

「全く知らん。俺がここを賜ったのは5年前だ。それ以前は主都で禄を貰っていた。だが山を越えてエクターに攻め入るなんて話は無かった。主都での新年会でも全く聞かなかったな」

「う~ん。とりあえず…明日にはあんたの知り合いも見舞いに来るだろうからその時に聞いてくれるか?」

「構わんさ、代わりといっては何だが頼みがある」

「俺の血筋を話さないと約束できるなら大概の事は聞くつもりだ」

「約束する、誰にも言わん。俺はこんな身体だからエクター攻めには加われない。だがさっき帰ってきたアサイラは…騎士の位を賜ったそうだ」

「それは目出度いな」

「あんな未熟者を騎士になど…あれに騎士を授けた輩は、どうも俺の家を取り潰したいようだ。俺は娘が可愛い、亡き妻との唯一の子だからな…ウルファス卿、あの子の陣営に参じてくれるか?卿は俺が見た騎士の中ではもっとも強いから、手助けしてくれれば安心して寝ていられるのだが」


別に構わないと頷く。俺の目的を果たすにはボターの交友関係が必須だ。邪神教団とオルガの関わりを知っておきたい。


「すまんな…アサイラはエクターに攻め入る事になると思うが…いいのか?」

「構わんさ、俺の目的は母の救済だ。王国民とは真面目には戦わないがお嬢さんは必ず守るよ」

「そうか…どうか助けてやってくれ。代わりにドゴとかいう男を調べておく」

「感謝する。そうだ、ハレは上手く働いているか?」

「ん?あぁ、トロル襲撃から3日間の間だけだが、良く働いているよ」

「立派な下人か?」

「まぁ…立派だな、俺がもうちょっと健康なら妾になってほしいくらいだ。実に立派なモノを持ってるよ」


ボターの布団の一部が盛り上がっている。我ながら視力も注意深さも優れている。野生の獣が茂みに隠れていても見つけられる位の洞察力で男の勃起は知りたくなかった。布越しなのに高い能力のお陰でサイズと形まで分かるのは天才故のデメリットだな。

咳払いをして口を開く。


「そういう事でなくてだ。下人としてどこに出しても恥ずかしくないくらいか?」

「そうだな。文字も読めるし、山羊の世話も上手いし料理も素晴らしい。俺に粥を出すような心得のある下人はあの子だけだった。長い付き合いの使用人は重傷の俺に魔物肉を食わせようとしやがった。この身体には却って毒だ。もう少し良くなってからでなくては逆に血の巡りが悪くなる」

「あんたは病気なんてした事無いから長年の使用人は戸惑っているのさ」

「そうだなッハハッハ!まぁとにかくハレは立派な下人だよ。その主人のお前はとても立派な騎士だよ」


ふむ…これでハレを抱くのに支障は無い。ボターに挨拶して屋敷の外に出る。さて…一応盗聴器代わりに使い魔を一匹つけておく。ボターが裏切らないとは限らない。俺に娘を守らせたいようだが、そんなことは奴の旧知の騎士に頼めばいい事だ。俺は代えの利く人間でしかない。

村の中は夜だというのに村人達が起きてうろうろしている。その中の一人、村の長老というわけでは無いが人望のあるイニ老人が緊張した面持ちで話しかけてきた。


「騎士様、村の外の軍勢は一体…」

「オルガ公爵の軍勢だ。つまり味方だ」

「魔物の襲撃から守って下さるので?それにしては多すぎるのですが?」

「村の壁を直してくれるのは確かだそうだ。食料を奪いに来る事も無いから安心しろ」


老人は頭を平伏して礼を言った。確かに軍勢は多いが、多いからといって山を越えるのは難しいと思う。俺の越えた山は富士山より高い上に自然の驚異が険しい山脈だ。とても軍勢が行軍できる場所では無い。ハンニバルでも無理だろう。

村の外に放った使い魔の意識を一瞬だけ己の意識と交換する。俺の目に映る村の景色が一転して暗い森に変わる。ドゴは騎士達の宴会を遠巻きに眺めている。どうやら使い魔には気付かれていないらしい。だがそれほど妙な行動をしているわけでも無い。それにあの日見た他の邪神教団の奴も居ない…透明人間は居るかもしれないが、ドゴは喋る気配も無い。これでは調査の意味が無い。

使い魔の意識を手放す。森の光景から一転して田舎の村になった。もうやる事も無いので小屋に帰ろうとしたら、アサイラが村の入り口の方からやってきた。なぜか馬に乗っている。偉い人から拝領したんだろうか、俺は未だに乗り物が無いのでちょっと羨ましい。


「ウルファス卿、こんな夜分にどうしたのですか?」


馬から降りずに問うのは無礼な行為なのだが、アサイラは降りずに問いかけてきた。騎士になったばかりで降り方を知らないのだろうか、確かに緊張した面持ちだ。何故か兜を被っていないが、もしかすると作法に明るくないのかもしれない。


「アサイラ卿、騎士になられたとか、おめでとうございます。私はお父上とお話をしていただけですよ」

「その言葉に二言は無いな」


話の内容を言った訳でも無いのに二言?どうも怪しいというか、なんというか。


「お父上とは他愛も無い話をしただけですよ。疑うならどうぞお父上とお話になったら…」

「貴様…私達を裏切るつもりでは無いだろうな?」

「何故そんな事を?」

「貴様はエクターの出身だろう」

「それが何か?」

「何かだとっ!これから軍はっ…いや何でも無い。とにかく二心は無いな」


もちろんだと頷く。

既に軍勢を動かしてはいるが、エクター攻めはまだ公表されてはいない筈だ。使い魔達に兵士の話を聞いたところ、何故こんな所に軍を進めたのか分かっていた者はほぼ居なかった。俺とボターはここから他に攻める国も無いからエクターを攻めると考えたが、アサイラの様子からして当たっていたようだ。

アサイラは新しい馬を走らせて屋敷に帰っていった。馬に乗るのが上手い人だ。これまでは山羊にばかり乗っていたのに。まぁオルガの山羊は殆ど馬と変わらない生き物だから上手く乗れるのかもしれない。

俺もエクターに帰ったら竜を上手く乗りこなせるよう特訓…する必要はないのだろうか、別に騎士として一生を生きなくても良いのだ。進路はゆっくり考えよう。まだ12歳だしな。

いっそ母の亡骸を引き取ったら山奥で暮らすのも悪く無いかもしれない。俺は命を狙われてもおかしく無い境遇だ。無駄な争いを避けるために行動しても文句は言われないはずだ。山奥か…ハレは納得するだろうが…そうするとハーレムは造れない…うーん、むしろあんまり子供作らないほうが禍根を残さずに済むかもしれない。何せ俺は一応王子だ、子供を一杯作ると下手すると国が乱れる元だ。


「それに…転生…俺が本当に転生したなら…ハレの腹に…ひょっとすると日本人が…?」


そういうことはあまり考えないようにしていたが、俺が転生したなら俺以外も転生するかもしれない。愛した女と子供を作って、産まれたのは別の人生を送った男…もしくは女の生まれ変わりというのは、正直ぞっとする。子供を作るのに躊躇するが、性欲が強い性分なので我慢出来そうに無い。

小屋についたので靴の土を払って扉を開ける。


「お帰りなさいませウル様」

「ただいまハレ、屋敷では良く働いていたそうだな。ボターが褒めていた。俺も鼻が高い」

「鼻…?確かにウル様は立派なお鼻です」


この表現は通じないらしい。どうも時たま前世の表現をこの世でも言ってしまうことがある。気を付けなくてはおかしな言葉を操る人間に思われる。


「とにかく良く頑張ったな、褒美をやろう。なにがいい?」

「御褒美なんて…当たり前の事ですから。それとご飯が出来ています。えぇっと蛇のスープ…です」


こんなスープを飲める日が来るとは思わなかった。西遊記の世界が現実になった気分だ。いやあの映画のスープは蜥蜴だったかな?まぁどっちも爬虫類だ、この蛇の肉は魔物肉なので厳密には違うんだろうが。

茶色いスープは一見魚か何かを煮込んだように見える。だが匂いがどうも独特だ。クサい…とは違うが癖のある匂いだ。ちょっと油っぽい感じの匂いだ。だが悪く無い。不思議と食欲をそそる匂いだ。俺の中にあるくさやや納豆の知識がそう感じさせるのだろうか?ハレは微妙な表情なのでやっぱり臭いと感じているのかもしれない。


「旨そうだな、いただきます」


座って皿に入ったスープをスプーンで飲む…う~むねっとりしているが旨い。前世知識で云うあんこう汁の味に似ている。味が濃いくせに何杯でも飲める。ハレは恐ろしいものを見る表情だ。


「不気味か?蛇を食う男は」

「いえ…お武家様は魔物の肉を食べるものですから…」

「お前も飲め、旨いぞ。流石はハレ、料理が上手い。魔物の肉なんて初めてだろうにな」

「えっ…遠慮しま…」

「飲め、滋養になるぞ。美容に好いぞ」

「蛇がですか…確かに魔物は…滋養に好いと言いますが…」


恐る恐るスープを飲む彼女の口は小さくて可愛らしいと思いながら、黒パンを頬張る。濃い味のスープに味の薄いパンは良く馴染む。こういうバランス感覚も彼女の料理の上手さだ。上手い事蛇のスープと黒パンの味を合う様にするものだ。一体どういう技なのやら。

ハレはスープの味がお気に召したのかどんどん飲んでいる。俺の汁も今夜飲んでもらうかな。スープの中に残っている蛇の身をかじる。白身魚に似ているな、好い歯応えだ。蛇は10mほどあったから食える部分はまだまだあるので、これからも食うことにしよう。


「ご馳走様っと…旨かったぞハレ、先に鍋を洗っておく」

「えっ…いいですよ。わたしが…」

「気にするな」


鍋と自分の食器をたらいで洗う。そしてさりげなく普段俺とハレの寝床を隔てる衝立をアイテムボックスに放り込む。準備は万端である。その前に地下に通じる扉を開けて温泉に入っておこうかと思ったが、今夜は一緒に入りたいものだ。

ハレも食べ終わったので、たらいで食器を洗っている。

洗い終わった彼女に俺と一緒に風呂に入るように促したが、入らないそうだ。まぁこの世と前世…日本の文化の違いだ。この辺りで1日2日入らなくてもそうそう汚れはしない。


「水は無尽蔵に作れるんだぞ俺は」

「それでも…やっぱり贅沢です」


贅沢か…そういう認識か。確かに小屋に住む身としては、毎日風呂に入るのは贅沢かもしれない。風呂から上がってから、柔軟兼筋力トレーニングである騎士式体操を身体が火照っている風呂上りに行うと効果が高いので、サボらずに3セット行う。ハレが来てからこうした日常の努力を欠かさない事を思い出したので意識の改善が出来たのはありがたい。今日やるべき事が終わったので、文字を勉強しているハレに問いかける。


「さて…抱くぞハレ」

「ウル様。女には月のモノがございます」


くっ!前は俺の成長痛で今度はハレの痛み…いや生理か。しかしこんな都合よく生理になるんだろうか、生理…ナプキンとか要るんだろうか?俺の知識には生理用品の知識はタンポンとナプキンを使うという知識はあるが、使い方や構造までは知らない。吸水性が…大事なんだよな?つまり血を拭く物が必要なのか。


「ハレ…俺には良く分からんが…布が要るのか?」

「何の話ですか?」

「だから…血が出るんだろ」


俺は一体何を言っているんだろう。


「ウル様?わたしは別に血なんて出てませんが」

「じゃあ…生理じゃないのか」

「ウル様?生理ってなんですか?」

「それは…その…毎月血が出る日だろ」

「あぁ…わたしは多分…その…来週ですね」


ハレは赤面しながら答えてくれた。


「ん?生理じゃないなら…なんで月のモノの話を…」

「いえ…ですから…女は体調によっては…そう云う事が出来無い日もございます」

「要するに…今日は嫌なのか?」

「その…まだ…心の準備が…それにわたしはまだウル様に相応しい人間では…」

「お前の事はボター卿も褒めていた。下人としてはどこに出しても恥ずかしく無い人間だ」

「えぇっと…その…まだ…相応しくないと思いますウル様は立派な…」


なんか面倒臭くなってきたので、ハレを押し倒す。


「ハレ、俺が嫌いか?」

「強引なウル様も…好きです」

「そうか、俺は今日生涯の仇敵に出会った。状況によっては…命を投げ出す事になる。悔いの残らないようにしたいんだ」

「ウル様…お父様の仇が見つかったのですか?」

「あぁ…場合によっては…死ぬかもしれない…不安なんだ」

「わたしでお役に立ちますか?」

「お前を抱ければ不安なんて消える。情けない主人ですまん」

「いえ、そう云うことなら…どうぞウル様…」


灯りを消して、服を脱ぎ彼女の服も脱がせる。不安か…単なるスケベ心からなんとかして彼女を口説き落とそうと考えて出た言葉だが…案外俺は本当に不安を抱えているのかもしれない。

そんな事はどうでも良いとばかりに、彼女の豊かで柔らかくも確かな手応えの胸を揉む…あぁ好い気分だ…12歳だが童貞を卒業できるようだ…しかし俺は好色過ぎるな…いつかこれが元で身を滅ぼさないと良いのだが。

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