ムドウフ
ダークエルフの村【ムドウフ】は地下にある空洞に出来た村だ。
入り口だけ砦のような建物があって、そこから地下に降りる階段がある。
地下には光を放つ草花がそこら中に生えていて暗さはない。
広さは東京ドームくらい。半分が畑や森になっていて、もう半分が村になっている。
地下になんで森が?って感じだが、それはエルフの能力で昔から少しずつ増やして行った物らしい。
ムドウフは地上のような血生臭さはなく、澄んだ空気があった。
放牧もやっているようで、地上では凶暴なやキラーホルスタインがのんびり草を食べている様子は最初見た時はかなり驚いたものだ。
地上で暴れている凶暴なモンスターも子供の内にキレイな空気の所に連れて行って育てればおとなしい普通の動物と変わらない性格になるらしい。
放牧されているモンスターは基本的に乳牛として飼われているらしく、メスは死ぬまで食材にはできないらしく、俺が狩って持ってくる肉は村人にかなり喜ばれる物になっている。
村人も狩りはするのだが、地上で余裕をもって狩りができるエルフは一握りだけ。
この村では肉は貴重品なのだ。
俺が狩った肉はリンの親に渡してそれから村に分配される。
これは泊めてもらっている礼として最初に村長とリンの両親、村の若者の代表数人とで話し合って決めたものだ。
もちろん俺の狩って来た素材は村全体に分けられる量じゃないので不満の声も出たが、見知らぬ人間を泊めようとするお人よしのダークエルフはリンの両親だけだったので、そこまで文句もでなかった。
今では俺もそこそこ村に馴染む事ができている。
「お、ガンツ!今日も大量みたいじゃないか!」
「俺にもちょっと別けてくれよ!」「あ、俺も俺も!」
今の俺は血みどろで酷い匂いがする状態な訳だが、嫌な顔をしているエルフはいないみたいだった。
これは貴重な肉や素材を俺が持っているからってのもあるが、この村のみんなが優しいからってのもあるんだろう。
「そういうのは村長とかクラウスさんに言ってくれよ、殆どそっちに渡すんだから。」
「それもそうか、じゃあクラウスさんとこお願いしに行くかな。」
クラウスさんってのはリンの父親だ。
雰囲気は気の弱そうな学者風の男だ。髪は腰まで伸びていてキレイな薄紫色をしている。
目を瞑っているような細目で丸メガネをしている彼の仕事は驚く事に大工、絶対に持てそうもない木材を軽く担いで行くその姿には未だに慣れない。
あの細腕の何処にあんな力があるんだろうか?
リンに食材の入った袋を渡して俺は村長の家に向かって歩き出した。




