寝てたら知らない世界に飛ばされたんだが?
はじめまして
初めて小説というものを書いたので稚拙なものになると思いますが、生暖かい目で見てくれると助かります。
では本編へどうぞ
「表彰。男子個人組手優勝、大崎礼司殿。あなたは第○○回全国高等学校総合体育大会において、当初の成績をおさめましたのでその栄誉を讃え、これを賞します」
観客の大きな拍手と共に、俺は胸を張って表彰状を受け取る。
「おめでとう」
「ありがとうございます!」
この日は俺の高校生活で、最高の一日だったことを死ぬまで忘れないだろう。
取材陣からのインタビューを受けた後、うちの高校が取っている席に戻る。
空手の強豪校として、うちの高校はここ十年くらいインターハイに出場しているけれど、今年は俺しか表彰台に上がれなかった。
「やったな礼司!」
「ああ、本当に嬉しいよ。……よかった」
「先輩泣くんですか〜?」
「さすがに今くらい泣いても良いだろ! 生意気なやつめ!」
「きゃーセクハラですかー?って痛い痛い痛い! すいませんって泣き虫先輩!」
「まだ言うか!」
けれど、そんなこと気にせず俺の優勝を部員みんなが祝ってくれた。それが何よりも嬉しい。
俺が空手道を始めて十二年。これまでの苦しくも楽しかった練習の成果が報われた気がした。
後輩の頭をグリグリしながらそんなことを思っていると、監督が俺たちの前に出てくる。
「よし、大崎も戻ってきたしホテルに帰るか。」
「「押忍!!」」
「今日でインハイも終わりだし、明日は一日自由時間やからな。でも睡眠はしっかり取れよ?」
「「押忍!!」」
支度をしてバスで泊まっているホテルに向かう間、みんな疲れているはずなのにどこか浮ついた空気が漂っていた。
俺も類に漏れず、隣の席の友人と明日の自由時間について話していた。
「明日どこいく?」
「大崎はどこ行きたい?」
「うーん……お前らに任せるよ」
「インハイ優勝したんだしさ、お前の行きたいところ優先していいと思うぜ?」
「そう言われてもなぁ……」
「そうだ! 沖縄といえば水族館だろ!」
「いいと思うけど流石に距離遠すぎないか?」
「まあそうだよなー」
そんな話をしながら計画を立てているとバスが停車した。どうやらホテルに着いたらしい。
部屋でシャワーを浴び、部員達と夕食をとる。
夕食後、一足先に部屋に戻ると身体が疲れを思い出したのか、睡魔が襲ってくる。
眠気に逆らわず、今日の試合を思い出しながら、俺の人生最高の1日は幕を下ろした。
翌日、俺は友人たちとの計画通りホテル裏の海で遊んだ。
海には俺たち以外にも十人ほどの部員が遊びに来ていて、皆で先輩後輩関係なくはしゃいでいた。
後輩からの誘いで、キャッキャと遊ぶ女子を微笑ましげに見ていたら、隣に座っていた後輩がいきなり
「いつも思ってたんですけど、結城先輩エロくないですか?」
などと言い出した。
「……は?何だよいきなり」
「いやー、前から思ってたんですけど、結城先輩めっちゃ美人だしおっぱい大きいのにウエスト細くてめっちゃエロい体してるなーって」
「はぁ……、お前なぁ……」
「あ、そうだ! インハイも終わったし結城先輩も引退されるんで部内恋愛禁止も無くなるじゃないっすか
か! 今すぐ告ったら付き合えるかも……!」
俺は鼻の下を伸ばしながら妄想している後輩に向かってとある事実を告げる。
「あいつもう彼氏いるよ」
「……えっ?」
「高校は違うけど同中の人らしい。あいつあんまり恋愛系の話しないから知らないのも無理はないな。どんまいだ」
「えぇー……」
そんな会話をしながら自由時間の日を過ごしていったのだった。
そんな一日を過ごした夜、俺たち空手道部は開催地の沖縄から地元に帰るため飛行機に乗り込んだ。
俺は沖縄で過ごした思い出を周りの部員たちと話したり、沖縄で撮った写真をスマホで見せあったりしていたけれど、一日中遊んだ疲れからかウトウトしてしまった。
「……あれ、礼司眠くなったんか?」
「……ちょっとだけ……いや、限界かも」
「ならゆっくり寝てろ、着いたら起こすから」
「……ありがと」
俺はそのまま意識を手放した。
───────────────
ふと目を覚ますと、そこに見えたのは飛行機の前の座席ではなく知らない天井だった。
ぼーっとした頭で、その天井を見つめる。
「知らない天井だ……知らない天井……え!?ど、どういう状況!?」
ようやく回った頭で周囲を見渡しても景色は変わらない。
知らない部屋の、知らないベッドで寝ている。
部屋を詳しく観察しようにも、あるのは簡素なベッドと机と椅子だけ。何も分からない。
混乱したままの頭で扉を開けて部屋を出ると、似たような扉が数個と下の階へ続く階段があった。
階段を降りようか悩むが、ここにいても何も分からないと、少し落ち着いきを取り戻した脳内で処理し階段を降りていく。
降りた先は、映画やアニメで見た事のあるような酒場のように見えた。
その景色をぼーっと眺めていると、横の方から声が聞こえた。
「おや、もう外に出ていくのかい? でももうすぐ夜だからねぇ、気を付けるんだよ」
その声の主を探し、すぐに見つかった。
カウンターに立っている恰幅のいい女性だった。
「えっと、その……ここはどこですか?」
「えぇ? 何言ってんだい兄ちゃん! ここは豊穣の兎亭に決まってんだろう?」
「……豊穣の……兎? なんで俺はここにいるんでしょう?」
「大丈夫かい兄ちゃん? あんたがここの宿借りたんだろうに」
「俺が……? ここの宿を、借りた……?」
知らない単語や記憶にない自分の行動などの情報を伝えられ、落ち着いてきた脳内がまたパニックになる。
「ああそうだよ。……本当に大丈夫かい兄ちゃん? 熱でもあったのかい?」
「いや、大丈夫です……。ちょっと外見てきますね」
「あぁ、それは別に構わないけど……。無理すんじゃないよ?」
「はい、ありがとうございます」
何度か深呼吸をして落ち着き、外に出ようと扉に向かう。
ここがどこかは分からないけれど、きっと都内のどこかにあるコンセプトカフェなのだろう。
インターハイも終わり部活も引退したから、同級生と遊びに来たものの、テンションが上がりすぎて調子に乗ってここ直近の記憶が吹っ飛んだだけだろう。荷物が無いのはどこかに置いていってしまっただけだ。
外に出て警察署や公衆電話に向かい、家族と連絡を取れば、文句を言いつつ迎えに来てくれるだろう。
そんなことを頭の中でぐるぐる考えつつ扉を開け外に出て、頭が真っ白になった。
「……は?」
そこには都会のビルや電光掲示板など一切なく、目の前に広がっていた景色は、ネットでしか見たことがない、海外の街並に似た石造りの建物でできた街だった。こんな建物日本では見たことがない。
「……本当に……どうなってんだ?」
俺は理解が追いつかず思考回路がショートしてしまい、その場で立ち尽くしてしまったのだった。




