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どうやら隻腕の魔法使いである俺は劣等生だと思われているらしい  作者: カンナギまふぃあ


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9/10

彼女は知っている

 

 俺は今、最後の晩餐とも言える空気の中にいた。


裏路地の小洒落たビストロに入ったはいいが、胃が痛くて料理の味がしない。


「そ・れ・で? アルフレッドとはいつからの知り合いなんですか?」

「どうやろうなー。幼い頃から?」

「嘘つき。そんなはずないわ」

「あるんだな~、これが」


彼女は俺のことを知っているようだが、俺には一切の記憶がない。

そもそも、俺の幼少期を知る人間はほとんど死に絶えたはずだ。


「アルフレッド、この人の言ってることは本当なの?」

「……」

「答えたらどうなの?」

「いや、なんというか……」


『知らない』。

たったその四文字を口にすれば楽になれる。

だが、俺は言えなかった。


「『知らない』なんて言えんよな? なんせうちは、お前の『本当の名前』を知ってるもんな」

「……ッ」

「『本当の名前』って?」


二人の視線が俺を(えぐ)る。


俺は聞こえないふりをして、目の前の何の肉かも分からないソテーを切り刻み、無理やり口へ運んだ。


「はぁ……つまんない男」

「それは言えてる」


この二人が俺をどうしたいのか、全く読めない。


「……クレア、杖は買わなくていいのか?」


話題を変えるために口を開く。


「あ、忘れてた。買わないと」

「なんで?無くしたん?」

「折られたの」

「まぁ、ざまぁやな」

「あら。先輩ならもっと後輩のお手本となるような”言葉遣い”と”行動”を示していただいても?」


俺は早く帰りたい。


この時間、どんな退屈な講義よりも精神を削ってくる。

スープを飲み干したクレアが、不意に問いかけた。


「そう言えば……先輩、名前は?」

「……まぁ、聞くわな。うちは『レンドリック・ラガー』。ラガー先輩でええよ」

「ラガー……。どこかで聞いたような」


クレアが記憶を探るような素振りを見せる。


「で、うちは自己紹介したで。あんたは?」

「『アンブロージア・クレア』。これで満足?」

「そうか。後輩は敬語使った方がええで。うちは5年生やからな」


アンブロージア。

俺はそこで初めて彼女の本名を知った。

皆がいつもクレアとしか呼ばないからだ。




今までで一番消化に悪い食事を終え、俺たちは杖の専門店へと入った。


「これなんかええんやない?」

「これ? 少し高いし、軽すぎるわ」

「はぁー。これだから4年生はあかんねん。実戦が増えてくる時期なんやから、杖は軽い方が得やで。それに高いけど、ここのは一年保証付きやし、カスタムオーダーもできる」

「へぇ……意外と手厚いのね。ありがとう、これにするわ」 


なんだ、普通に仲良くなっているじゃないか。

外から見れば、ただの女子会と荷物持ちの男だ。


「自分、人差し指が少し長いんやな。それやったら、ここら辺が少し膨らんでるグリップがええわ。力が入りすぎず、構えやすい」

「……感心したわ。先輩風吹かせてるだけじゃないのね」

「そりゃあ、うちは最強やからな」


的確なアドバイスに、クレアも毒気を抜かれているようだ。


ふと、彼女が俺の腰にある杖に目を留めた。


「アルフレッドの杖……ボロボロじゃない。新しいの買っても良い頃合いなんじゃない?」

「俺はこれじゃないと慣れないんだよ」


断ると、少し離れた場所にいたラガーと目が合った。

彼女は声を出さず、口の動きだけで、ある言葉を紡いだ。


()()()()()()()()()()()()



背筋が凍った。


俺はただ、動けずに彼女を見つめ返すことしかできなかった。






めっちゃデコった杖で無双して欲しい

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