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隻腕の魔法使いである俺は劣等生だと思われているらしい  作者: カンナギまふぃあ


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11/22

俺を呼んで


 町外れにある小さなカフェ。


クレアは参考書と睨めっこをしていたが、襲い来る疲労感に負け、天井を仰いでパチパチと瞬きをした。


「ふぅ……今日はここまでで良いかな」


帰り支度をしようとしたその時、挽きたてのコーヒーの香ばしい匂いが鼻をくすぐった。


誘惑に負けた彼女は、まんまとコーヒーをおかわりし、あろうことか、ケーキセットまで注文してしまった。


(明日からダイエット、明日からダイエット……!)


自分に言い訳をしながら、運ばれてきたケーキにナイフを入れる。

一口食べれば、甘く溶けるような幸福感が口いっぱいに広がった。


(勉強に疲れたら糖分だよね~。このコーヒー飲み終えたら帰ろう。明日は一限から授業だし)


今日の彼女は幸福感に包まれていた。

友達と出かけ、プレゼントまで貰ったからだ。


鞄の中の新しい杖の箱をこっそりと開けて覗き込む。

すっかり気に入ってしまった。

明日から大切に使おう。


(次は絶対に折られないようにしないとね)


店内の客は彼女を含めて二人だけだったが、カラン、とドアベルが鳴り、もう一人増えた。


その人物はクレアと同じケーキセットを注文すると、迷わず彼女の向かいの席にドカッと座った。


「……どうしたの?」


クレアはフォークを止めて、呆気にとられた顔でラガーを見つめる。


「暇やから、たまたま来ただけや。勉強しとるん?」

「ええ。『水の温度変化にまつわる魔法について』っていう授業なんだけど、ここが分からなくて……」

「見せてみ」


ラガーは本を覗き込むと、クレアのノートにサラサラと走り書きをしていく。

「ここに書いてあるのはこうやろ? そんで、ここの式はさっきのを代入して……」


ラガーの説明は淡々としていたが、驚くほど的確だった。

おかげでクレアは、詰まっていた箇所が嘘のように理解できてしまった。


「……さっきまで悩んでたのが馬鹿みたい」


思わず自嘲気味に笑う。

「ここで(つまず)いてたらあかんな」

「そうなの?」

「一般の生徒ならしゃーないと思うで。でも『あいつ』を追うなら無理やろうな」

「あいつって……アルフレッドのこと?」

「そうや」


ラガーは届いたケーキを大きな口で豪快に頬張りながら、目を細めた。


「うちな。強いライバルが欲しいねん。でも周りにおらんからなぁ。あいつやあんたに、もっと強なって欲しいねん」

「いきなり何を言っているの? 強い人なんて学院にたくさんいるじゃない」


クレアはコーヒーに口をつける。

さっきまで甘かった口の中に、鋭い苦味が広がった。


「いいや。うちが最強や」


あまりに突拍子もないセリフ。けれど、彼女が言うと馬鹿にはできなかった。


「クレア、あんたにポテンシャルはあると思うで。ただ、今のまんまやったら無理やな」

「そんなことないと思うけど。私、アルフレッドとは同格だと思ってるわ」


自信を持って返すと、ラガーは笑み一つ浮かばない冷めた瞳で告げた。


「あいつは化け物やで。実力を隠しまくってる」

「それは……なんとなく聞いてたけど。何でそこまで言うの?」


ラガーはペンを取り、ノートの端にさらさらと何かを書いた。


そして、それを指でなぞりながら読み上げる。


「『()()()()()()()()()()()()()()()』」

「……誰の名前?」

「あいつの、本当の名前や」






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