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神愛 ─ 永遠の刹那 ─  作者: 神愛
第2章 中学生編 ― 距離の再編 ―
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第16話 御珠ブレイク ― 空の理 ―

夜。

さっきまで水族館の話をしていたのに、言葉が途切れると部屋が急に静かになった。

雪杜の部屋は、机のスタンドだけが淡く灯っていた。


寝る前の支度に移ると、御珠はスマホで何かを調べ始める。

画面を覗き込む目がやけに真面目で、眉間に小さな力が入っていた。

指先が忙しく、スクロールのたびに白い光が頬を撫でていく。


「……ふふふ。明日は妾の番。完璧じゃ」


雪杜はその一言だけ拾って、脳が勝手に防御姿勢に入った。

突っ込んだら負けだ。

いや、突っ込まなくても負ける可能性が高い。

でも今は、聞かなかったことにする。


「さぁ雪杜よ。明日に備えて寝るのじゃ」


「うん」


返事だけして、雪杜は布団に潜った。

枕の端を握り、目だけを御珠へ向ける。

御珠はまだ画面を見ている。


口元だけが小さく上がっていた。

楽しさが隠れていない。


(楽しそうだから、大丈夫……たぶん)


自分に言い聞かせるように息を吐いて、雪杜は声を落とした。


「おやすみ」


「おやすみじゃ」


―――


朝。

玄関には、磨いた靴が並んでいる。

窓から差し込む光が床に広がり、外はもう動き出していた。


「ふふん。どうじゃ雪杜?」


御珠が一歩前に出て、胸を張る。

先週選んだ私服。

いつもより整えた髪。

全身から「準備万端」がにじみ出ていた。


「う……うん。

 かわいいよ……」


言葉にした途端、視線が泳いだ。

照れは隠せない。


「そ、そうじゃろ。

 かわいかろう」


御珠は満足そうに顎を上げる。

そのくせ、耳の先だけが赤い。


「じゃ、行こっか」


そう言って靴に手を伸ばした瞬間。


「待て」


「え」


御珠がもう一度、胸を張った。


「待ち合わせをするのじゃ」


「……え」


間の抜けた声が出る。


「デートには待ち合わせが付き物なのじゃろ?」


理屈だけは妙に正しい。


「まぁ一理ある」


納得したようで、していない。

でも否定する気にもなれなかった。


「では先に行くのじゃ。

 場所は……駅前でよかろう」


勝手に決まり、勝手に完結する。


「じゃあ先に行くけど、玄関の鍵、ちゃんと閉めてね?」


「分かったのじゃ」


雪杜が扉を開け、外へ出る。

背中に朝の光が当たり、靴音が遠ざかっていく。


扉が閉まったあと。

玄関にひとり残った御珠は、満足そうに頷いた。


―――


駅前。

改札へ吸い込まれる足音と、ロータリーの車の音が重なっている。

広告のスピーカーが短く鳴り、誰かの笑い声が混ざった。


雪杜は柱の横に立ち、スマホを見下ろしていた。

画面を点けては消し、また点ける。

落ち着かない指の動きだけが先に走る。


(まだ来ないな)


そう思った瞬間。

背後から、視界がふいに塞がれた。

小さな手のひらが、目を覆う。


指先がまぶたの上でくすぐったくて、呼吸が詰まりかける。


「だーれじゃ」


「……」


すぐ分かる声。

すぐ分かる口調。


「御珠」


「む」


あっさり当てられて、手が離れる。

光が戻ってきて、雪杜は目を瞬かせた。


「なぜ分かったのじゃ」


「“じゃ”とか言うの、御珠しかいないし」


「失礼な。

 世の中には“じゃ”を使う者もおるじゃろう。

 晴臣も使っておるではないか」


「駅前にいない」


「むぅ……」


御珠が頬をふくらませる。

悔しさが顔に出ていて、その表情がむしろ勝ちだった。


「本来は、もっと驚く場面なのじゃ」


「うん。

 でも、御珠だって分かるのは嫌じゃない」


言いながら、雪杜は御珠の顔を見てしまう。

そこにいるのが当たり前で、当たり前だからこそ安心する。


「それは……ちょっと嬉しい……」


御珠は照れたように視線を逸らし、襟元を指でいじった。

耳の先が赤い。


「待ち合わせ、成功ってことでいい?」


「うむ。

 完璧な開始じゃ」


雪杜は堪えきれず、ふふっと笑う。


「さぁ、映画館へ向かおうぞ」


御珠は何事もなかったように歩き出す。

背中がやけに小さくて、やけに誇らしい。


雪杜は小さく息を吐き、口元を隠した。

そのまま御珠の後ろ姿を追い、駅前の雑踏へ並んで溶けていった。


―――


映画館の入口。

大きなポスターが壁に並び、ガラス越しにロビーの明かりが漏れている。

チケット売り場の表示が白く光り、上映時間が規則正しく並んでいた。


御珠が足取り軽く進む。

視線はもう中へ向いていて、背筋まで浮き立っている。

雪杜はその半歩後ろで、人の流れを避けながら、御珠がぶつからないように距離を調整していた。


「……あ」


前から来た颯太が、雪杜を見て足を止める。

隣には莉子。


「おま!またかよ!」


「えー、こっちのセリフ」


思わず返してしまって、雪杜は自分でも顔をしかめた。

まさか二日連続で行き先が被るとは。


「こんにちは。

 わ、御珠ちゃんの私服かわいい。

 今日は……御珠ちゃんとデート?」


莉子の声はやわらかい。

状況を一瞬で飲み込んで、会話の形にして返してくる。


「うむ。デートじゃ」


「っちょ、御珠!」


制するより早く即答。

真顔で言うから余計に重い。


「デートって言った今!?

 お前ほんと、どうなってんだよ!」


「僕が一番聞きたい」


雪杜のツッコミが、ほとんど悲鳴になる。

颯太は目を細めて、雪杜を上から下まで見た。


「なぁ。

 明日、また別のやつといたりしないよな?

 御珠と咲良以外にいたらぶっ飛ばすぞ」


牽制の形をした本気。

冗談半分で言ってるのに、芯がある。


「他にはおらぬ。

 安心するがよい」


「え、そこ御珠が答えるの!?」


「……まぁ、御珠が言うなら」


「納得しちゃった!」


雪杜が両手を上げる。

勝手に話が決着していく。


莉子は肩を揺らして笑った。


「ふふ。

 久しぶりに三人のコント見れた気がする」


雪杜は「前にもやったかな」と思って、すぐに答えを出すのをやめた。

たぶん、やってたんだろう。

自分の記憶の守り方として、やめた。


「何観るの?」


「えっと……」


言いかけたところで、横から刺さる。


「えすえふじゃ」


御珠が胸を張る。

堂々としている。


「御珠ちゃんっぽい!

 はしゃいでる姿が目に見える」


「そっちは?」


雪杜が聞くと、莉子が指先でチケット売り場を示した。


「私たちは恋愛映画だよ。

 颯太に恋愛の機微をレクチャーするの」


雪杜は颯太の方を見る。


「なんかそういうことになった」


颯太が苦笑いで肩をすくめる。


「恋愛は現実で十分じゃろ」


「冗談に聞こえないからやめて」


雪杜が即座に遮る。

御珠の顔は真面目だ。

真面目だから怖い。


颯太は吹き出しそうなのを堪えて、口元を押さえた。


「お前ら、ほんと……」


莉子が一度だけ頷き、声を整える。


「じゃ、あとでまた会うかもね」


「うむ。

 二度あることは三度あるのじゃ」


「それ、縁起でもないやつ!」


雪杜が突っ込むと、颯太が手を上げた。


「じゃ、またな!」


四人はそれぞれ売り場へ向かう。

人の流れに混ざりながら、雪杜は歩きつつ小さく息を吐いた。


「……始まる前から疲れた」


「まだ始まったばかりじゃ」


御珠は何事もなかったように前へ進む。

その背中だけが、やけに元気だった。


―――


その後。

券売機の前で、御珠が固まった。

画面の文字をじっと読み、雪杜の顔を見て、また画面を見る。


雪杜も同じくらい分かっておらず、二人で小声の相談会になった。

それでも指示に従って進め、出てきたチケットを受け取る。

無事にシアターへ入った。


通路の足元だけが青白く光っていた。

席番号の小さな文字を追い、前の人を避けながら進む。


雪杜と御珠は並んで座る。

御珠が背もたれに体を預け、ゆっくり周囲を見回した。


「これが映画か」


小さく呟いた声が、吸い込まれるように消える。

スクリーンを見上げる目がキラキラしている。

雪杜も初めてであり、その顔を見ているだけで自分の胸も高鳴る。


予告編の光が流れる。

暗転と明転が繰り返されて、音が短く跳ねる。

客席のざわめきも、だんだん落ち着いていった。


御珠が、何かを思い出したように雪杜の手を探した。

指先が触れ、そのまま握られる。

熱のある小さな手だった。


突然のことに、雪杜の肩が小さく跳ねた。


「……デートとは、こうするのじゃろ?」


「また変な知識を……。

 普通は盛り上がった場面とか、映画が始まってから握るんだよ」


そう言いながら、雪杜は握り返す。

指の間に指が収まり、御珠の力がわずかに強くなった。


本編が始まると、宇宙の暗さがスクリーンいっぱいに広がる。

腹の底を揺らす低い音が押し寄せ、床まで震えた。


御珠が思わず肩を跳ねさせる。

握った手が一度だけ固くなる。

だが次の瞬間には、瞬きもせずスクリーンを見つめていた。


「……ほう」


雪杜は横目で御珠を見る。

口元が、わずかに上がっている。


派手なシーンで、御珠の指がきゅっと締まる。

痛くはない。

ただ、感動がそのまま手に伝わってくる。


「すごいの」


「ね」


御珠はスクリーンを指差したくて仕方なさそうなのに、我慢している。

その我慢が、逆にかわいい。


「人間は、かのようなものを作るのか」


「作る人もいる、って感じ」


「……よい」


短く頷く。

視線は一度もスクリーンから離れない。


映画が進む。

静かな場面では、御珠の呼吸がゆっくりになった。

息を吐くたび、握った手の力がほどけて、また戻る。


スクリーンの二人が足を止め、唇を重ねる。

握った手が、同じタイミングで強くなる。

雪杜の喉が鳴り、いつかの感触が指先まで戻ってきた。


御珠の視線が、ほんの一瞬だけ雪杜へ流れる。

耳の先が赤く、すぐスクリーンへ戻った。

雪杜も目を逸らし、指を絡め直して誤魔化す。


やがて、終幕。

音が引いて、画面が暗くなる。


照明が戻る。

客席が一斉に現実へ引き戻され、椅子が軋み、衣擦れが重なる。


御珠は背もたれから身を起こし、まだスクリーンを見上げている。

余韻が目に残っている顔だった。


「映画とは、まこと面白き娯楽よの」


「気に入った?」


「うむ。気に入ったのじゃ。

 また来たいのじゃ」


「……うん。

 僕も面白かった。

 迫力すごいね。

 また来よう」


御珠は嬉しそうに、手を握ったまま頷いた。

握り直すでもなく、ほどくでもなく、当然のようにそのままだった。


―――


シアターを出る。

扉が開いた瞬間、ロビーの明るさが目に刺さった。

暗闇に慣れていた視界が追いつかず、雪杜は一度だけ瞬きをする。


ざわめきが戻る。

笑い声と足音が重なって、耳の奥が現実に引っ張られた。


御珠は歩きながら、まだスクリーンの方を気にしている。

振り返るでもないのに、首の角度だけが何度もそちらへ傾く。

口元がゆるんだまま戻らない。


出口を抜けると、颯太と莉子が立っていた。

二人も今出たばかりらしい。

人の波の切れ目で、ちょうど目が合う。


「あ、いた。おかえり」


「お前らも出たのか」


「そっちも?」


「こっちも今。……まぁ、な」


颯太は言いながら、雪杜と御珠を交互に見た。

確認の視線が一瞬だけ鋭い。

いつもの牽制が、今日はどこか柔らかい。


「どうだった?SF?」


莉子が自然に会話の中心を作る。


「よかったぞ。腹の底が鳴った」


御珠は即答した。

語彙が雑なのに、満足だけは伝わる。


「最初、びっくりしてたけどね」


「ふむ。雷かと思うたわ」


「ふふ。あれびっくりするよね」


笑いながら頷く莉子に、御珠も満足げに頷き返す。


「そっちはどうだった?」


雪杜が聞くと、颯太は一瞬だけ言葉を探した。


「恋愛映画は……まあ……」


そこで莉子が首をかしげて、さらっと刺す。


「颯太、泣きそうだった。てか泣いてた」


「なっ……バラすなよー」


颯太が肩をすくめて抗議する。

耳が赤い。


雪杜は口元を押さえた。

笑うのを堪えたつもりなのに、息が漏れる。


御珠が二人を見て、真面目な顔になる。


「恋愛も、映画になるのじゃな」


「お前らも見とくといいぞ」


颯太が言うと、御珠が即座に返した。


「現実で十分じゃ」


「……今度、恋愛映画も見てみようよ」


雪杜が、とりあえず落とすように言う。

御珠は一度だけ雪杜を見て、すぐに頷いた。


「ふむ。雪杜が言うならそうするかの」


「相変わらずの雪杜ラブだなぁ」


颯太が呆れたように笑う。

呆れているのに、嫌そうではない。


その流れのまま、莉子が小さく手を叩いた。


「ねえ、せっかくだしさ。

 このあとご飯でも行かない?」


「おう。俺もそれ言おうと思ってた」


「いいの?」


雪杜が聞くと、颯太は視線を逸らしながら答えた。


「昨日は邪魔しちゃ悪いと思ったけど、お前らならいまさらだろ?」


「ふむ。人数が多い方が楽しいまである」


「……じゃあ、行こっか」


雪杜が言うと、莉子が軽く頷く。


「フードコートでいい?」


御珠がぱっと顔を上げた。


「山盛りの芋を奢るあれかの」


「おっと、その話はそこまでだ」


颯太が慌てて手を振る。

莉子が声を出して笑い、雪杜もつられて息を漏らした。

御珠は「む?」という顔のまま、でも満足そうに頷く。


四人は人の流れに混じって歩き出す。

余韻はゆっくり薄れていくのに、妙に賑やかなものだけが増えていった。


―――


フードコート。

天井の照明が白く広く、店ごとの看板が派手に光っている。


注文を呼ぶ番号の声、子どもの笑い声、トレーを運ぶ足音。

ざわざわした音が流れ続き、会話の声だけがうまく紛れた。


テーブルの空きを探して、四人が歩く。

人の流れの隙間を縫うようにして、椅子が四つ残ったテーブルが目に入った。


「ここ、空いてる」


「ラッキー」


腰を下ろすと、椅子が軽く軋む。

トレーが置かれ、紙が擦れる音が重なる。

揚げたての匂いがふっと立ち、湯気が短く揺れた。


颯太がポテトを見てから、御珠を見た。


「……で、御珠。

 SF、そんな良かったのか?」


「うむ。

 空の向こうに違う星があるとは知らなんだ。

 世界の理が広がった気がするの」


言い回しがいちいち大げさなのに、顔は真剣だ。

雪杜はそれを見て、つられて頷く。


「すごかったね」


「ふふ。相変わらず言い回しが理だね」


「理は妾のすべてじゃ」


「うーん。分かるような分からないような」


颯太が頭をかく。

雪杜は肩をすくめた。


「深く考えない方がいいよ」


「む」


御珠はポテトを一本つまみ、真剣な顔で眺める。

観察対象が急に変わっただけで、真面目さは変わらなかった。


「これは、山盛りではないの」


「いつもいつもおごらねーぞ!?」


「颯太、まだ引きずってる」


「引きずってねぇ」


颯太が即座に返す。

その反射の速さがもう、引きずっている。


雪杜は笑いそうになって、飲み物に口をつけた。

氷が鳴って、喉がひやりとする。


「そういえばさ。

 部活、どう?」


雪杜が話題を振ると、颯太が一気に顔をしかめた。


「バスケ部、やばい」


「先輩が厳しい」


二人の言葉が重なる。


「声出せ、走れ、声出せ、走れ、って感じ」


「うわ~。体育会系だ」


「颯太と一緒にいたくて入ったけど、マネージャーにすればよかったかな……

 レギュラーになれる気がしない」


莉子が笑いながら言う。

笑顔のまま、言葉だけが本音に寄った。


颯太はストローを噛んで、目を泳がせた。

口元が落ち着かない。


「お、おまっ……急に照れること言うんじゃねーよ!」


「はいはい。ごちそうさま」


雪杜が即座に乗せる。


「雪杜、お前まで!」


颯太の抗議が飛ぶ。

莉子がまた笑って、御珠がそこで手を合わせた。


「そなたらの未来に幸多からんことを」


祈るまねをして、真顔で頷く。

大げさなのに、祝詞だけはきっちり決まっている。


「やったね。祝福もらったよ。

 これは絶対レギュラーになれるよ。

 がんばろ?」


「お、おう……」


颯太の返事は小さい。

でも、嫌じゃなさそうに口元が緩む。


四人の笑いが、テーブルの上で軽く弾んだ。

恋愛の話をしているのに、胸が締まる種類じゃない。

ただ一緒に座って、同じものを食べて、同じところで笑える。


その当たり前が、静かに積み上がっていく。


―――


フードコートの出口。

人の波が途切れて、通路が広くなる。

さっきまで頭上を埋めていたざわめきが薄まり、足音がはっきり聞こえた。


颯太が肩を回しながら言う。


「じゃ、俺らは次行くから。もう鉢合わせしないことを祈る」


「うん。お話できて楽しかった」


莉子が軽く手を振る。

雪杜も自然に返す。


「こちらこそ」


「うむ。よき再会であった」


御珠は真顔で頷いた。

“再会”という言葉だけ、やけにきちんとしている。


「また学校でね」


「変な噂増やすなよ」


「勝手に増えるんだよなぁ……」


二人は人の流れに混じっていく。

肩が触れそうな距離で並びながら、すぐに見えなくなった。


雪杜はその背中を見送って息を吐く。

肩の力が抜けて、ようやく自分のペースに戻れる。


「……賑やかだったね」


「うむ。賑やかなのは、よい」


御珠はそう言いながらも、目だけがまだ元気だった。

視線が右へ左へと動き、次を探している。


「次、どうする?」


雪杜が聞くと、御珠は一度だけ黙った。

返事を探しているのではなく、溜めている。

その溜めが、やけに可愛い。


そして胸を張る。


「げーむせんたーとやらに行ってみたいのじゃ」


「ゲーセン?」


「うむ。あれじゃ。

 音がして、光って、景品が取れる場所じゃ」


説明が雑なのに的は射ている。


「だいたい合ってる」


雪杜が言うと、御珠は満足そうに頷く。


「デートの続きをするのじゃ」


「うん。行こっか」


御珠はその一言を待っていたと言わんばかりに、先に歩き出す。

背中が小さく弾んで、足取りが軽い。


雪杜はその後ろを追い、通路の光の中へ並んで進んだ。

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