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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

聖女Aからの伝言 - 召喚されるかも知れないあなたへ

作者: 餅野 論

異世界に強制召喚された聖女Aさんからのいただきものをお届けします。


転載はお断りします。


この文字が読めているということは、わたしの遺志は今、文字を媒介にあなたに伝達できているということです。時空を超えて思いを伝えることができるなんて、文字とは本当にありがたいものですね。


わたしは、異世界のとある国によってこっちに召喚され、聖女としての役割を背負わされた者でした。過去形なのは私自身はある魔術儀式によって今、消えながらこれを残しているからです。名前かぁ、‥‥‥ 元の世界に迷惑かけたりとか嫌なんで匿名で、え? 匿名ダメ? んじゃ聖女Aで。


魔術儀式はわたしの思いを元いた世界に送るものになっていて、どなたか存じませんが魔術の出力を受け取り、皆様に伝えられる形にしてくださっている方がいらっしゃいます。ま、なんというか表示用の端末? プリンター? は酷いか。その方にとっては電波キター、みたいな感じでしょうか。

中の人様、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。謝罪と感謝を申し上げます。


さて、わたしが皆様にお伝えしたいこととは、

ドゥルルルルルルル、ジャン!

すんません、はしゃぎました。

もしも異世界に召喚されてしまったら、の心構えやら、必要な知識やら、日ごろの備えといったことになります。

あくまでもわたしのケースなので一般化はできないかもですが、異世界に召喚されてみて、そういった知識のまとめみたいのがわたしの時にあったらなぁと思ったのがこれをやったモチベです。


ではでは、順にいきますね。まずは、


◆ 異世界召喚が起きる時:

体の周囲の状況がおかしい、いつもと違うぞって感じたら召喚来るかもです。

ただの不調かもしれませんがその時はどうぞお大事にご自愛ください。


これは! と思ったら、慌てず、意識をハッキリシッカリ保つようにしましょう。

なぜなら、召喚直後に意識がないと好き放題されるかもです。

召喚は突然で逃げる時間がない一瞬のことかもしれません。避けようがないかもしれません。その場から移動できれば回避できるかもしれませんが、動けないかもしれません。

それと、召喚先でいきなり倒れてケガしないように、その場にしゃがむとか、備えの体制を取りましょう。


わたしの場合、周囲の色が消えてモノクロになって、目がおかしくなったんかなーと思ったら、体が後ろに強く引っ張られる感じで、ぐにゃっとした膜?みたいな感触を通ったらそこはもう異世界でした。硬い石の床にドザァって。痛かったなぁ。あ、あの体勢ってヤムチャのアレみたいだった、今思えば。あははは。


意識を保つために自分に集中するときのキーワードを決めておくとよい、かも。

わたしは小っちゃな頃に親戚のおばさんが言ってた「にんどすはっかっかー」というのが秘密の言葉です。

音だけで意味は知りませんがなんか頭に残ってて。


あ、アレがあればよかったなぁって思ったのは、

 ペンチ:刺さってるのを抜くとき重宝します。

 カッターナイフ:替え刃式の。デカいのがいい。

 カッターナイフの刃:交換用に何セットか。

 五寸釘:何本かあると意外と使える場面多し。

 救急ばん:絆創膏、ひと箱じゃあ少ないか。

 LEDライト:充電できればなおヨシ。

小っちゃくて多機能なマルチツールナイフもよいですね。


◆ 異世界に着いたら:

意識があれば、まずは落ち着いて。こちらから言葉を発さず、周囲の状況を知ることに努めましょう。油断せず危険かどうかを探るのです。


屋外か室内か、音や見えるもの、温度や湿度、匂い、周囲に何かいるか、人か人外か、武装、友好的か敵か。

その場にいる相手の第一印象は大切です。が、同時にまゆつばとも思っておきましょう。なんせ相手は身勝手な都合で召喚した側、意図があるはずです。こっちを利用する気、使い捨てる気まんまんです。厚かましい。


露骨に警戒すると高圧的、暴力的に従わせようとするかもしれません。

反抗的にでるとひどい目に合うと思います。わたしは元の世界に帰せって文句言ったら左手と左目を失いました。ぐえー死んだーって気絶したよ。


その場では言質を取られるような確定的なことは言わないように。

しゃべらないのが良いかもしれません。答えたら了承とみなして契約を強制する魔術で隷属させられるかもです。わたしは剣で切られて倒れたのでその場で問答はしてません。


あ、その場に精神掌握系の魔術が展開されてたらもう詰みですね。

先々の行動でケガとかを切っ掛けに洗脳が解けるかもですけど、いいようにされちまった後でしょうね。

あれ、なんか変と感じたら、気付けにどこかギュっと抓るとレジストできるかも。

気休めですが、そんな可能性もあるかもって憶えておいてもらえれば。


◆ 異世界に着いて、一息つけたら:

自分の置かれた状況を整理、把握しましょう。

感情に振り回されても状況は悪くなるだけです。とっとと切り替えましょう。

書くものがあれば書き出すのもよいでしょう。自分の健康状態、能力、分かることはなんでも、です。あ、書いたのを奪われないように。ばれちゃうからね。

魔術や魔法が使える世界であれば自分の状態を知る手段があるかもしれません。


これは、ずっと継続してやる必要があります。日本にいたときの自分がどんだけのんきで考えなしだったか、ははは。好きだったそんなお花畑の日本。帰りたかったなぁ。


周囲のことを知りましょう。

置かれた状況、自分への期待役割、元の世界に帰れるかどうか。

自分か周囲か、どちらの状態把握を優先するかは状況次第でしょう。わたしは召喚直後にやられて三日寝たきりだったので起きて真っ先に自分の状態把握をやりました。自分の体の状態を知りたいって思ったら頭に内容が浮かびました。表示画面みたいのはなかったですね。

自分の情報は出さないほうが良いでしょう。強要されたら小出しにして向こうの情報を得る時間を稼ぐのです。


もし、友好的で、誠実と判断できたら話してもよいかもですが、やっぱり慎重に、小出しにするのをお勧めします。

友好的に見えても注意が必要です。先に高圧的・暴力的に痛めつけ、次に友好的に優しくする手口かもしれないと頭に置いときましょう。鞭の後に優しく甘やかして依存させるDV、ドメスティック・バイオレンスの手口と一緒です。


◆ 異世界への対応方針を考える:

自分と周囲の情報を得るのと並行して大まかな対応方針を考えましょう。

異世界での行動方針、召喚者たちへの対応方針です。

周りをよく見て、どう振る舞うか。自分がどう見られていて、何が利用できるか、これからどう動くか。


わたしは、自分を俯瞰して、損得、打算、感情を天秤して、譲りたくないものを考えました。これは元の世界でも変わらないですよね。学校や職場、日常生活のいろんな場面での判断と同じです。

協力する、しない

戦う、逃げる

動く、動かない

妥協する、しない

受け入れ、拒絶

そして他者を犠牲にしても‥‥‥

なんせすでにこっちは強制召喚の犠牲者です。


がちがち決めずにその場の事情で選択すればいいと思います。

が、選び取る覚悟だけは、先に必要です。

肝心な時に優柔不断だと、自分が死にます。

自分か、向こう、どっちが生きるか。

わたしはあなたに生きていてほしい。


◆ 方針に沿って自分を変える:

行動方針、対応方針が見えてきたら、それを実現するために必要な手段を考えましょう。


こちらに都合のいいように向こうを動かすには何が必要か、考えましょう。

向こうが受け入れやすい「わたし像」を植え付ける。これでしょ。

時間が掛かるし愛想振りまいて媚びたり大変疲れることですが、自分の命が掛かっているのです、必要なら覚悟を決めましょう。

向こうも同じアプローチかもしれません。よく見極めて。


体力は必須です。逃げるとき、逃げた後、どんな場面でも体が動かないと困ります。体のいろんな関節を動かして柔軟さをキープです。こまめに体を動かしましょう。


変わっていく状況を把握し身を守る、反撃、だけじゃなく先制攻撃もする。そのためには、短い時間で物事を把握する力が必要です。把握した状況でどう動けばよいか考える。

ことが起きたら考えてる悠長な時間はありません。時間のあるときに訓練するのです。


状況把握の力を鍛えるのに、移動した先々で目をつむってぱっと開けて、見えたものを把握する訓練は役に立ちました。

聞かれても教える必要はありません。

「見てわからん奴は聞いてもわからん」のです。


◆ 能力の強化:

自分の能力を知って、それを鍛えましょう。

鍛えるには能力を使っていくことになると思いますが、人目につかないよう気を付けましょう。


何回も繰り返す。強弱の変化をつける。広く狭く範囲を変える。複数のことを同時に、速く、長く。いろいろやって能力の特性を知りましょう。限界突破を目指す必要はないと思います。

何が得意で苦手か、向き不向き、能力の使い方を知るのです。

能力をどんな場面でどう使うのが効果を上げるか考えましょう。

この前フリにこのネタでドッカーン! のはずが掠りもしないのはよくあること、もっと先達の芸を勉強して、え? 話が逸れましたね。


わざとしょぼい能力を見せるのも手です。こんなもんかと思わせて次のネタでドッ、ごめんなさい未練ですねぇ、お笑い番組見たいなぁ。


◆ 異世界で気を付けること:

全部って言ったらそうなんだけど、特に思ったのを挙げときます。


食べ物に注意。

森とかに自生しているものは誰かが食べるのを見てからにしましょう。あ、これは王宮でも一緒だ。真っ先に食べないこと。


二人きりにならない。

異性はもちろん同性も。必ず、誰か複数の第三者の同席をもらいましょう。ほんのちょっと、と思うその油断が致命的な状況を運んできます。もし、二人にされそうなら大声出して全速離脱です。

逆に被害者に見えるよう状況を利用できるならチャンスかもしれませんが、罠かもしれません。


異世界の連中はいろいろやらせようとしてくると思います。

「僕と契約してなんちゃら」とかそーいった話は、書面に不都合も余さず書かせて、よくよく吟味してから回答は保留しましょう。焦らすのです。焦らしてこっちの要求を呑ませるのです。書面での明確化と合意、大事です。口頭での大まかすぎる指示が仕様? そんなことやってっから今日も徹夜なんですよ課長。来期は移動だから立ち上げ成果だけ貰うってこのクズが。大体そんな指示で動く方も大概だ。社畜の鑑? うれしいわけあるか。クライアントは値切るな、仕様変更すな合意しただろ、追加要求? 黙って寝てろ。納期伸ばしてもっと金出せぃ!


え? ちょっ! わたしそんなこと言ってない!

中の人? 何してくれちゃってんの、勝手なことしないで!

魔術師ぃ、干渉受けてるこれ。なんとかして!


送信の一部が乱れましたことをお詫びいたします。


えっと、気を付けることだったわね。

そうそう「不老不死」よ。


「不老不死」の実を探して来いとか、報酬に「不老不死」にしてやろうとか、言ってきたら最大に警戒です。

その「不老不死」はどんなものですか?

実現したらどんな「姿」ですか?


仲良くなった魔王様に聞いたんだけど。

老いていくこと、死んでいくことは生命活動の当たり前のことだって。

生きてると細胞が古くなって新しい細胞と変わっていく。古いものが消えて新しくなる。古いものが居座ってると新しくなれない。


「死」は「生」と不可分な一つであって、すべての生命活動が「死」で成り立っている。血液が体を巡ったり、涙を流したり、刺激が伝わるということには始まりと終わりがあるから次の始まりが可能になる。

「不老不死」はそうした生命活動の否定、理への叛逆だ。


死なずに増殖していく細胞というのがあったわね。

元の世界では「がん」と呼ばれてました。「がん」も自分の一部ならまだ許容できるかしら。そう考えているのは「がん」の側じゃない自分が主体の時。

一部であったものが主体全部に置き換わったとき、前と変わらぬ一貫した、これがわたしと感じる自分が残っているか、どうか? 

そして「不老不死」は「がん」の活動すらも止めてしまう。


こっちの世界では「不老不死」は「石」になります。

「不老不死」も要件がシビアみたいで、成り切れずに中途半端だった場合は人外の不死者(ノスフェラトゥ)になりましたね。

「死」への渇望と「生」ある者への憎悪、嫉妬に苛まれ続ける。

世界において自分が最下位の存在だと自覚しているから「生者」が羨ましくてしようがない、哀れな醜い死にぞこない。


わたしが持ち帰った「不老不死」の実を絞って酒に入れて乾杯した王宮のクソどもは聖女の力で滅してやりましたとも、えぇ全部。ふははは、ざまぁ。


「不老不死」と言われたら気を付けてください。


おっと、誰か来たじゃなくて、終わりの時間が来たようです。

あなたが異世界で生き抜くためにお役に立ちましたら無上の喜びです。

中の人様、ありがとうございました、んではバイ、なら。バ~ハハ~イ。


本作、これにて終幕です。

読んでいただきありがとうございました。


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