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#49「飛行船出港、豪華すぎる船内散策」

ようやく騒ぎがひと段落し、俺は改めて部屋を見渡した。


ロイヤルスイートというだけあって、きらびやかさが桁違いだ。

大きなベッドが二つ、隣り合うように置かれていて、真ん中には金の縁取りが施されたソファーが鎮座している。

奥へ進むと、ガラス扉の先に小さなバルコニーがあり、そこからはターミナル全体と遠くの街並みまで見渡せるようだ。


さらに横の扉を開けてみると、中には豪奢な風呂場や磨き上げられたトイレまで完備されていた。

壁には魔石で温度調整する仕掛けが施されていて、蛇口をひねれば温水が出るらしい。


「……これ、一泊いくらするんだ?」


思わず身震いする。

現世での感覚に置き換えれば、たぶん高級ホテルのスイートルームよりさらに上。

こんなの、もし後でチャピから請求書を突きつけられたら、俺の銅貨カラカラ財布じゃ即死確定だ。


背筋に冷たいものを感じ、俺はそっとチャピの顔を盗み見た。


彼女は胸を張って得意げにソファーへ腰かけていた。

その余裕ぶった姿をそっと盗み見て、俺は思わず心配になる。


……まさか本当に、あとで金額を請求してきたりしないよな?


「ふふ……お気に召しましたか?」


突然バルコニーの方から声がして、思わず肩を跳ねさせる。

ノアが風にスカートを揺らしながら、優雅な笑みを浮かべていた。


「な、なんだよ急に!」

「ここはキョウマ様にふさわしいお部屋ですから」

「はぁ!?あんたはなにもしてないでしょ!」


すかさずチャピが噛みつく。


――また始まった。


このまま放っておいたら、また昨日と同じ口喧嘩に突入するのは目に見えている。

俺は慌てて二人の間に割って入った。


「おい!喧嘩はダメだからな!」


二人を手で制してから、俺はチャピの方へ振り返る。


「で、この船はいつ出発するんだ?」


「もうすぐのはずよ!」


チャピは胸を張って答え、次の瞬間に俺の手をぐいっと掴んだ。


「どうせだから甲板から出港するところを見ましょう。すごいんだから!」

「ちょっ、引っぱるなって!」


強引に手を引かれ、俺は部屋を飛び出す。

そして螺旋状の階段を上がり――甲板に出た。


瞬間、一陣の風が吹き抜けた。

冷たい空気が頬を撫で、背筋がぞくりとする。


眼下に広がるのは、煌びやかな魔道都市ルーメンポート。

その合間を縫うように石畳の大通りが真っ直ぐ伸びている。


さらに奥へ視線を向けると、初めて街に来た時に見えた、巨大な塔がそびえ立っていた。

天を突くほどの高さで、周囲の建物をすべて見下ろしている。

その根元には広大な敷地が広がり、要塞のような巨大建築群が佇んでいた。


「あれがこの街の象徴とも言える魔道塔」


チャピが誇らしげに指差す。


「そしてその下にあるのが、この大陸で唯一の魔法学校――ルーメン魔導学院」


俺はしばし視線を奪われたまま、巨大な塔と学院の敷地を見下ろした。

街に来てからずっと慌ただしく動き回ってばかりで、観光なんてまともにできていない。


(……次に訪れるときは、のんびり街を見て回るのも悪くないかもしれないな)


そのとき――低く響く轟音が空気を震わせた。

現世で言う汽笛のような音だが、耳に残るのは蒸気ではなく魔力の共鳴音。

その荘厳な音が、甲板から鳴り響いていく。


足元がわずかに震え、船体が淡く光を帯び始めた。

次の瞬間、甲板の下から重々しい浮遊感が押し寄せる。


「動いた……!」


街並みがゆっくりと遠ざかり、やがてルーメンポート全体が眼下へと沈んでいく。

空気を切り裂くように風が吹き抜け、人々の歓声が混ざり合った。


船体がさらに持ち上がった瞬間、甲板の周囲に薄い膜のようなものが張られた。

さっきまで吹き荒れていた風が、嘘のようにぴたりと止む。


「な、なんだこれ……?」


驚いて辺りを見回す俺の腕に、チャピが自然に絡みついてきた。


「ね!船内のお店を見てみない?この船の中、すごいんだから!」


そのまま右手を引っぱられる形で、俺は甲板を後にした。

何故かノアも左手に絡みついたまま…。


右手にチャピ、左手にノアに引っ付かれたまま船内へ足を踏み入れると、そこはもう別世界だった。

シャンデリアが輝く広いホール、豪華な食堂、金色に輝く装飾品を並べた商店――

どこを見ても煌びやかで、高級感に満ちあふれている。


「……ほー……へぇ……」


あまりのすごさに、気づけば俺の語彙力は完全に消失していた。


「朝から何も食べてないでしょ?それに、今後のことも話さなきゃ」


チャピがにこりと笑い、一軒の高級そうな食堂を指差す。


どう見ても高そうな店構えに、俺は思わず後ずさった。


「いや……俺は遠慮しとくわ。ここ値段いくらかかるんだよ……」


「大丈夫よ、キョーくん」


チャピは胸を張り、得意げに言い放った。


「ロイヤルスイートの宿泊客は、船内の食堂は全部無料で利用できるの」


「……マジかよ」


目の前に広がる、異世界の豪華食堂。

俺の胃袋が、ぐぅと鳴った。

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