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#40「バルドの告白、託された願い」

蝋燭の炎が揺れる広間で、バルドは深々と息をついた。


「あの母娘をさらったのは……ヴァルセロ・ファミリーの幹部、ロガンだ」


低い声が広間に響く。


「ロガンはここ一年ほどで頭角を現した男だ。温厚で堅実、裏でも筋を通す性格で、俺も信頼していた。だが……ここ数日で人が変わったように荒事に手を出し始めた」


苦々しさがにじむ声。


「対応が遅れた。変貌が急すぎて、完全に後手に回っちまったんだ」


拳を握りしめたまま、バルドはうつむいた。


「……お前にまで迷惑をかけた。すまねぇ、キョウマ」


「待て……どういうことだ?意味が分からないぞ」


眉をひそめる俺に、バルドは深く息を吐く。


「リーナ母娘は堅気だ。本来なら裏の世界に巻き込まれる理由なんざない」


そう言うと、バルドは遠い過去を思い出すように目を細めた。


「若い頃、血気に逸って敵対組織に突っ込み、瀕死の重傷を負った。その俺を助けてくれたのが……リーナの親父さんだ」


バルドの声にかすかな震えが混じる。


「……俺は親父さんに、返しきれない恩がある。その時に言われたんだ。

『何かあれば娘と妻を守ってやってくれ』とな。

本来なら俺が守るはずだったんだ……」


苦悶に顔を歪め、拳をさらに握りしめる。


「だが、守れなかった……」


その言葉に、胸の奥で怒りが爆ぜた。


「謝罪なんか聞きたくない!リーナとおふくろさんはどこにいる!?」


机を叩き、身を乗り出す。


バルドはわずかに目を伏せ、低く答えた。


「……町の北、貧民街の奥だ。ロガンの隠れ家にいるはずだ。

 だが、今回の件は単なる抗争じゃねぇ。裏で糸を引いてる何者かがいる。

 怪しいのはノクトと名乗る男だ」


ノクト――その名を聞いた瞬間、背筋に冷たいものが走る。


「ノクトがこの町に現れたのは一年前。その直後に親父さんは命を落とし……ロガンは少しずつ頭角を現し始めた」

「……あの時、親父さんが死んだ原因を徹底的に調べた。街の裏路地から役人どもの記録まで、隅から隅までだ。だが結局、親父さんがなぜ死んだのか……決定的な証拠は何一つ掴めなかった」


バルドの眼差しに影が落ちる。


「ただ……あの一年を境に、何かが狂い始めたんだ」


バルドの視線が俺を射抜く。


「そして――リーナの家の地下には秘密がある。契約の祭壇だ。望むものに力を与える代わりに、必ず代償を要求する。

親父さんは全力で抑えようとしたが、あまりに強力で……結局リーナを媒介にした血の封印を施すしかなかった」


バルドの言葉に、俺は思わず口を開いた。


「……祭壇?なんのことだ?話が見えない」


「魔族が残したものだ。この街が築かれるよりも、もっと前に作られた。

元々神父だった親父さんが、それを発見したんだ」


「魔族の残したもの……?」


混乱する俺に、バルドはじっと視線を投げる。


「ああ。奴らはリーナを使って封印を解かせるつもりだ。そのために母親ごと攫った。……キョウマ、お前も城塞都市で見たんじゃないのか?あの血の祭壇を」


「……そんなものは記憶にない」


俺の返答に、バルドは口をつぐんだ。

蝋燭の火が揺れ、広間には重たい沈黙が落ちる。


やがて胸の奥で苛立ちが爆ぜ、言葉が迸る。


「……そんなことはどうでもいい!リーナとおふくろさんを助けるのが先だろ!――ロガンの隠れ家に案内しろ!」


ルミナスを握り、立ち上がる。


バルドは黙って立ち上がった。

重い足取りで広間の扉へ向かい、音を立てて開け放つ。


「……案内する。町の北、貧民街へ」


冷たい夜気が流れ込み、蝋燭の火が揺れる。

俺はルミナスを背に預け、バルドの後ろに続いた。


――必ず助け出す。


そう心に誓い、闇が覆う街へ足を踏み出した。

異世界ビルメンの【短編外伝】「魔法少女ステッキ、ルミナス爆誕!?」を投稿しました。

検索すれば見つかると思いますので、興味があればぜひ。

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