表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/52

#26「血の祭壇で舞台が始まった結果(後編)」

フィーとエキストラの間に身体を滑り込ませ、ルミナスの柄を大仰に振り上げ――薙ぎ払った。

眩い光が走る。

ふさが黄金に輝き、舞い散る粒子が闇を焼いた。


エキストラの纏うなんか黒いもやと、ルミナスのまばゆい光が正面からぶつかり合う。

二つの奔流が渦を巻く。


(……いいぞ……ルミナスも分かってるじゃないか!)

(ここは光と闇が拮抗するように……観客が一番盛り上がる場面だ!)


俺の意思に呼応するように、ルミナスのふさが「ぶんぶん」と揺れた。

気のせいか、何故か少し焦っているように感じる。


闇と光の奔流がせめぎ合い、石床が軋む音が鳴る。

エキストラの目が細まり、口元から低い唸りが漏れた。


「……貴様……何者だ……」


(来たな、悪役の定番台詞……!)


俺は顎を引き、光を背負った役者のように言い放った。


「ふっ……ただの清掃員だ!」


その瞬間。

背後で小さな声が震えた。


「……キョーマさん……」


涙に濡れた瞳で俺を見上げるフィー。


(おいおい……泣き演技まで入れてくるのか。やるな、フィー……!)


俺は内心で感嘆しつつも、舞台を盛り上げるためさらに力強くモップを握り直した。

その瞬間、エキストラが痺れを切らしたように両腕を広げた。


「茶番は終わりだ!巫女の血を寄越せッ!」


漆黒の槍のように見える物が、フィー目がけて放たれる。


「フィーッ!」


俺はフィーの正面に飛び出し、彼女を庇って槍を受けた。


――直撃。


次の瞬間、ルミナスのふさが黄金に爆ぜたように見えた。

槍は体に触れる前に霧散し消え去る。

もちろん身体に傷はない。


けれど俺は――舞台を盛り上げるために、その場に崩れ落ちた。


「くっ……ここまでか……!」

「……キョーマさん!」


フィーが駆け寄り、瞳を潤ませて膝をつく。

細い肩が震え、彼女はペンダントを握りしめながら俺を覗き込んだ。


「どうして……どうして私なんかのために……」

「どんな汚れも俺が拭き取る。お前を苦しめる悲劇だって……俺が消し去ってみせる!」


フィーの両目から、ぽろりと大粒の涙が零れた。

胸元のペンダントが静かに光を帯び、淡い輝きが彼女の全身を包んだ。

やがてその光は祭壇へと広がり、赤黒い壁面を清らかな白に染めていく。


祭壇全体が震え、血のような光が滲み出した。

エキストラの目が見開かれ、低い叫びが漏れる。


「馬鹿な……契約が……揺らいでいる……!?」


黄金の光が闇を押し返す中、俺はゆっくりと身体を起こした。

膝に手をつき、肩で息をする風に立ち上がる。


(……来たな。ここがクライマックス演出ってわけだ!)


ルミナスのふさがぶるぶると揺れ、光をさらに増していく。

フィーの祈りとルミナスの光が重なり合い、祭壇全体が閃光に包まれる。

闇と光の奔流が激突し、空気が爆ぜるたびに赤黒い闇が消えて行く。


「ぐっ……あり得ぬ……! 契約が……断たれるなど……!」


エキストラの悲鳴が轟き、闇のマントが剥がれるように崩れ落ちる。

その声に呼応するように、ルミナスの黄金が炸裂する。

フィーの涙に濡れた祈りが光を増幅し、奔流はエキストラを完全に呑み込んだ。


「こんなところで……我が命が……潰えるとは……」


断末魔を残し、エキストラは塵になる。

赤黒いマントが霧のように散り、照明のスモークが消えるみたいに舞台から姿を消した。

俺は心の中で呟く


(お疲れさん。いい演技だったぜ…)


次の瞬間、祭壇を覆っていた赤黒い呪紋がすべて砕け散り、澄んだ光に満たされた。

静寂の中、フィーは、震える声で言葉を紡ぐ。


「……キョーマさん……私……」


俺は満身創痍を演じながらも、にやりと口角を上げた。


「……掃除完了。悲劇も呪いも……もう残っちゃいない」


フィーはこぼれる涙を拭わず、笑顔で俺の胸に飛び込んで来た。

ルミナスが「ぶふっ」とふさを膨らませ、呆れと安堵を同時に示すように揺れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ