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プロローグ 「出陣」

この漫画はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

 静寂が辺りを包み込んでいた。

 暗闇が全てを押し潰していた。

 そこは、サーカスのような大舞台。しかし、サーカスのように道化も舞台装置も何もない。ただ、大量の人間たちがそこにいるだけ。その人間たちも特に共通点は見受けられない。......いや、一つだけあった。


 一人一人、なんらかの武器を持っていたことだ。ナイフ。銃。バット。あと、その他。人によっては個性的であったり、または映画の戦場で、使いそうだなあと思うほどありふれたものを使うものとで十人十色。とでも言ったものだろうか。あまり俺自身にそう言う知識がないために多くは語れはしないが、ともかく、皆自分にあった武器を持ってここにきている。


 だが、どうやらそんな静寂ももうすぐ終わりを迎える。

 なぜなら、人並みを押し退けて、一人のピエロがやってきたからだ。


 ピエロは大仰に俺たちに一礼すると、誰かに目配せして、瞬間、ちょうどピエロの当たりがスポットライトで照らされた。急に光が来たことにより、目が慣れず少しの間手間取っていると、「んん」と、わざとらしくピエロが咳払いをし、一気にこの場にいる全員がピエロに注目する。


「では、では。皆々様。大変お待たせいたしました。『戦争のお時間』です。

 皆々様の武器のメンテナンスは完了しましたか?心の準備は?愛する者への挨拶は?

 ......ええ、ええ。把握いたしました。それでは、

 ───血湧き肉躍る!最高の戦場をお楽しみください!!!」


 そうやってピエロは実に愉快と言ったように、大仰な衣装を小刻みに揺らしはじめる。すると、不意に己の胸を露出させると、鳩尾に己の手を貫通させたのちに、そこからバッと肉を裂いた。裂いたその中身は驚いたことに真っ暗闇で、光を受けつけぬ『黒』で染め上げられていた。


 その『黒』は、だんだんとこの世に広がっていくと、すぐさま何か、荒廃した土地を浮かび上がらせた。それはやがてこちらに侵食してきたかのように、風や、砂がこちらへ流れてくると、それを流し込んできたピエロはニィッと笑みをこぼすと、我々に向かって「では」と一言呟いた。


「おおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!!!」


 その瞬間怒号めいた歓声が湧き、老若男女問わない命知らずどもが、飛んで火に入る夏の虫の如く、怪しげな『戦場』へと、足を運ばした。その流れ込んでいく様をみて、彼らが自らの意思で戦場に行っているはずなのに、まるで、それを錯覚して行かされる奴隷のようだと思った。

「......だったら。仲間か」

 そう自嘲地味に呟いて、俺──いや、夢梨 絶徒(ゆめなし ぜつと)は、繋がれていないはずの手首から、手錠のようなものの重さを錯覚しながら、奴隷のようにそこへ足をすすめた。


 導かれるように、行かされるように。ただ、己の内に燃え続ける熱に身を焦がしながら、先へ進み続ける。──その内に眠る怒りを燃やして。決して止まらない衝動に任せて。先に進むのだ。

 そしてようやくピエロの前に立つと、未だ人形のように笑い続けるピエロを軽く一瞥し、戦場へ足を運んだ。


「いくか......!」


 そしてここから、地獄が始まると言う予感を噛み締めて、短剣(ナイフ)を、強く握りしめた。


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