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千紫万紅のパシスタ 累なる色編  作者: さくらのはなびら
十五歳 浅草サンバカーニバル
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いざ、浅草サンバカーニバルへ!

 日々は、まさに駆け抜けるように過ぎた。


 エンサイオは浅草サンバカーニバルに向けた練習一色に染まった。


 ジルが工程・進捗管理をしていた衣装制作は、計画通り進んでいるはずなのにやってもやっても終わらない。

 デザイン監修のママが、より完成度を求め、早く終わってもその分細かいところの修正や追加などの工程を挟み込んでくるのだ。


 エンサイオはそれぞれのパフォーマンスを全体で合わせる場との位置付けだ。

 個人の振り付けは個人練習でマスターしておき、アーラごとの連携は各パート練習で仕込んでおく必要がある。

 エンサイオ以外の時間で、それらの練習の場を設ける必要があった。


 夏はお祭りなどのイベントにエスコーラの出演を依頼されることも多く、ひとつひとつのイベントも大事にしなくてはならない。


 もちろん学校もある。

 日々の授業や期末テストを疎かにしては外語大にいく計画に支障が出る。


 今年の浅草サンバカーニバルにゲスト参加する『céu sem fim』もエンサイオで練習していたが、それはそれとしてせっかく入った部活である。部としての活動もできるたけ出たい。

 有働くんがサンバの楽曲に着想を得てつくったオリジナル曲は既に完成している。

 部として出る大会にはその曲で参加するつもりだから練習もしないと。


 給料をいただく身であるバイトだって手は抜けない。


 大事な友達との時間だって妥協したくない。亜里沙や愛菜と遊ぶ機会は減ってしまったが、それでも定期的に会っている。回数が減っているからこそ、限られた時間は大切にしたかった。



 サンバ以外の日常の充実は、サンバに還って来る。

 メンタル面に憂いがなく満ち足りている状態は、練習の精度を高めるし、サンバダンサーにとって大切な明るい笑顔の表情も、自然とつくりやすい。



 チームとしてもメンバーの量も質も、その関係性や連帯感も、充実していた。

 準備もどこまでもこだわるので終わりはないが、抜かりや漏れはもうないという段階まできている。


 目に見える課題はもう見当たらない。


 充実のメンバー、ぎりぎりまで追及した衣装とパフォーマンスの精度。

 そしてかつてない人数でありながら、かつてないほど結び付いたメンバー同士の絆。

 もはや隙は無い。この過去最強の布陣で日本サンバ界の最高峰『浅草サンバカーニバル』に挑める幸運を、まずは噛み締めよう。



 三部作最後の年は、三年間の集大成になるはずだ。

『ソルエス』にとっても、わたしにとっても。


 充分に、存分に、味わったのなら、後はやるだけだ。

 以前、実里には考えすぎると言われた。

 ここまで丹念に懸命に練り上げたのだ。確かにもう考える要素なんて残っていない。この後は、どこまで無心になって身に着けたものを出し切るかだ。



 それは、技術である。


 積み上げてきた、過去である。


 体力気力、気迫である。


 想いであり、情熱である。


 届けと込めた、祈りである。


 未来を掴もうとする、願いである。




 出し切った後のその結果が、例えどんなものであったとしても、そこで得たすべては未来に繋がるのだ。

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