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千紫万紅のパシスタ 累なる色編  作者: さくらのはなびら
十五歳 浅草サンバカーニバル
89/101

céu sem fim

 その日のゆきえさんはすごかった。

 伸びやかで綺麗な歌声なのはいつもと変わらないのだけど、なんていうか、魂の震えが、そのまま声に乗っかっているようで、その声で踊るコミサォンたちも、自主練で衣装も着ていないのになんかが宿ったような迫真のパフォーマンスだった。


 ゆきえさんの声に引っ張り上げられるように、アリスンのヴォーカルもなんだか歌姫のようになっていて、途中ツインヴォーカルの掛け合いみたいになって、多分それはアドリブ、っていうか、テンションとノリで自ずとそうなったようで、有働くんと名波くんも度肝を抜かれていた。


 歌い終わったふたりは汗だくで、何やらやり切ったもの同士が目で語り合うような雰囲気を出していた。

 ふたりの背景に「やるわね」「あなたこそ」みたいな吹き出しが見えた気がした。


『アシェル文波音楽堂(仮)』の浅草サンバカーニバルへの参画は、盤石になりつつある手応えを感じた。きっと、アリスンも、有働くんと名波くんも。そしてゆきえさんたちバンドメンバーも。


 練習終わりに、有働くんが音源のデータをくれた。

 練習前にスタジオでやっていた作業は、『アシェル文波音楽堂(仮)』用の新曲のデモ音源データの作成だった。


「サンバのリズムの刻み方とか、しっかり取り入れられてると思う。サンバのステップ、ノペだよね? ノペも踏めるサンバを踊れる楽曲になってると思うよ」


 有働くんは自信ありげだ。そして、


「サンバがここまで相性良いと思わなかった。キャッチーで踊れて、ちゃんとサンバになってる曲ができたから、これを機に」


 正式なバンド名を決めたという。


『|céu sem fimセゥセムフィム


 果てなき空という意味のポルトガル語だ。

 自分たちはスターではないが、スターが輝く空になる。無限の可能性を秘めた空だ。

 太陽と星を掲げる『ソルエス』にとっての空となることも意味している。


 正式な名前と新曲を手に入れた。バンドの大会もがんばろう。

 



 学校に部活にバイトにサンバと、バランス良く取り組めていて、順調だった。


 『ソルエス』としても、今年の『浅草サンバカーニバル』はひとつの試金石として捉えていた面もあり、三部作の最終年で、内容自体は一昨年から決まっていたこともありかなり早い段階でスタートを切っていた。

 通常は毎年実施しているハイーニャコンテストも、三部作は通しでハイーニャを任命しているため実施の必要がなく、その分も前倒しして進めていた。


『浅草サンバカーニバル』のエンヘード用の衣装、ファンタジアの作成に時間を割けるため、予算を大きくかけなくても完成度の高い衣装制作が着々と進められていた。

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